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盛田 諒の「アスキー家電部」第46回

原体験は“夜明けのカップヌードル”

バルミューダ、おいしいコーヒーにこだわった電気ケトル「BALMUDA The Pot」

2016年09月27日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 こだわりのトーストにはこだわりのドリップコーヒーだ。バルミューダ寺尾玄代表のこだわりが止まらない。

 26日に発表したのは電気ケトル「BALMUDA The Pot(バルミューダ ザ ポット)」。細口ノズルでお湯を静かにゆっくり注げてコーヒーのドリップがしやすい。逆に少し角度をつければ大量のお湯をすばやく注げるのでカップめんなども作りやすい。容量0.6L、消費電力1200W。直販価格1万1880円、10月中旬発売予定。

 注ぎ心地にこだわり、ハンドルの重心バランスとノズルの形を調整した。ノズルは40〜50種類を試作したという。ボディとノズルはステンレス製だがフタと底部とハンドルは樹脂製で加熱中も熱くならず、水を足したりしやすい。ボディはざらついたテクスチャーを入れてマットな質感を出した。加熱時はハンドル手元のネオン管がじりじり光る。カラーはブラック、ホワイト2色。

BALMUDA The Pot(1万1880円、10月中旬発売)
細口ノズルで静かにゆっくりお湯を注ぎやすい
コーヒードリップがしやすい静かな流速
傾けるとカップめんなどを作りやすいすばやい流速
加熱中は手元でネオンライトが光る
フタは底部や持ち手と同じく樹脂製で熱くならない。パッキン付きで保温性もある
ブラック、ホワイトの2色。記者のおすすめは鉄瓶やスキレットパンを思わせるブラック
15万台売ったというBALMUDA The Toasterと同じ質感にそろえた
黒いコーヒードリッパーとサイフォンもハリオと共同開発した

 バルミューダのキッチン製品は昨年の高級トースターに続く第2弾。トースターは現在までに15万台を売り、いま炊飯器やコーヒーメーカーなどを開発中だと寺尾代表は明かした。炊飯器は試作機段階では「すっごくおいしい」(寺尾代表)出来。「なんとしてでも年内に炊飯器を出せよと押している」(同)。

 「ものより体験」をコンセプトに作ったのがキッチン家電第1弾の高級トースター。好物のチーズトーストを食べながら「こうなったらおれはていねいに淹れたコーヒーが飲みたい」と思った寺尾代表が手をつけたのがコーヒーのハンドドリップだった。初めてドリップに挑んでみたものの、普通のヤカンではノズルが太すぎてうまくお湯が注げず、いわゆるコーヒーケトルは底が小さくガスコンロにもかけられない。家でもきちんとドリップができるようにと、湯の出る量や速度を考慮し、形や質感も追求した電気ケトルを開発することにしたのだという。

寺尾代表が明かしたロードマップ。炊飯器やコーヒーメーカーが控えている
寺尾代表。いつもながら製品の出来に並ならぬ自信を見せていた

 とくに気にしたのが湯の出る速度。チロチロとしかお湯が出ないのでは使いづらいと、普段使いでストレスのない速度を心がけた。

 目安にしたのはカップヌードルが作りやすいこと。なぜカップヌードルかというと、寺尾代表がまだ16歳、学校に行くことなくバイクを乗り回していたときの記憶が念頭にあったという。夜通しバイクで走ると腹が減って疲れてくる。朝5時ごろ、県道にあった自販機でカップヌードルを買い、夜明けの寒い中、道端ですすって食べていた。会社を持ち、家族を作ってもいまだにそのときの習性が抜けず、カップヌードルを食べるときは夜中か夜明け。わざわざベランダに出て寒い中、麺をすする習慣がついてしまっていると寺尾代表は話していた。

 ようするに昔やんちゃしていたときの記憶が寺尾代表にとって「食うこと」の大事な原体験になっており、そのひとつがカップヌードルという話だった。高級トースターを買って暮らしの質を高めようとする奥さまたちとは真逆の逸話という気がして心配だが、いわゆる男の美学に共感する方もあるのかもしれない。

実体験にもとづく逸話「夜明けのカップヌードル」。いわゆるやんちゃしていたころの思い出

 コーヒーケトルとして開発をはじめた電気ケトルThe Pot。発表会には福岡REC COFFEE(レク・コーヒー)のバリスタ岩瀬由和さんが招聘されていた。岩瀬さんはジャパンバリスタチャンピオンシップ優勝者で、寺尾代表は岩瀬さんに淹れてもらったコーヒーを飲んだとき「これはもはやコーヒーとは言えないレベル」のおいしさに感動して泣いてしまったらしい。「ひとりの男がコーヒーの道で生きようと考え抜いてきた。その集大成というか、特別な一杯だった」(寺尾代表)

 会場で岩瀬さんに簡単なペーパードリップの仕方を教わり、実際にコーヒーを淹れてみた。円錐状のペーパーフィルターに軽くお湯をかけ(リンスするという)、ゆっくり注いでいく。細いお湯が簡単に出るのでたしかにドリップがしやすく、ドリップを終えたコーヒーも濃厚でおいしかった。わたしが普段コーヒーを淹れるときに使っているのはラッセルホブスの電気ケトル。専用のコーヒーケトルに比べると水が空気をふくんで玉状になりやすく、The Potのほうが滑らかな流れを保てていた印象があった。実際に並べて比べてみたい。

福岡REC COFFEEのオーナーである日本一のバリスタ岩瀬由和さんにドリップ方法を教えてもらった
コーヒー豆はREC COFFEEとバルミューダによる特製ブレンド。深煎りせず豆の種類だけでどっしり濃厚な味に仕上げている
おいしくできた。岩瀬さんいわく底が円錐状になっているフィルターを使うとき「の」の字は描かなくてよいということ

 The Potはトースターに次ぐ、こだわりの強い電気ケトル。ただ今回は体験としてはあくまで“お湯を注ぎやすい”というだけ。お湯を10分間ほど沸騰させつづけて白湯を作るわけでもなく、あくまでもコーヒーをドリップしやすい電気ケトルなので、「めちゃうま!」など感覚的にわかりやすく表現するのが難しい。「ものより体験」をテーマとした同社のキッチン製品シリーズとしてはやや地味だ。

 トースターとおなじようにものとしてはとても美しく、見栄えがよくキッチンに映える。価格もだいたい電気ケトルの市場相場に合っている。お湯の注ぎ心地も悪くないので、いま電気ケトルが欲しいと思っているならトースターとセットでそろえてしまっていいかもしれない。まずは近いうちに実用試験をしたい。


■関連サイト

※お詫びと訂正:初出時、コーヒードリッパーなどの共同開発先を誤って記載していました。訂正をもってお詫びします。



盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中

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