このページの本文へ

増加する社会人学生や留学生の学びをオンライン講座で支援

動画制作コスト10億円分を削減、静岡大がパワポとAzureで「MOOC」を実現

2017年03月14日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 静岡大学と日本マイクロソフトは3月8日、Office 365ユーザー向けのPowerPointアドオン機能「Office MIX」という動画作成ソフトを使って、授業動画をインターネットで配信する「MOOC」のような仕組みを構築し、4月から本格運用することを発表した。オンラインで授業の予習・復習ができる環境を整備し、増加する社会人学生・留学生の学びに支援に対応する。

教員の授業動画をWebブラウザ経由で学習が視聴できる「クラウド型の反復授業支援システム」

 Office MIXは、PowerPointスライドをベースに動画を作成するOffice 365のアドオン機能。スライドを説明する様子をPCのフロントカメラやマイクを使って録画すると、スライドごとに説明動画やペンツールでの書き込みなどが記録される。アンケートやクイズなどを付与することも可能。作成した動画は、Office 365のアカウントを使い容量無制限でインターネット上に公開できる。

 今回、静岡大学と日本マイクロソフトはOffice MIXを使って、教員が作成した授業動画を学生がWebブラウザから視聴できるシステム「クラウド反転授業支援システム」を構築した。Office MIXの標準機能でも公開範囲を指定して動画をアップロードできるが、講座ごとにページを作ってアクセス制御するといった細かな設定はできない。静岡大学のシステムでは、Microsoft Azure上に、Office MIXで公開した動画コンテンツを講座コースごとに集約して対象学生のみがアクセスできる専用サイトを構築している。

Office MIXを使ってPowerPointから授業動画を制作

Office MIXによる動画制作コスト削減効果は10億円規模

 静岡大学では、少子化により大学進学者数が減少に転じる「大学の2018年問題」に対応するため、社会人学生、海外からの留学生を積極的に受け入れている。毎回の授業に参加できない社会人学生、言語の壁がある留学生の学びを支援するために、同大学では2007年から授業内容をビデオなどで予習できる「反転授業システム」の研究を行ってきた。

 同大学 情報基盤センター長の井上春樹教授によれば、従来、反転授業のための動画コンテンツ制作・保存・配信には1本当たり5万円のコストをかけていた。同大学で1年間に実施される授業は約4000コース、そのうちの半数を動画にした場合の総コストは10億円にのぼるという。「今回、Office MIXを使うことで、動画制作コストが0円になり、10億円のコスト削減になる」(井上氏)。

 同大学では、従来から日本マイクロソフトとOffice 365ライセンスの包括契約を結んでおり、全教職員がOffice 365のライセンスを保有し、学生は無料でOfficeを利用できる。Office MIXを使った授業動画の制作にあたって追加費用は発生しない。学生がアクセスするWebサイトがAzure上で運用されているが、この費用は「静岡大学の教員1500人の利用規模で年間10万円程度」(井上氏)だという。

 静岡大学では、今回Office MIXとAzureで構築したクラウド反転授業支援システムを、同大学が運用する形で全国800の大学に提供していく計画だ。「全国の教員数万人の利用規模を想定するとAzureの料金は18万円程度」(井上氏)と試算している。他大学への導入に向けては、日本マイクロソフトの文教担当営業、パートナー企業が協力する。

学内システムの95~97%をパブリッククラウドへ移行

 同日、静岡大学と日本マイクロソフトは、大学教育におけるデジタルトランスフォーメーションを推進する覚書を締結した。Office MIXを利用したクラウド反転授業システムの全国展開で協力するほか、日本マイクロソフトから講師を派遣してAIに関する講座やワークショップを行う。

覚書を締結した日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓哉氏(左)と静岡大学 学長の伊東幸宏氏(右)

 また、静岡大学がプライベートクラウド環境で運用している学内システムの大半をAzureへ移行する。井上氏によれば、同大学の学内システムは現在、プライベートクラウド上のサーバー約72台、パブリッククラウド上のサーバー約280台で運用されている。「プライベートクラウド環境にある72台のサーバーをAzureへ移行し、将来的には学内システム全体の95~97%をパブリッククラウドへもっていきたい」(井上氏)。

■関連サイト

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    sponsored

    60年の時を超え「COBOL」がGitHub Copilotでよみがえる 勘定系アプリの“超難関”モダナイに7社が挑戦

  2. 2位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  3. 3位

    ITトピック

    IT技術者の8割超「AI生成コードには人間のレビューが必要」/「偽・誤情報を見破れる」と自信を持つ人はICTリテラシーテストの正答率が低い、ほか

  4. 4位

    sponsored

    「現場に行くのが当たり前」を変えたアズビルのリモート調整 効果はプライスレス

  5. 5位

    TECH

    攻撃するAIと防御するAI 日本企業のセキュリティ対策にいま何が必要か?

  6. 6位

    デジタル

    東京タワー相当の紙を“完全撤廃” 点検業務をkintone化した“現場ファースト”な改善術

  7. 7位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  8. 8位

    TECH

    パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求

  9. 9位

    デジタル

    IoTデバイスをサイバー攻撃から守る IoT向けゼロトラストの“3つのアプローチ”

  10. 10位

    ITトピック

    6割超の企業で「セキュリティは取引条件」 SCS対応も進む/パワハラと指導の違い、あなたの基準は?/AIへの危機感か 転職希望のIT人材が増加、ほか

集計期間:
2026年07月22日~2026年07月28日
  • 角川アスキー総合研究所