コグニティブサービスによるSystem of Innovationの世界へ
クラウドネイティブの次を見据えた「IBM Cloud Platform」
2016年07月08日 07時00分更新
7月7日、日本IBMはクラウド事業の方針説明会を開催。3月にクラウド事業本部長に着任した三澤智光氏は、コグニティブサービスを支えるプラットフォームとしてIBMクラウドを展開するとアピールし、SoftLayerとBluemixの統合や、ヴイエムウェア・SAPなどとの提携について方向性を説明した。
IBMはなにをする会社か?
説明会に登壇した三澤氏は、まず「IBMはなにをする会社か?」という全社の方向性について言及。「IBMはコグニティブ・ソリューションとクラウド・プラットフォームの会社です」という社長兼CEOのバージニア・M・ロメティ氏のコメントを引用し、「今までなかったコグニティブサービスをベースにしたアプリケーションを、クラウド上で提供するという、僕自身は腹落ちしている内容」(三澤氏)とコメントする。構造化データのみならず、非構造化データをも取り込み、WATSONを代表とするコグニティブサービスで理解と推論、学習を深めていく。これにより、企業の競争力につなげていくというのが、IBMの提供する新たな価値だという。
一方、企業はクラウドネイティブの世界に進みつつある。スタートアップやゲーム、HPCのような「System of Engagement(SoE)」や安価に大量なデータを取り込んでアナリスティックを行なう「System of Insight(SoI)」、あるいは財務・会計や顧客管理などのSaaSがカバーする「System of Record(SoR)」に関しては、すでにクラウドネイティブ化が進み、次は最新のコグニティブサービスを活用した「System of Innovation(SoI)」へと足を踏み入れていくというのが三澤氏の見立て。こうした中、さまざまなシステムを包括的にカバーできるハイブリッドなクラウドが今後重要になっていくというのが、IBMの市場分析だ。
こうした中、IBMは「IBM Cloud Platform」として、SoftLayerのIaaSを中心としたクラウドサービスと、BluemixやWebSphereなどのクラウドソフトウェアの事業部を統合。差別化の難しくなっているIaaSから、PaaSやソフトウェアの領域に主戦場を移しつつ、OpenStackやCloudFoundry、Apache Spark、docker、node.jsなどクラウド時代のスタンダードなテクノロジーに大きく貢献していくという。
ユニークなIaaS「SoftLayer」と130種類のサービスがある「Bluemix」
続いて三澤氏は、IBM Cloud Platformの最新動向をおさらいした。
現状、IBM Cloud PlatformはFortune 500の企業の85%が顧客となっており、それを支えるデータセンターもグローバルで48拠点にのぼっている。IBMのソフトウェアもすでに100%クラウド対応になっており、Bluemixの新規アカウントは毎週2万アカウントずつ増えている状況だという。日本においては金融業界を中心に導入が加速。また、年間で1000回におよぶイベントを開催し、5000名以上のメンバーが参加しているとアピールした。
IaaSであるIBM SoftLayerに関して、三澤氏は「非常にユニーク」と感想を語る。大きなデータを扱うSoRとの相性が悪い仮想サーバーに対して、SoftLayerのベアメタルサーバーは、ユーザーによる専有が可能で、I/O不足とライセンスの問題を解消できる。また、データセンター間を接続した10Gbpsのネットワークが使い放題である点も大きな差別化ポイントになる。三澤氏は「グローバル展開する企業では、これ以外の選択肢はないと思う」とアピールする。
また、開発者向けのBluemixでは、開発スターターキット、ランタイム、アナリスティック、WATSON、Webアプリ開発、モバイル、DevOps、IoTなど130種類以上のサービスとAPIカタログを用意。三澤氏は、「DB2やWebSphereのようなアプリケーション基盤やNode-Red、Liberty for Javaのような開発者向けサービス、APIコネクトやブロックチェーン、そしてコグニティブサービスまで1つのプラットフォームで提供できる」とアピールした。
これらは複数の環境にデプロイ可能。パブリッククラウドのみならず、SoftLayer上に専有環境を持つ「Dedicated」、自社データセンター上のマネージドサービスとして利用できる「Local」などを適材適所で選択でき、クラウドならではの迅速性、コスト効率、セキュリティなどを享受できるという。