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3000円の安物イヤフォン「Piston Classic」の音は1万円クラスに匹敵

2016年06月18日 12時00分更新

文● 四本淑三

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音は1万円クラスに迫る?

 しかし「そんな安物、興味ないよ」という声も聞こえてきそうです。確かに、この価格帯の製品は、大多数のユーザーの買い換え需要を支えている割に、性能的にパッとしたものが見当たらない。

 企画にしても、陳列時に目立つデザインでどう差別化するかにウエイトが置かれ、肝心の音は判で押したように、低域出し過ぎこもり過ぎ。大抵の製品はOEMで、コモディティー化の済んだセグメントです。たくさん売れるので、安く作った方が勝ちという世界。

 しかし、そこでかなり本気で勝負しているのがPiston Classicです。まず帯域バランスがフラットに近い。加えて低域の再生限界はぐっと低く、かつ追従性にも優れている。高域の伸びはナチュラルで、ダイナミック型ドライバー1発としては、十分にワイドレンジ。そして一番美味しいのは、やはりミッドローの厚みです。

 たとえばコンプレッションのかかったベースの、ほんの一瞬のアタックにも間断なくレスポンスし続ける。あるいはキックのアタックと同時に、後から付いてくるエアーの風圧感が、ほかの音に埋もれることがない。それらがダイナミックレンジの広さとして伝わってくるうえに、音像が一点に集中せず、適当に広がって聴こえるので疲れない。

 音の善し悪しは人の好み次第ですが、少なくとも悪いところは見当たりません。これよりバランスの取れたものがほしければ、1万円台の製品も視野に入れなければ無理かもしれません。これではほかのメーカーは太刀打ちのしようがない。あとは中国国内の人件費高騰か、ロボットの進化を待つしか手立てはないような。

 しかし、音は物理でマジックではありません。この価格で提供できる、本質的な性能向上につながる技術も現れていません。したがって難点もあります。

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