まずは先週の宿題の続きから。MacBook Proの新モデルに買い換えよう、という話です。
すでに4年半が経過した筆者のメインマシンたる2012年モデルの15インチMacBook Pro。同じ15インチを選択すると、当時のモデルから処理性能はおよそ2倍に向上していることになります。
振り返れば15インチというサイズのMacは2001年頃からの付き合いになりますので、実に15年。長いですね……。何も考えずに15インチの新モデルを予約し、悩みこんでそれをキャンセルしたところまで前回書きました。
結果として、13インチを予約し直すことにしました。あれから色々悩みを深めていく過程で、13インチで大丈夫だ、と思ったきっかけは、普段のアプリの使い方にありました。
筆者はiPad Proも併用していますが、MacでもiPadでも、Ulyssesというエディタアプリを使う際、常に全画面表示で使っています。iPadアプリはもともとそういう仕様ですが、それゆえに9.7インチでも作業が可能になっています。 1つの画面に複数のウインドウを配置して、という作業はしないのです。
そう考えると、画面サイズが必ずしも15インチでなくてもよく、それなら軽くて持ち運びにより便利な13インチの方が良い、という結論に至った次第。たくさん言い訳をしている分、未練も大きい、というわけです。
という話をMedium(https://tarosite.net/down-sizing-macbook-pro-review-9f1ce071957c#.g2e13ssz2)に書いた所、後でお話しするイベントの会場で、諸先輩方から13インチという選択に、「驚いた」「まさか」「心が揺らいだ」という反応をいただきました。非常にロジカルに考えた結果なのでこれでまた4年間使っていこうと考えているのですが、そんなに意外なことだったとは。
一生もののインターフェイス
さて、11月22日に秋葉原で開催されたのは、PFU主催のHHKB 20周年記念イベントです。
HHKBとは「Happy Hacking Keyboard」の略で、「ASCII配列」「深さがあるしっかりとしたタッチ」「持ち運びが可能な小型・軽量・堅牢性」を兼ね備えた外付けキーボードというコンセプトで開発された製品です。今もなお「プロの要求に応えるキー配列と、上質なタイピングの実現」という本質を追究している製品です。
HHKBシリーズとしてリリースされたすべての製品が会場に並べられ、変わらぬパッケージと、深化の変遷を指先で確かめることができました。その製品群を眺めながら記憶を辿ると、筆者は2001年に、HHKB Lite2というUSB対応の製品から使い始めたことを思い出しました。
ちょうど、15インチのPowerBookと同じく、2001年に使い始めたキーボードは、お小遣いを貯めてHHKB Professional 2を手に入れるまで、長期にわたって使ってきました。そうだった、そうだった。
HHKB開発のきっかけとなる論文を書いた東京大学名誉教授 和田英一氏の言葉である「コンピュータは消耗品、キーボードは一生もの」という言葉を、実感する瞬間でした。
HHKB、その開発秘話とは
HHKBは1996年に発売されて、進化を重ねながら、すでに40万台を出荷するロングセラーとなっています。イベントでは、このキーボードの開発と発展に関わった方々が一堂に会し、その誕生秘話が語られました。
1991年に、前述の和田氏が、PFU研究所向けの機関誌の冒頭に「けん盤配列にも大いなる関心を」という論文を寄稿したことが、後にHHKB開発につながります。冒頭の文章は1ページ程度のものであることが一般的ですが、和田氏はここぞとばかりに10ページ、思いの丈を綴ったと語ります。
その文章は、ウェブサイトでいまでも読むことができます。
和田氏が東大を定年して富士通研究所に移った際に、再びこの論文が話題にのぼり、5年後にHHKBの最初の製品が作り出されるに至ったというわけです。作る過程では、持ち運べるサイズを確かめるため、既存のキーボードの外周を切って試作機を作ったこともあったそうです。
1996年12月に発売された初代HHKBは500台の初回ロットがすぐに完売しました。発売前に和田氏がWIDEプロジェクト(日本を代表するインターネット創生期に貢献した研究団体)に見せたところ、大好評を得たというところからも、当時のハッカーと呼ばれるコンピュータのプロにとって、待望の製品だったことがうかがえます。
米国では評判の良さと裏腹に、価格の高さがネックになって思うように売れなかったそうです。そこで価格を抑えるLite版を開発し、こちらもロングセラーのヒットになりました。筆者はそのセカンドバージョンからHHKBに入門し、「いつかは本流へ」というステップアップを夢見てタイピングに励んだものです。
コンセプトもデザインも「変わらないこと」が是となるこの製品。その背後で重要だったのは、ファンの醸成でした。例えば、ジャーナリスト、ノンフィクションライターの山根一眞氏は「HHKBに出会ってから、これなしでは仕事ができない」と言い、もしPFUがHHKBの製造を止めたら仕事を辞める、とまで言わせるほどでした。
この連載の記事
-
第264回
スマホ
ライドシェアにシェアバイク、これからの都市交通に必要な真の乗り換え案内アプリとは? -
第263回
スマホ
Amazonが買収したスーパーマーケットで生じた変化 -
第262回
スマホ
日産「はたらくクルマ」でみたテクノロジーでの働き方改革 -
第261回
スマホ
WWDC19で感じたのは、体験をもとにアップルがサービスの整理整頓を進めているということ -
第260回
スマホ
LoTで、いかにして世界から探し物をゼロにできるか?:Tile CEOインタビュー -
第259回
スマホ
ファーウェイ問題で感じたテクノロジーと国家対立の憂鬱 -
第258回
スマホ
スマホでの注文が米国でのスタバの役割を変えた -
第257回
スマホ
10連休に試したい、ゆるやかなデジタルデトックス -
第256回
スマホ
人によって反応が異なるドコモの新料金プラン -
第255回
スマホ
「平成」と「令和」 新元号発表の瞬間の違い -
第254回
スマホ
Adobe Summitで語られたAdobe自身のビジネスや開発体制の変化 - この連載の一覧へ