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従業員3万5000人が「場所にとらわれない柔軟な働き方」実現、サテライトオフィスも開設

富士通が今春からテレワーク制度、田中社長「自ら実践が責務」

2017年03月01日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 富士通が今年(2017年)4月21日から「テレワーク勤務制度」を導入する。

 これは、約3万5000人の同社社員を対象に、自宅やサテライトオフィス、出張先、移動中などの「場所にとらわれないフレキシブルな働き方」を実現するもので、田中達也社長のコミットメントのもとトップダウンで推進される。同社のAI「Zinrai」も社内実践し、将来的にはサービス化につなげていく。

 2月28日、富士通 執行役員 人事本部長の林博司氏が出席した記者説明会が開催された。

記者説明会に出席した富士通 執行役員 人事本部長の林博司氏

富士通が4月から導入する「テレワーク勤務制度」の概要

これまでの「多様で柔軟な働き方」への取り組み

 富士通ではこれまでも、多様で柔軟な働き方を可能にするさまざまな制度づくりに取り組んできた。まず、2010年度には在宅勤務制度を導入。次に2015年度からは、フレックスタイム制により早朝時間を利用する働き方に取り組んできた。1200人の社員を対象としたテレワークのトライアルも、2015年度から開始している。

富士通では、2015年度から一部部門を対象にテレワークのトライアルを実施してきた

 続く2016年度からは、育児や介護、キャリアアップのために退職した社員の再雇用制度を導入。そして2017年3月からは、全世界約16万人の全従業員を対象に、マイクロソフトの「Office 365」などを活用した新たなグローバルコミュニケーション基盤を運用開始する予定だ。

 林氏によると、富士通ではすでに95%の従業員がウェブ会議の利用経験を持ち、その年間利用回数は170万回に達する。これにより出張費用は20%削減された。また、社長メッセージやEラーニングなどで動画配信も活用しており、動画コンテンツは1700に上る。社内SNSコミュニティの利用も活発で、4500のコミュニティがあり、そのうちの61%はプロジェクトや組織横断ワーキンググループでの活用だという。

テレワークを支えるICT活用も進めてきた

 そして今春から、新たにテレワーク勤務制度をスタートさせる。

 「在宅勤務制度やフレックスタイム制は、社員の半数以上が利用している。2015年度からのテレワーク勤務制度へのトライアルにおいて一定の成果が見られたことで、今回、本格的な導入を図ることにした」「制度改革、ICT活用、意識改革の三位一体となった働き方改革に取り組み、多様で柔軟な働き方や、長時間労働を前提としない働き方を実現し、生産性の向上を目指す」(林氏)

 取り組む内容はテレワーク勤務制度だけではない。今後、「働き方改革推進委員会」を設置して改革を推し進めるとともに、AIも活用した社内実践を勧め、その成果をサービス化していく計画だ。林氏は「制度改革やICTを活用した働き方改革の社内実践の成果をもとに、企画からソリューションの設計、導入、定着化、運用に至るまで、顧客の働き方改革に貢献していく」と語る。

テレワーク勤務制度をサポートするためのICTツールも導入

 今回のテレワーク勤務制度は、組織単位での適用とし、「自律的、計画的に働ける社員が対象」だという。利用回数の制限は設けないものの、終日テレワーク勤務する場合は、まず週2回からスタートする。利用の際には上司への事前連絡や、始業時の勤務予定報告、終業時の勤務実績報告を徹底する。さらに休日や深夜勤務時間帯のテレワーク勤務は原則禁止とし、終日テレワークも8時間以内にするといったルールを定め、テレワークの弊害と言われる「働きすぎ」を抑止する。

 セキュアなテレワークを実現するICT環境としては、シンクライアント端末と仮想デスクトップ、前述のグローバルコミュニケーション基盤が活用される。すでに今年1月からは、PCやスマートフォンを使って、どこからでも出退勤の打刻ができる仕組みも導入している。

セキュアなテレワーク環境を実現するため、シンクライアント+仮想デスクトップを活用

 さらに4月からは、富士通エフサスの「FUJITSU Software IDリンク・マネージャーⅡ」を導入予定で、これにより残業を上司の指示のもとに実施するルールの徹底や、テレワーク勤務導入に合わせた労働時間管理を行っていくという。たとえば、あらかじめ設定された時刻以降、上司への残業申請をしていない場合はPCが自動的にシャットダウンされる機能もある。

 「トライアルでは、このツールを利用するだけで20%の労働時間削減を実現している」(林氏)

運用サポートのツール「FUJITSU Software IDリンク・マネージャーⅡ」を採用して時間管理を徹底するとともに、社員の時間意識向上も図る

「FUJITSU Software IDリンク・マネージャーⅡ」の画面イメージ。右ウィンドウはWeb打刻システム

 また、従来のシンクライアント端末に対する「持ち運ぶには重い」「使い勝手が悪い」といった社員の声を反映し、富士通クライアントコンピューティングが“テレワーク仕様”のPC「LIFEBOOK U937/P」を開発した。799gという軽量化と、薄さ15.5mm、バッテリー駆動時間約8.3時間というモビリティに適した仕様になっているうえ、手のひら静脈/指紋認証、リモートワイプ技術「CLEARSURE」の採用によるセキュリティ強化で、どこに持ち出しても安全に利用できる環境を実現したという。

 働き方改革においては、管理職や社員自身の意識改革も重要だ。働き方改革の狙いや意義、マネジメントにおけるポイントへの理解を深めたり、社員の意識を変革する取り組みとして、全社員向けの説明会、Eラーニング、また管理職向けのマネジメント研修なども行う。「トライアルを通じて、主旨の周知徹底が大変重要だと感じた」と、林氏はその意味を説明する。

 「テレワーク勤務制度は、導入の主旨や意義を理解できた組織から実行していく。全体の約8割の職場で利用できるものと考えている」(林氏)

 効果目標については、全体よりも各部門における効果を重視する考えだという。部門ごとに求められる働き方が違い、一律の基準を適用するのはそぐわないという考えからだ。

 「営業部門では、会議に20%、移動に25%の時間が取られている。これを半減すれば、お客様を訪問する時間を増やすことができる。顧客を訪問する機会の多い営業やシステムエンジニアでは、テレワーク制度の効果がすぐに出ると考えている。一方で、ハードウェア開発者など、オンサイトでの働き方が中心となる部門では成果が出にくいだろう。また、顧客先に常駐しているシステムエンジニアは、顧客の理解を得る必要もあるので、運用開始までに時間がかかることになる」(林氏)

 まずは富士通本体でテレワーク勤務制度を導入し、今後、グループ各社へと展開していくという。

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