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大規模SAPシステムなど、ミッションクリティカル用途向けのIaaSをコスト効率高く提供

NTT Comとバーチャストリーム、EMCが基幹系クラウドで協業

2017年02月07日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、米バーチャストリーム(Virtustream)、EMCジャパンの3社は2月6日、日本市場でのクラウドサービス提供に関する戦略的協業を発表した。ミッションクリティカルな基幹業務アプリケーション向けの基盤(IaaS)として、3社のインフラと技術を統合した共有型クラウド基盤サービスを、国内市場向けに開発/運用/販売していく。

今回の戦略協業における3社の役割

(左から)EMCジャパン 代表取締役社長の大塚俊彦氏、NTTコミュニケーションズ 取締役 クラウドサービス部長の森林正彰氏、米Virtustream COO(最高執行責任者)のサイモン・ウォルシュ(Simon Walsh)氏

「実消費量」課金、一般的な専有クラウド比で「30%のコスト削減」とアピール

 今回の協業は、NTT Comのデータセンター/ネットワークインフラおよび運用技術、バーチャストリーム独自の共有型クラウド基盤ソフトウェア技術、Dell EMCのストレージ/コンバージドインフラ技術を組み合わせ、大規模SAPシステムなどの基幹業務アプリケーション向けのIaaSを開発、運用、販売することを狙いとしたもの。

 今回の協業に基づき、NTT Comおよびバーチャストリームでは、それぞれが提供するIaaSを強化する。具体的には、NTT Comでは、同社のIaaS「Enterprise Cloud」のラインアップとして、今春(2017年春)から新たな共有型クラウド基盤サービスを追加する。またバーチャストリームでは、同社がグローバルに展開しているIaaSの新リージョンとして日本を追加する。

 「今回の協業によるIaaSは、2つの提供形態がある。1つはグローバルで展開しているバーチャストリームの日本リージョン版。もう1つは、NTT ComのマネージドサービスやSDN技術といった付加価値を加えた(Enterprise Cloudの新ラインアップとなる)クラウドサービス」(EMCジャパン 代表取締役社長の大塚俊彦氏)

NTT Comの「Enterprise Cloud」に大規模基幹システム向けのIaaSが追加される(赤枠部分)

 なお、両社のIaaS提供にはNTT Comが保有する関東/関西のデータセンターを利用し、DR環境も整える。SLA(可用性)は最大99.999%をうたい、そのほかアプリケーションパフォーマンスのSLA、RTO(目標復旧時間)やRPO(目標復旧時点)も定める。バーチャストリームCOOのサイモン・ウォルシュ氏は、同社ではRTOを「1時間」、RPOを「15分」としており、こうした高度なサービスレベルはAWSなど他のIaaSでは提供できないだろうと語る。

 またウォルシュ氏は、CPU/メモリ/ネットワーク/ストレージの「実消費量」を厳密に計測/管理できるバーチャストリームの特許技術「μVM(マイクロVM)」を採用することで、一般的なプライベートクラウドや専有クラウド環境比で「平均30%ほど利用料金を削減できる」とアピールした。たとえば、一般的なクラウドサービスでDR環境を構成すると、2つのインスタンス(アクティブ-スタンバイ)を起動し続けて利用料金も2倍かかることになるが、バーチャストリームの場合はスタンバイ環境に切り替わった(使い始めた)段階ではじめて料金がかかるという。

バーチャストリームの共有型クラウド基盤ソフトウェア技術は、ミッションクリティカルな基幹アプリケーションをマルチテナント環境で実行するという課題に対応するため開発された

 NTTコミュニケーションズ 取締役 クラウドサービス部長の森林正彰氏は、NTT Comではすでにデータセンター、ネットワーク(SDN)、マネージドサービスと豊富なサービスリソースを持っており、それがクラウド市場における競合優位性となっているが、μVMのソフトウェア技術とノウハウはバーチャストリームしか持っておらず、今回は「強いパートナー」と組んでソリューションを提供することで「より優位性が出る」と判断したことを説明。Enterprise Cloudで提供してきた既存のサービスラインアップと組み合わせて、SoR領域のトラディショナルなシステムから、SoE領域のクラウドネイティブなシステムまでをカバーしていくと述べた。

 NTT Comでは今回、まずは国内市場向けに同IaaSを提供開始し、将来的には海外市場での展開も検討していくとしている。事業目標については、同サービスやマネージドサービスも含む、NTT Comのソリューション事業として「2021年度に100億円を目指す」ものとしている。

 なお、SAP HANA向けのクラウド環境としては、すでにSAP自身が国内データセンターを構え「SAP HANA Enterprise Cloud」サービスを提供しているが、これに対する競合優位性について、森林氏はμVMによる従量課金制と高いSLA保証を、ウォルシュ氏はHANA以外のワークロードにも対応している点を挙げた。

 また、国内市場ではすでに伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がバーチャストリームのソフトウェアを用いたIaaSを提供している。これについては、「CTCのIaaSはバーチャストリームのソフトウェアを購入して展開しているものだが、今回のサービスはNTT Comとバーチャストリームが共同投資をして展開するもの」(ウォルシュ氏)と、その違いを説明している。

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