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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第57回

「鷲宮には“何もなかった”から自由にできた」

らき☆すたの聖地・鷲宮が10年経っても安泰な理由

2017年01月15日 17時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII.jp

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ボランティアコミュニティーの力と新陳代謝

―― そういう人たちはボランティアでイベントでの運営も手伝ってくださるのでしょうか?

「らき☆すた神輿」のスタッフマニュアルもボランティアの手作り。マニュアル自体の完成度も高く、イベント運営に手慣れた人材が関わっていることをうかがわせる内容

松本 おそらくどの聖地でも似たり寄ったりだと思うのですが、聖地となったところは、まず人が来ます。不特定多数が来るなかで、常連さんが生まれてきます。その常連さんたちの間で今度は派閥ができてくるわけです。

―― (笑)

松本 で、消えていく人がいて、入ってくる人がいて。

―― 新陳代謝がある。

松本 たとえばらき☆すた神輿は、30名ほどの組織で募集から当日の運営までやっています。

―― イベント運営となると、打ち合わせが必須だと思いますが、商工会として何か協力したりは?

坂田 会議は商工会の会議室でやりますね。

松本 運営がきちんとしていて、細かいですよねえ。

坂田 うん! 我々が作る資料よりも(笑)

松本 らき☆すた神輿の際、スタッフは無線機を所持しているんです。その無線のチャンネルに入って、「すみません、商工会の松本ですけれど、ちょっと相談がありまして」と言ったら、その後のやり取りが見事で。「こちら○○班、商工会の松本さんからこういう連絡あり、どうぞ!」みたいな感じで、すごく組織的なんです。

―― 同人誌即売会の運営などで手慣れた方々が参加しているのかもしれませんね。

坂田 そして現在のリーダーは元自衛隊の方です。

松本 テント設営は我々より早いです(笑) そして10年見てきましたが、必ずそういった組織ができて、人が集まり、やがて去る人もいる。しかし組織自体は維持されているのです

―― 新陳代謝がスムーズに図られているおかげで、空中分解しなかったのですね。核は残しながら、去る者は追わず……。それってお二方がいつも見ている商工会とは違う、組織の力みたいなものがありますか?

松本 そうですね、全然違うと思います。自分たちはある程度ルールの縛りがありますが、集まっている人たちは来るも来ないも自由(なのに運営できている)。

商工会鷲宮支所はらき☆すたの歴代ポスターがズラリ。役員室前もご覧の通り

―― らき☆すたがブームになるまで、こういったフラットなコミュニティーと一緒に何かをすることはありましたか?

坂田 ありませんでした。

―― 昔だと、たぶんお祭りの神輿を担ぐ青年団がそういった役割を担っていたと思うのですが。

松本 青年部という組織はありますが、雰囲気は違いますね。

―― その集団には地元の人がいないわけですよね。そしてそれを結びつけている、核になっているのが、らき☆すたという作品であると。

坂田 その集まってくる人たちの文法って面白いですよね。同じ一定の動きって必ずあるんだろうなって思います。

―― そのボランティアが結成されたきっかけはあるのでしょうか?

坂田 2007年12月に最初のイベントが決まり、グッズを作ろうという話になったのですが、自分たちはオタクじゃないのでわからないわけです。そこでたまたま鷲宮神社を訪れていた巡礼の人に、「ちょっといい? いまこういうの考えているんだけど、どうかなあ?」と直接聞いてみたのです。

 そして意見交換しているうちに「手伝いますよ」となりまして。当時、mixiのらき☆すた関連コミュニティーから信頼がおけるメンバーを集めてくださって、当日は十数名が来てくれました。

―― そういった力を借りるにあたって、商工会の可否判断は割りとスムーズに?

松本 それはもう、「協力してくれる人はウェルカム!」という感じはありましたね。

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