これからの「聖地」鷲宮
―― 長年のらき☆すたをきっかけとした取り組みを振り返った全体の評価、そしてその評価を踏まえてこれから進むべき方向性は考えていらっしゃいますか? 市町村の合併に伴って、活動を牽引してきた坂田さんが異動になられたり、組織の論理のなかで変化もあるかと思うのですが。
坂田 そうですね……わたしは7月からこの関係からは離れてしまってますからね。
―― 今年の7月から本所に?
坂田 異動しました。いまはもうアニメのアの字もないような仕事です。ただ、本所の立場としましては、各支所の特色ある取り組みは支援していきますので(笑)
―― (笑)
松本 とてもこなた踊りをやった人とは思えない、事務的な回答だ(笑)
―― 先ほど宿泊の話が出ましたが、鷲宮に限定せず広く見ると、じつは1つの経済圏と見なせるかもしれませんね。「らき☆すた経済圏」。
坂田 いま久喜市は約半分が元の久喜市、残り半分が鷲宮・栗橋・菖蒲の3地域です。最高意思決定者は商工会の会長なのですが、昨年のお祭りを視察して、「鷲宮はこれで行くべきだ」ということで予算が降りて、今年は商店街にスピーカーが付きました。会長がお祭り好きなのもありますが、らき☆すたの力は十分認められています。
―― (電柱の)タペストリーも毎年変えていますよね。あれも枚数がありますし、おカネが掛かりますね。
松本 タペストリーは久喜市の行政のほうの管轄になります。らき☆すたの絵を使いたいなどの相談をよく受けますね。
―― 合併後の久喜市においても、引き続き聖地として取り組みを続けていくということですね。一方でまもなく放映から10年になろうとしていて、やはりコンテンツの力が永遠に発揮されるわけではない。そこで、脱らき☆すた的な方向性は考えていらっしゃるのでしょうか?
松本 個人的には、脱らき☆すたというのは考えにくいですね。
坂田 そこで白黒ハッキリさせることもないのが、ちょうど松本がやっている野球であり、芋掘りであり……別にらき☆すたを直接出していませんよね。ラジオもそうですし。オタ婚活はまさにそう。
―― 先ほど、鷲宮でのイベントは非日常を楽しむ場と申し上げましたが、オタクの人が週末訪れて、非日常を楽しめる、オタク同士の交流も楽しめるという、なにかそういう場所になってきているのかなという感じはします。
お話を伺っていると、作品の人気がなくなったから別の作品を……ではなく、らき☆すたのときに培った人脈やノウハウが時代にあわせて上手につながっているなあと感じます。このへんを理解していないと、『うちの地域に今度アニメが来るから、これで行けるぞ』みたいに思っている地域は、そのアニメの人気がなくなった時点で盛り上がりも消えてしまう、なんてことになりかねないのかあ、と。
坂田 10年間見ていて、収支としてプラスだったのかというのは疑問ですよね(笑) 経済効果は別にして。イベントの運営費用と、近辺含めた商店などの売上を比べたときに、おそらく商工会としてはマイナスだよねと。
―― (笑)
坂田 だから、収益を過度に期待してはいけないのではと思います。損しなければいいかな、くらいで。あとは各商店が、何もしなければゼロだったところを、5%でも10%でも増えたならばそれで商工会の立場としては良しなのかなと。
―― 地元産業とのシナジーはいかがでしょうか?
坂田 初期は一生懸命グッズを考えていましたが、なるべく久喜・鷲宮のみではなく、近隣の有名どころまで拡げて作っていました。藍染めの携帯袋とか、ストラップも春日部が桐箪笥で有名なので桐製に。なるべく関連づけていましたね。
―― それはいまも引き続き?
松本 県内・市内の企業さんが関わっているなど、どこかしら地域とつながっている感は意識しています。
この連載の記事
-
第108回
ビジネス
『陰実』のDiscordが熱い理由は、公式ではなく「公認」だから!? -
第107回
ビジネス
『陰の実力者になりたくて!』の公認Discordはファンコミュニティー作りの最前線だ -
第106回
ビジネス
ボカロには初音ミク、VTuberにはキズナアイがいた。では生成AIには誰がいる? -
第105回
ビジネス
AI生成アニメに挑戦する名古屋発「AIアニメプロジェクト」とは? -
第104回
ビジネス
日本アニメの輸出産業化には“品質の向上よりも安定”が必要だ -
第103回
ビジネス
『第七王子』のEDクレジットを見ると、なぜ日本アニメの未来がわかるのか -
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? - この連載の一覧へ