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富士通が自社16万人に「Office 365」導入、そのノウハウを基に顧客のワークスタイル変革を支援

富士通と日本MS、コミュニケーション基盤ビジネスで連携強化

2016年09月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 富士通と日本マイクロソフト(日本MS)は9月1日、顧客のワークスタイル変革を実現する「グローバルコミュニケーション基盤」の導入促進に向けた連携強化を発表した。富士通がグループ約500社、16万人への「Office 365」導入とマルチクラウド間連携を実施し、そのノウハウをベースとしたワークスタイル変革の提案を行うことで、2018年度に年間500億円規模のビジネスへの成長を目指す。

今回の連携を通じ、2018年度に年間500億円規模のビジネスを目指す

発表会に出席した富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏(左)と日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏

両社で「デジタルトランスフォーメーション コネクト プログラム」を提供

 富士通では2012年から、グローバルの富士通グループ社員を対象としたプライベートクラウドベースのグローバルコミュニケーション基盤を構築してきた。一方で、2015年2月にはすべての社内システムをOpenStackベースのパブリッククラウド「FUJITSU Cloud Service K5」上へ移行していくことも発表している。

 今回はまず、このグローバルコミュニケーション基盤のパブリッククラウド移行を実施する。具体的には、パブリッククラウドサービスであるマイクロソフトの「Office 365」と認証基盤「Azure Active Directory Premier(Azure ADP)」を新たに採用し、さらにK5パブリッククラウドを中核とした富士通の「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」と連携したマルチクラウド環境へと刷新する。

「Office 365」「Azure ADP」と「MetaArc」を連携させ、生体認証、どこでもプリントなど富士通独自のクラウドサービスも付加して利用可能にする

 これにより、最新のコミュニケーションサービスの利用が可能になり、さらなる業務効率化や変化への対応力を備えたワークスタイルを実現するとしている。新しいグローバルコミュニケーション基盤は、2017年3月に国内2万人での運用を開始し、その後2年ほどをかけて順次グローバルに展開を拡大していく予定。

 富士通で社内システムを統括するIT戦略本部長の纐纈(こうけつ)孝彦氏は、グローバルコミュニケーション基盤をパブリッククラウドへと移行することにより、「5年間の全体コスト(TCO)で30%程度削減できる見込み」だと説明した。

パブリッククラウドへの移行で期待できる効果。マルチクラウド連携で、認証基盤の統一による利便性向上も図られる

 さらに両社では、上述した富士通の社内実践で得た知見や導入ノウハウを基に、顧客企業におけるグローバルコミュニケーション基盤の導入促進に向けた連携を図っていく。具体的には、ワークスタイル変革などの提案および検証プロセスを、両社が連携して実施する「デジタルトランスフォーメーション コネクト プログラム」を開始する。

 同プログラムでは、デジタル変革の推進を考える顧客に対し、日本MSが「Microsoft Technology Center(MTC)」において、先進テクノロジーや先進事例、グローバル経営リファレンスなどを紹介するブリーフィングを実施する。加えて、富士通が「Fujitsu Digital Transformation Center(DTC)」において、デザインアプローチ手法を用いた課題解決のためのワークショップなどを提供していく。

日本MSと富士通が連携して実施する「デジタルトランスフォーメーション コネクト プログラム」の概要

同プログラムの利用例(左)。デザインアプローチ(右)は、自社が将来「ありたい姿」から、短期的に実現すべきことを具体的に割り出し、事業施策とするもの

 発表の中で両社は、企業経営層をコアターゲットとして、年間200件以上の同プログラム提供を目指すと述べている。

マルチクラウドのインテグレーションも富士通の「強み」

 発表会に出席した富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏は、富士通がこれまでグローバルコミュニケーション基盤を用いて取り組んで来たワークスタイル変革の成果を示した。

 阪井氏によれば、Web会議はすでに全従業員の95%が利用経験を持ち、昨年1年間で130万回の利用があった。また、社内SNSでは3600ものコミュニティ(テーマ別グループ)が作られており、組織横断プロジェクトや技術的なコミュニケーションも活発に行われている。コミュニティでのやり取りから生まれた特許出願数も20件あるという。

富士通におけるワークスタイル変革の成果

 今回、Office 365とMetaArcによるシステムへと移行していくことにより、富士通ではさらにワークスタイル変革を進めていく方針。阪井氏は「今後はさらに(このコミュニケーション基盤で)AI技術の採用なども検討する。パーソナルアシスタント機能を搭載していく取り組みも」と将来の取り組みを語った。

 また、今回発表された顧客向けのデジタル変革支援サービスにおいて、特に“富士通ならでは”の価値を持つのは、やはり富士通自身の社内実践を通じて得られたリファレンスを顧客に提供できる点だと、阪井氏は説明する。

 「システムを導入することよりも『どう利用するか』が重要。(利用推進には)さまざまな壁もあるが、『こういう風にすればスムーズに展開できる』『こうすれば社内コラボレーションが深まる』といった利活用のノウハウまで提供できる点、それも顧客の業種に合ったかたちで提案できる点が、富士通の価値だと考えている」(阪井氏)

 日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏も、「弊社(MS)で10万人強、富士通グループで16万人強というユーザーが“使い倒して”きたノウハウはとても大きい。これだけの規模のノウハウを顧客に提供できる会社は、グローバルで観てもそれほどないのでは」とコメントした。

 富士通 阪井氏はもうひとつ、マルチクラウドのサービスを統合し、ワークスタイル変革のための環境を整備できる点も「強み」だと述べた。「(オラクルやSalesforce.comといった)他のパートナーのクラウドサービスも、適材適所でつないで展開していく、そういう方向性で考えている」(阪井氏)。

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