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元AWS小島、アスキー大谷、サイボウズ伊佐がコミュニティの価値をアピール

Cybozu Daysで聞いた 「強い情シスを作るためのコミュニティ活用術」

2017年01月30日 07時00分更新

文● 重森大 写真●曽根田元

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「うぇーい!」ばかりじゃない、同じ立場の人の本音を学べる場所

 伊佐さんが参加者に問いかけてみると、そこにいたのは情シスやそれに類する職種の人がほとんどだったが、その中で実際にコミュニティに参加した経験がある人はわずか数人だった。そこで、コミュニティ活動の実態について知ってもらうことに。とはいえ、出てくる写真は飲み会やコスプレばかりで、勉強になるのやらならないのやら。

伊佐:写真を見ながら、コミュニティをみんなで学んでいこうと思います。たとえばこの写真。ドン! 飲み会ッ!

大谷:「うぇーい!」みたいな感じですね。

伊佐:そう、Facebookとかでよく見る「コミュニティ参加してきました」って投稿はこんな感じですね。

小島:ただの飲み会じゃないかと思ってる方もいらっしゃると思うんですけど。僕だって、少なくとも4年前はそう思ってましたもん(と、いくつか写真を紹介)。

元AWSでJAWS-UGの立ち上げに寄与した小島英揮さん。コミュニティマーケティングの領域で活躍中

飲み会とかコスプレとかパイ投げとか、正直みんな引いてると思うんですけど(笑)、この場に行かないとまずこういう人に会わないですよね。で、この人たちがライトニングトークとかプレゼンすると、めっちゃ深いんですよ。「え、こんなこともうできてるの?」とか「え、こんなもの、全然メディアに出てないよ」みたいなのがすごくたくさん出てくる。最前線なんですよ。正しい情報はメーカーが教えてくれるものだ、みたいなところを、いろんな意味で壊してくれるんですよね。

伊佐:サイボウズでは自社製品をフルに使って働き方改革してます。でも一方で、作った製品の使い方を僕らが決めきってしまったら、新しい使い方を発見できないじゃないですか。ところがコミュニティの実践者の話を聞くと、うちはこういう会社だからこう使ってますって想像していない使い方が出たりするんですよ。

小島:出てきますね。ベンダーが言ってる話だと、なんか素直に聞けないでしょう。だけど実際にお金を払ってそれを使ってる人の話っていうのは、非常に、素直に入ってくるんですよね。これって別にITの選択だけじゃなくて普段の皆さんのお買い物のシーンでもあると思うんですよ。同じ趣味を持ってる人から「あの自転車いいよ」とか「あのステレオいいよ」とか「あのPCいいよ」って聞くじゃないですか。あれと同じで、同じ立場の人の話って非常に聞きやすいんですよね。そんな同じ立場の人がすごく沢山いるのが、コミュニティのいいところなんじゃないかなと思います。

大谷:コミュニティでのプレゼンって、本音が出るところなんですよね。いいことばっかりじゃないんですよ。製品の悪いところとか、失敗したとかこんなバグがあったとか、遅かったとか。そういった本音をどんどん聞けるっていうところが、やっぱりコミュニティの価値かなあと。

あと、勉強会にはいわゆるセッション形式じゃなくて、こういうディスカッション形式のものもあります。情シスの人たちが本音で喋るんですが、とても記事には書けないような悩ましい話がいっぱい出てくます。

小島:こういうクローズドで、来てる人が誰かお互いわかってる場がけっこう大事で。誰が来てるかわからない場だと、会社の名前を言って失敗談をお話しできない。なんでこんな場をつくってまで失敗談を話すかっていうと、「それはこうやって解決できるよ」って他の人と共有したいんですよね。

技術者本人にも企業にもメリットがあるコミュニティ活用

 コミュニティ活動についてざっくり理解してもらったところで、伊佐さんは本題に入った。それは、こうしたコミュニティじゃの力を企業としてどのように取り入れていくべきかということ。エンジニア個人として参加して学びを得るだけではなく、それを仕事として「行ってこい」と言えるかどうか。言うべきかどうか。それが、これからの企業競争戦略に大きく関わってくると伊佐さんは言う。

伊佐:企業として、仕事としてコミュニティに参加すべきかどうか。そのメリット、デメリットについてお二人に話を聞いていきたいと思うんですが。

小島:これはもう、すごくはっきりしてますね。クラウドって、基本情報とか技術情報のアップデートが速いんですよ。

私はAmazonに来る前は普通のソフトウェアベンダーにいたんですが、そのときは年に1回か2回マイナーバージョンアップがあって、2年か3年に1回メジャーバージョンアップするくらいでした。アップデートをしたら、新しい使い方のドキュメントを作って講習会をやってというサイクルで、新バージョンにキャッチアップできたんですよね。

だけどAWSの場合、たとえば2015年には700ぐらいアップデートがありました。営業日ごとに1日2つくらいアップデートがある。この速さになると、ベンダーからドキュメントが来てから学ぶという姿勢では、3周くらい遅れるんですよね。どうすればいいかというと、もう使ってみるしかない。ただ、自分で全部使うことはできないので、色々使ってる人と情報をシェアするっていうのが一番早いんですよ。最新の情報を一番楽に手に入れる方法が、実はコミュニティなんです。

伊佐:最新の情報を手に入れられるのはベンダーのドキュメントではなく、コミュニティだと。

小島:最初に、コミュニティがメディアを凌駕しているという話をしましたけど、AWSの場合は新しい機能が出ると、それをまずブログという形でアップするんです。でもそのブログがAWSから1つ出る間に、日本のユーザーのブログが5つも6つも出てくるんです。それも製品の説明だけじゃなくて「この新機能をこう使ったら快適でした」とか、「ここがまだ足りてない」とか、TIPSや現場の運用を含めた話が出てきてるんですよね。

このスピード感は、この2、3年で大きく変わったとこだと思います。多分、過去20年くらいはこんなスピードじゃなかったんですよ。だけど今はこのスピードで、どんどんアップデートされるようになってる。実際に自社ですべての機能を使うわけではないけれども、この製品はどんな特長があるかとか、目利きが要求されますよね。特に日本の情シスの場合は、社内で作るというより目利き力の方が多分大事なので、そういう意味では、コミュニティで得られる情報力は非常に強いはずですよね。

伊佐:確かにそうですね。

大谷:これからメディアとして言ってはいけないことを言いますけれども、みなさんメディアの記事って鵜呑みにしてませんよね? 製品の導入事例なんかも成功例ばかり取り上げますし。でも、実際は記事には書けないような苦労が現場にはあるし、コストの問題だってあります。それぞれに工夫して乗り切っているんだと思うんですよ。そういう、困ったところとかの本音を聞こうと思ったら勉強会に参加するしかない。

伊佐:確かに、製品紹介や導入事例として、失敗した話は取り上げませんからね。

小島:だけど、失敗した人もいる。その失敗談がディスクローズされるというのは、情報の生まれ方や流れ方として、いい意味で破壊的なことだと思うんですよね。同じ失敗をしなくて済むんですから。今は、いい情報だけ流そうなんてコントロールできない時代なんですよ。だからこういうコミュニティ発の情報の流れ方というのは理にかなってるし、そういう情報を聞けることはみなさんにとっても非常に有益だと思います。

伊佐:そうですね。あとは仲間を増やすというのが、凄くメリットになると思います。

大谷:単純にコミュニティに行くと、同じ世代で同じ立場の人と友達になれますよね。地方の勉強会に行くと地方の友達もできる。上下関係じゃなくて、今まで欠けていた横のつながりが、コミュニティでは簡単に作れます。

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