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Chef、Mesosphere、Hashicorp、MSのDevOps伝道者が「de:code 2016」で熱いトーク

MS率いる黒船軍団が“DevOps鎖国”日本に開国を迫った日

2016年06月16日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「許可を求める必要はない」まずは小さく始め、周囲に見せて浸透させる

 導入の次のステップとして、DevOpsにより多くの人を巻き込み、社内に浸透させていく作業がある。「DevOpsの成長を加速させるために、どんな具体的ソリューションを勧めるか」という質問に対し、Hashicorpのハシモト氏は「結果を周囲に見せること」だと答えた。

 「まずは小さなチームから始めて、その成果を周囲に見せること。『えっ、そこまで出来るのか』と、周囲の社員にサプライズを起こすことが重要だ」(Hashicorp・ハシモト氏)

米Hashicorp(ハシコープ)CEO/Creator of Vagrant, Packer, Consulのミッチェル・ハシモト氏

 Chefのケーシー氏も、業務プロセスや企業風土を変えるためにはまず「やってみる」こと、実践から経験を得ることが大切だと同意する。

 「ある企業では、(DevOpsを主導する)先進チームが、社内にデモを見せる『デモ・デイ』を毎週開催している。4、5回実施すれば、数百人が集まるようになった。ここで(社員から受けたフィードバックへの)“カイゼン”の進捗も見せる。集まった社員も、そのうち自ら学びたいと考えるようになる」(Chef・ケーシー氏)

 最初は小さなチームからスタートすべき理由として、Mesosのウィリアム氏は「社内の許可を得る必要がないこと」を挙げる。大きなチームで動くとなると、どうしても社内のコミュニケーションや稟議に時間がかかり、スピードを阻害してしまうからだ。

 「許可を求める必要はない。まず先にやってしまって、うまくいくことを実証してみせた後で『ごめんね、成功しちゃった』と言えばいい(笑)」(Mesos・ウィリアム氏)

 またウィリアム氏は「イノベーションのスピード感に慣れること」も大切だと語った。たとえば「Docker」などのイノベーションは次々に登場するが、DevOpsでは1つのテクノロジーに依存することなく、こうした新たなテクノロジーを継続的に導入し続けることになる。

 一方で、日本企業におけるDevOps導入や変革をサポートしてきた経験から、マイクロソフトの牛尾氏は「ぜひ『バリューストリームマップ(VSM)』の作成から実施してほしい」と語る。

 VSMでは、最終的に顧客へ提供される「価値」を軸として、最初のアイデア作りから本番展開まで、一連のソフトウェア開発の流れを時間経過に沿って図解する。全体像を可視化すれば、付加価値を生まない無駄なプロセスを、関係者の合意の下で削減できる。

 「日本企業では特に、プロセスやビジネスルールを変える権限を持つ利害当事者を巻き込んで実施することが重要。利害当事者を巻き込むことで、『このプロセスは冗長だ』とか『この承認は不要だ』とか『ここは自動化できる』とか、一緒になって無駄を削減できる」(牛尾氏)

 牛尾氏は、自らがサポートしたNECソリューションイノベータでのVSM採用事例を紹介した。「それまでは“いかにもエンタープライズ”なカルチャーだった」という同社では、Dev側、Ops側の担当者を集め、3日間をかけてVSMと自動化実装のハッカソンを実施。アイデアから本番展開まで、これまで8.5カ月かかっていた開発期間を1週間へと大幅短縮することを目標として業務改革を進めている。すでに実現のめどはついているそうだ。

訂正とお詫び:掲載当初、「3日間をかけてVSMを実施」「開発期間を1週間へと大幅短縮できた」としていましたが、関係者より誤りのご指摘をいただきました。上記のとおり訂正いたします。(2016年6月16日)

NECソリューションイノベータでは“アジャイルなカルチャー”実現を目指し、まずはVSMを用いて開発プロセスの無駄を可視化していった

DevOpsは“逆輸入”されたもの、日本の企業カルチャーは障壁ではない

 ところでこのVSMの発祥は、実は日本のトヨタである。Hashicorpのハシモト氏、マイクロソフトのグッケンハイマー氏は共に、そもそもアジャイルソフトウェア開発手法の研究者たちは、日本の製造業における生産管理手法から多くを学んだことを指摘する。端的に言って、日本の企業カルチャーはDevOpsにそぐわないという理解は間違いだ。

 「たとえば、徹底的に無駄を排除するリーン生産方式(リーンマニュファクチャリング)など、日本企業は製造業分野ではうまくやっている。企業カルチャーという話も出てきたが、カイゼンを繰り返すなど、DevOpsには日本的な精神があるのでは」(Hashicorp・ハシモト氏)

 「(日本の製造業で培われた)リーン生産方式が、初期のアジャイルソフトウェア開発に影響を与えたと言われている。今はそれが逆輸入されているわけだ」(MS・グッケンハイマー氏)

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