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ソニックガーデン倉貫氏とアスキー大谷が現場主導のIT導入を語る

働き方を現場から変えていく業務ハッカーとチームリーダー

2017年12月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●金春利幸

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11月9日、サイボウズが開催した「Cybozu Days 2017」に登壇したソニックガーデンの倉貫義人氏とアスキー編集部の大谷イビサ。業務改善を進めることで働き方が変わるというストーリーで、業務ハッカーとチームリーダーが主導権を発揮する新しいITの導入形態についてトークを繰り広げた。

幕張メッセのCybozu Days、バスケットステージでセッション

業務課題に強くても、テクノロジーが苦手なチームリーダー

 「『業務ハッカー』と『チームリーダー』が切り拓く現場主導ITの可能性」と題されたセッションは、新媒体「ASCII Team Leaders」を立ち上げたアスキー編集部の大谷イビサと、業務改善とシステム化を一緒にやってしまう「業務ハッカー」という新しい職業を提唱するソニックガーデンの倉貫義人氏によるパネルになる。

 自己紹介を済ませた大谷は、「6月のkintone hive Osakaの懇親会会場で、たまたま来ていた倉貫さんに非IT部門向けIT媒体のコンセプトを話したら、ソニックガーデンにも業務ハッカーという新しい職種ができているということで、話が異様に盛り上がった」とセッションに至った経緯を説明。アスキーとサイボウズが展開している「kintone三昧」のミーティングでこの話をしたら、Cybozu Daysにセッション枠が作られたというわけだ。

ASCII Team Leadersについて説明したアスキー編集部の大谷イビサ

 大谷が担当したセッションの前半では、「働き方改革と業務改善をクラウドで実現したいと考えている現場のリーダー」に向けて作られたTeam Leadersのコンセプトについて説明。経営者向けのビジネス媒体、情シス向けのIT媒体、ビジネスマン向けのスキルアップ媒体とも異なるTeam Leadersのポジショニングや、スマートな働き方とクラウド活用を解説するコンテンツについて図版等を交えて聴衆に紹介した。

 続いて、こうした媒体を立ち上げた背景として、「ビジネス分野のチャレンジ」「情シスから現場部門へのシフト」「働き方改革とテクノロジーの成熟」「ビジネスクラウドの台頭」などの4つを挙げ、「今後はチームリーダーが部門単位でクラウドを導入し、情シスがそれを後からオーソライズするというボトムアップ型のIT活用に移行する。これまで情シスから『シャドウIT』と言われた領域が、ホワイト化していく流れだ」とアピールする。

 9月のサイトオープンを経て、働き方改革について集中的に取材した結果、大谷は「未曾有の人材不足がトリガーになっていることもあり、多くの企業は働き方改革に非常に前向き」という感想を得たという。一方で、うまく行っているところは、制度、文化、テクノロジーの3方向からアプローチしており、偏りがないという。その上で、「チームリーダーは業務課題には精通しているが、テクノロジーには必ずしも明るくない」と指摘し、両者をマッチングする人材の必要性を訴えた。

業務改善していけば、働き方改革につながる

 大谷の話を受けた倉貫氏は、「先ほどのシャドウITの話に出てきたとおり、現場でこっそりクラウド使っているところは増えています。でも、どうやって使いこなせばいいか悩んでいる人も多い」と指摘。ソニックガーデンが提唱する「業務ハック」というキーワードと、「働き方改革より業務改革」というメッセージについて説明した。

業務ハッカーのついて説明したソニックガーデン代表取締役の倉貫義人氏

 サイボウズのイベントということで、「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう」の新聞広告を掲出した倉貫氏は、「働き方改革って本当にできるのか?」と疑問を呈する。「経営者は働き方改革をやりたがるが、現場は具体的なやり方がわからない。生産性を上げずに、働く時間だけを短くするのなんてそもそもできるのか」と倉貫氏は指摘する。そんな疑問を解消するヒントとして倉貫氏が挙げたのが、アスキーに掲載された井上総合印刷の事例記事だ。

 九州の印刷会社である井上総合印刷は、kintoneを活用した業務改善により、「定時は15時」「休み上限なし」を実現している。「自転車操業が多い地方の印刷会社なのに、15時定時。子供の都合でいくらでも休んでいい。これってすごいこと」と倉貫氏は指摘する。

 記事を読んでいただければわかるとおり、井上総合印刷も一足飛びにそのレベルに達したわけではない。残業だらけだった会社を何とかしようと試行錯誤を繰り返してきた社長は、倉貫氏が執筆した「納品のない受託開発」を読んだことで、ツールとしてのITより「業務の見える化と改善」が重要なことに気がつく。「業務の流れをノートに書き込み、なにに時間がかかっているかを理解した。そこにkintoneを導入したら、あっという間に業務がスピードアップした」と事例について語る倉貫氏は、業務改善が結果的に働き方改革に寄与するという持論を聴衆に改めてアピールした。

井上総合印刷の事例について説明する倉貫氏

 とはいえ、業務改善は簡単に実現するわけではない。コンサルに改善策を依頼すれば、意見はもらえるが、モノは出てこない。システム会社に頼むと、とりあえずパッケージ入れましょうと言われてしまう。総じて、お金もかかりそうだし、時間もかかりそうだし、二の足を踏んでしまうのが多くの会社の実態だ。これに対して、倉貫氏は「Done is better than perfect.(完璧よりもまず終わらせろ)」というマーク・ザッカーバーグ氏の言葉を引用し、ハッカーのように、まずできることから始めようと訴える。

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