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OpenStackの“現在位置”が紹介された基調講演レポート

コミュニティも導入企業も加速、「OpenStack Days Tokyo 2016」

2016年07月07日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 7月6日と7日、OpenStackのコミュニティイベント「OpenStack Days Tokyo 2016」が東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催されている。6日の基調講演ではOpenStack Foundation共同創設者などが登壇し、OpenStackコミュニティの現状や企業における採用実態、4月にリリースされた最新版「OpenStack Mitaka」の概要などを紹介した。

基調講演で登壇した、OpenStack Foundationの共同創設者でCOOを務めるマーク・コリアー(Mark Collier)氏

東京・虎ノ門ヒルズフォーラムでは講演会場、展示会場とも多くの参加者でにぎわった

日本でも参加者の“本気度”が高まってきたOpenStack Days Tokyo

 基調講演に先立って、OpenStack Days Tokyo実行委員長の長谷川章博氏(ビットアイル・エクイニクス)が挨拶に立ち、6年目を迎えたOpenStackコミュニティと、今回で4回目となる同イベントそれぞれの“成長”を振り返った。

 現在、グローバルでのOpenStackコミュニティメンバー(開発者)は5万4000名を超え、ソースコードは総計で2000万行を数える。179カ国、600以上の企業がその活動をサポートしており、OpenStackベースのプロダクトはすでに579もあるという。東京では昨年10月に、OpenStackコミュニティのグローバルイベント「OpenStack Summit Tokyo」が初めて開催され、50カ国から5000名超の参加者を集めている。

 OpenStack Summitとは異なり、OpenStack Daysは地域ごとに開催されるコミュニティイベントだ。長谷川氏によれば、OpenStack Days Tokyoは第1回の参加者700名、スポンサー15社の規模から、今回は参加者2500名(予測)、スポンサー54社と着実に成長している。

OpenStackとコミュニティの現況

OpenStack Days Tokyoのこれまでの規模推移

 長谷川氏は、来場者に対する事前アンケート結果も紹介した。前回時点ではまだ「OpenStackの導入予定なし」という来場者が約半数(48%)を占めていたが、今回はそれが大幅に減り(14%)、「導入を検討/調査中」という回答が増えている(37%)。この1年間で、日本の企業においてもOpenStackに対する“本気度”が大いに高まってきた表れだと言えるだろう。

 また「OpenStackを利用して導入済み/導入したい機能」という質問についても、OpenStackの機能的な充実に歩を合わせるかたちで、「仮想サーバー管理」だけでなく「コンテナ管理」「ベアメタル(物理サーバー)プロビジョニング」「仮想ネットワーク」などに広がっている。

 長谷川氏は、コミュニティ(日本OpenStackユーザ会)の最近の取り組みとして、運用管理者(オペレーター)どうしのノウハウ交換の場となる「Ops Meetup」、開発者がコミュニティにコードを提供する際の“作法”を学ぶ「Upstream Training」などを実施しており、ぜひ積極的に参加してほしいと来場者に呼びかけた。

導入されたOpenStackの3分の2が「本番環境として」稼働している

 OpenStack Foundationの共同創設者/COOのマーク・コリアー氏は、今年4月に開催された「OpenStack Summit Austin 2016」における新たな発表内容について報告した。6年前、同じくテキサス州オースティンで開催された初回のOpenStack Summitにはわずか75名の参加しかなかったが、今回は7500名と、実に100倍まで成長したという。

 1つめの発表は、OpenStackの運用管理スキルを証明する認定資格「Certified OpenStack Administrator(COA)」だ。世界中のどこからでも、Webサイトからサインアップすれば受験が可能で、さまざまなベンダーからCOA取得に向けたトレーニングコースの提供も始まっている。

OpenStackの運用スキル認定資格「Certified OpenStack Administrator(COA)」がスタート(http://www.openstack.org/coa)

 また、OpenStackの13番目のリリースとなる「OpenStack Mitaka」も発表された。2300名以上の開発者(コントリビューター)が参加したMitakaリリースでは、特に「管理性」「拡張性」「ユーザーエクスペリエンス」という3つのテーマにフォーカスを当てて機能改善が進められ、より幅広い領域で採用が進むことが期待されている。

13番目のリリース“Mitaka=三鷹”の名称は、昨年のOpenStack Summit Tokyoで話し合われ決定した

 「米国Fortune 100企業の半数がOpenStackを使用している」「導入されたOpenStackの3分の2、65%が本番環境として稼働している」という、OpenStack Foundationが実施した最新ユーザー調査の結果も紹介された(米国で6月に発表)。特に、本番環境の比率は昨年から33%も増加しており、順調な成長ぶりがうかがえる。

OpenStack導入ユーザーが、POC(検証)、開発/テスト、本番のどの環境で利用しているか(ユーザー調査より)。本番環境での利用が順調に増えている

 また同調査では、OpenStackを導入した企業/組織の業種についても集計しており、インターネット企業やパブリッククラウドプロバイダーだけでなく、徐々にプライベートクラウドを構築する大企業、NFV環境を構築するテレコム事業者、大学/政府研究機関という4つの市場が代表的な採用モデルとなっているという。「OpenStackの採用状況は変化してきている」(コリアー氏)。

回答者の業種(ユーザー調査より)。いわゆるインターネット企業だけでなく、テレコム事業者、大学/研究機関、大企業のプライベートクラウドなどでも採用が進む

 コリアー氏は、ビジネスのデジタル変革とディスラプション(破壊的変化)、IT環境の多様化/複雑化を背景として、企業がこれからの時代に成功を収めるためには、IT基盤にさらなる柔軟と迅速性が求められることを指摘。仮想サーバーだけでなく物理サーバー、コンテナ、ストレージ、ネットワークとIT基盤全体の管理機能を備え、多様なベンダーのIT製品との相互運用性も拡大し続けているOpenStackが「インテグレーション(統合)エンジン」となり、企業の「イノベーションエンジン」として進化していくと、その将来像をまとめた。

なお基調講演の中では、OpenStack Mitakaリリースに貢献した日本の開発者が表彰された。“あらゆる場面で役立つ存在”という意味の「ダクトテープ賞」、そして骨身を惜しまぬ献身ぶりをたたえる「あなたはいつ寝てるんだ?賞」

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