
今回のことば
「お客様を『支え』、『変え』、そして『共に創る』ことを目指す。そのためには、まずは自らが変わらなくてはいけない」(富士通エフサス・濱場正明社長)
2017年4月、富士通エフサスの社長に濱場正明氏が就任してから半年以上が経過した。
富士通エフサスは1989年3月、富士通のCE部門からメインフレームの保守、修理を事業目的に分離した富士通カストマエンジニアリングが前身。現在約5200人のサービスアカウントエンジニアを擁し、全国規模での保守、修理体制を持つ一方、ICTインフラの企画・コンサルティング、設計・構築、設置・工事、導入・展開などを実施。
さらに、働き方改革の提案にも積極的で、オフィスまるごとイノベーションなどを提供している。
濱場社長は富士通で金融営業を長年経験。2005年11月、東証の株式売買システムにトラブルが発生したときには、保険証券ソリューション事業本部長として最前線で対応。次世代システムの商談では、本来マイナスになるはずのこのトラブルを跳ね返し、次世代株式売買システムを引き続き受注することに成功した。これが2010年1月4日に、「arrowhead」として稼働した株式売買システムだ。
このとき濱場社長は執行役員常務として営業およびSE部門を統括。プロジェクトを無事完遂させた。トラブル時の対応力と、1000ページ以上にのぼる詳細な提案が評価されたともいえ、マイナスをプラスに変えてみせた。
「2005年のトラブルは確かにマイナス要素だった。だが、堅牢性検証に半年をかけ、さらに責任分担や契約上の課題などもはっきりさせ、社会システムを安定稼働させるための体制と仕組みづくりを再構築した。また、高い性能要件を実現するために、当時の黒川博昭社長直轄のプロジェクトとして推進。富士通の総力によって実現した堅牢性、高性能、高可用性を評価してもらった結果」と当時を振り返る。
その後濱場社長は富士通で金融・社会基盤営業グループ長や、ネットワークビジネスグループ長などを歴任し、通信、電力、メディアなど、社会基盤のあらゆる業種を統括したのちに、富士通ミッションクリティカルシステムズの社長に就任。2016年11月には富士通の執行役員常務 グローバルサービスインテグレーション部門ミッションクリティカルビジネスグループ長に就任。
そして、2017年4月に富士通エフサスの社長に就任した。
一方で富士通のアメリカンフットボール部「富士通フロンティアーズ」の部長を、2008年春から2017年3月まで務め、2014年度および2016年度の2回、日本一に輝く強豪へと育て上げた実績を持つ。
「アメフトは一人の優秀なクォーターバックがいても勝ち続けることはできない。目立たない仕事をするオフェンスラインの選手たちの活躍があってこそ生きる。野球以上にチームワークが重要なスポーツだと思っている」と濱場社長は語る。
顧客との創造、ビジネスの創出に意欲
「こうした経験を富士通エフサスの経営にも生かしている」と濱場社長は語り、富士通エフサスの社員には、チームワークの重要性と挑戦する大切さを訴える。
「保守、サポートからスタートした富士通エフサスは、まさに守りを中心とした企業。『お客様のためならばなんでもやる』という精神が植えついており、信頼も高い。そして、お客様と一緒にやるという仕事には長けており、これは富士通エフサスのDNAともいえる部分。しかし、どうしても受け身になってしまい、自らが提案していくという姿勢がまだまだ足りない」とし、「お客様をリードしていくためには、我々がもっと成長しなくてはならない。だがそれには時間もかかる。まずは、一緒に創造していくといったところから進めたい。感性を変え、一緒になって創っていくことが第一歩。富士通エフサスのチームワークの強みと、お客様、パートナー企業とのチームワークの強みも生かしたい」とする。
また、新たなビジネス創出にも意欲的であり、「私は富士通時代には、モノづくりの経験もしてきた。エンジニアと一緒になって仕事をしてみて感じたのは、ともすればリスクを考えずに、夢を追ってしまう場合があること。富士通エフサスでも、新たなビジネスの創出においては、同じような動きを感じることがある」としながら、「私は長年、社会基盤を担当してきた経験から、どこまでのリスクならば許容できるのかといったことも判断できる。リスクが大きい場合には、結果として、社会にご迷惑をかけることになる。いまの世の中ではなにもしないことが一番悪い。失敗することは構わない。だからこそ、もっと挑戦してほしい。だが、リスクが大きい場合には、経営側がしっかりと判断する体制が必要」とする。

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