詳細データをアプリから収集/分析/可視化、CNNアプリの顧客体験も改善した「CA AXA」
「5つ星の顧客体験を」CAがモバイルアプリのUX計測ツール
2016年10月13日 07時00分更新
CA Technologiesは10月12日、アプリケーションから顧客体験(UX:ユーザーエクスペリエンス)に関わる詳細なデータを収集し、分析/可視化するツール「CA App Experience Analytics(CA AXA)」の国内提供を開始した。モバイルアプリ/WebアプリのUX改善を支援する。
CA AXAは、アプリ上における顧客の行動と、ビジネスサービスの稼働状態に関する情報を収集し、相関分析をリアルタイムに実行するアナリティクスプラットフォームSaaS。アプリ開発時にSDKやラッピング、特定のJavaScriptコードを使ってAXAへの対応機能を埋め込むことで、アプリ/クライアントの詳細な情報がクラウドに収集され、相関分析や可視化が可能になる。
デバイスのモデル、OSやバージョン、通信キャリア/Wi-Fi、CPUやメモリ、ストレージの使用率といったプラットフォーム情報から、各セッションで発生した詳細なイベントと使用時間、ユーザーの画面遷移、アプリクラッシュ時のシステム状況といったデータが収集できる。モバイルアプリの場合は、画面のどこをタッチしたかもイベント情報として収集されている。
こうしたデータはリアルタイムに解析/可視化され、ダッシュボードで全体像や異常発生状況を把握できるほか、各項目をドリルダウンしてさらに詳細な情報も参照できる。発生したイベントを時系列に参照できる詳細なセッションビューや、セッションの一連の流れをアプリ画面付きで“ビデオ録画”のようにリプレイする機能、各画面上でよくタップされる位置のヒートマップビュー、クラッシュの根本原因をコードレベルまで深掘りする機能などもある。
CA AXAは単体で利用できるが、さらにデータセンターインフラの視点からアプリのパフォーマンスを監視してきた「CA Application Performance Management(CA APM)」と連携させることで、パフォーマンス劣化の原因をインフラ側からも同時に分析していくことができる。
CA AXAの価格は要問い合わせ。なお、30日間の無償試用版も用意されている。
日本のすばらしい顧客サービスを“デジタルの世界”に移行するためには
米CA APM製品管理部門担当VPのクリス・クライン氏は、既存製品のAPMが「インサイド・アウト(内から外へ)の視点」で「アプリのパフォーマンス」に注目するツールだったのに対し、新製品のAXAは「アウトサイド・イン(外から内へ)の視点」で「ユーザーのジャーニー(一連の体験、動線)」に注目するツールであり、両者は相互補完的な関係にあることを説明した。
「ユーザーが、アプリが提供する顧客体験に不満を持っている場合、アプリの『デザイン』『コード』『インフラ』のいずれかに原因があると考えられる。CAは、AXAとAPMの連携でこのすべてに対応できるのが大きな特徴だ」(クライン氏)
AXAが収集/分析する詳細なデータによって、たとえば特定のページ遷移をしたときにだけ発生するクラッシュ、特定のOSバージョンやキャリアでのみ発生するパフォーマンス劣化なども、その原因を容易にたどることができる。
「たとえば、アプリのあるページから次のページへ遷移するユーザーの割合が異常に少ないことがわかったら、ここからさらに、アプリがここでクラッシュしやすいからなのか、あるいはインフラ側のパフォーマンスが悪いからなのか、といったことを調査し、UXを改善していくことができる」(クライン氏)
またAXAでは、従来のAPMにはなかった「ビジネスコンテキスト」の視点を加えて表現することで、企業の経営層、ビジネスユーザーなどにも「伝わる」ツールになっていると説明した。
米国では今年5月にリリースされ、ニュース専門放送局のCNNが米大統領選に関する情報をキュレーションする「Politics」アプリで採用した。AXAが収集するUXのデータに基づき、3カ月間にわたってアプリの改善を重ねた結果、アプリのリピート使用率やクラッシュ率を改善することができた。クライン氏は、アプリ改善の一例としてデザインの問題を挙げた。
「Politicsアプリを起動すると、まず最初に(最新ニュースが書かれた)カードが表示される。当初のバージョンでは、このカードを『スワイプ』して次に進むデザインになっていたが、AXAで調べてみると、多くのユーザーはこれを『タップ』していた。そこで、新しいバージョンではタップで次画面に進むように改善した」(クライン氏)
また、日本CA DevOps担当ソリューションセールスディレクタのマティ・カフェマン氏は、日本市場におけるCA AXAの意味合いについて語った。
あらゆる業種のビジネスで「デジタルトランスフォーメーション」の必要性が叫ばれるようになった現在、モバイルアプリはユーザーの手元で「企業ブランドを語る存在」になっており、そこで提供される顧客体験が貧弱なものであれば、ブランドに傷が付いてしまうだろうと、カフェマン氏は指摘する。
特に、他国と比べて日本の企業は、高い質の顧客サービスを提供することに尽力してきた歴史がある。カフェマン氏は、デジタルトランスフォーメーションによって、顧客体験の場がリアル店舗からオンラインへと移る中で、その高い質のサービスをどうデジタル世界に移行していくかも重要な課題だと語った。
「たとえば日本の銀行の接客サービスは、世界に類を見ないほどすばらしいものだ。わたしが店舗に足を踏み入れると、行員が目配りをしていて『今日はどんなご用件ですか』と声をかけ、案内してくれる。では、モバイルアプリが“支店”になるデジタルトランスフォーメーション時代に、そうした顧客体験を提供していくためにはどうしたらよいだろうか」(カフェマン氏)
日本市場におけるターゲット顧客として、カフェマン氏は「すでにデジタルトランスフォーメーションの取り組みを始めている企業」や「APMなどを導入してインサイド・アウトのビューを持っている企業」を挙げた。特に、金融や小売の顧客がAXAへの関心を持っているという。
クライン氏は、69%の企業が、アプリの可用性や開発期間などよりも「顧客体験」を最優先事項と見なしている、というフォレスターのグローバル調査結果を紹介した。「つまり、顧客に『5つ星の顧客体験』を提供することが重要、ということだ」(クライン氏)。