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地味ながらリアルな顧客の声に向き合う姿勢を見せた「SAPPHIRE NOW 2016」

「SAPはすでにクラウド転換の“次”を見ている」SAP馬場氏

2016年06月13日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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――「HANA Cloud Platform(HCP)」の現状について教えて下さい。

馬場氏:HCPも受け入れが好調で、この2年で急カーブを描いて伸びています。転換点を迎えたと感じています。

 HCPは、SAP技術との統合/拡張/新しいアプリケーションと「3つの用途」を持ちます。たとえばSuccessFactorsの場合、SuccessFactorsの機能拡張ができるだけでなく、バックエンドの会計人事システムとの統合もできるので、SuccessFactorsとHCPをセットで買うという例が増えています。次はAriba、Concurと広がります。

 拡張や統合は、ほかのSaaSではなかなか難しい。SaaSは基本的にそのまま使ってもらうことを前提としており、APIを用意していないことも多い。なので、PaaSがあったところで、連携や拡張基盤にアプリケーション側が対応していないことも多いのです。

 これに対してSAPは、数年前にHCPを本格導入し、同時にアプリケーション側、SaaS側に対してもマスターの参照やインボイスの取り込みなどのAPIを作り、典型的な連携シナリオを用意しました。これが奏功したといえます。

――HCPの採用事例にはどんなものがあるのでしょうか。

馬場氏:数として多いのは、最初にフォーカスしたSuccessFactorsになります。製品の対応が早かったのに加えて、販売力もあったからです。その後、Ariba、Concur、Hybrisと広がっています。

 先ほど挙げた3つの用途の3番目である、新しいカスタムアプリ開発の事例も増えています。日本では三菱自動車が最初の稼働事例となりました。SuccessFactorsでもAribaでもなく、オンプレとのバックエンドの接続でもなく、純粋なHCP上のカスタムアプリです。

 Amazon Web Services、Windows Azure、Google Cloud Platformなど、いろいろなクラウドプラットフォームがある中でHCPが選ばれる理由として、HCPはHANAベースなので、カスタム基盤として“気が利いている”という点があります。ビックデータ、シュミレーション、予測分析、位置情報、IoTなどの機能です。件数でいうと、多いのはIoTアプリでしょうか。スポーツ関連でもよく使われています。

 3つの用途のうち、数では「拡張」と「統合」が多いのですが、ビジネス規模でいうと「新しいアプリ」が一番大きいと見ています。

――SAPPHIRE NOWではMicrosoftとの提携を発表し、直前にはAppleとも提携しています。

馬場氏:SAPでは今年のテーマとして“共感”を掲げていますが、こうした提携も、顧客の現実を見つめたうえでのものです。顧客のリアルなビジネス環境では、Microsoft Officeが動いており、Appleデバイスが使われている。そうすると、地味かもしれないけど、Outlookの時代からのMicrosoftとの協業をConcurでも実現しようとなり、Office 365でも協業しようとなる。

 Appleについては、PCではWindowsでやったことをモバイルではiOSとやるということです。地味ですが、自然なことです。

――”共感”というメッセージを、日本でどのように伝えていくのでしょうか。

馬場氏:行動していきます。共感という言葉を伝えるよりも、寄り添って理解をして、SAPになにができるのかを考え、サービス、ロードマップなどを揃えて見せていきます。SAPPHIRE NOWではCEOのBill(McDermott氏)が各事業のトップをステージに上げ、「彼らに言ってもらえれば、ちゃんと対応する」と顧客に約束しました。当たり前のことですが、“顧客ドリブン”で、きちんとやっていきますと改めて示した。次は行動に移します。

ビジネスのクラウド転換の先に、まったく新しいビジネスモデルを見ている

――SAPが言う“デジタルトランスフォーメーション”はあらゆる業界で破壊的な変化が起こるというものですが、それはエンタープライズでも例外ではない。SAP自身のトランスフォーメーションはどうなっていますか。

馬場氏:SAPはオンプレミスのソフトウェアからクラウド型に拡大しています。気がつくのが遅かったかもしれないが、遅すぎて死を迎えようとするベンダーがある中で、きちんと変革ができたとみています。2017年~2018年には、新規のライセンス売り上げと、クラウドのサブスクリプションの比率が逆転すると予想しています。オンプレミスからクラウドのトランジションは、予定を前倒し気味で進んでいます。

 ですが、われわれが見ているのはその次です。オンプレからクラウド、ソフトウェアライセンスビジネスからサブスクリプションビジネスへのトランジションは確かに大きいですが、たかが知れている――もっと破壊的な競争が起きている。

 Bill(CEO)が、SAPの事業で最も過小評価されているのは「ビジネスネットワーク」だと言っていますが、実際、このビジネスモデルはまったく違う。SaaSはサブスクリプションモデルですが、ビジネスネットワークのモデルは調達額に応じて数%もらうとか、クレジットカード会社と連携して会社のクレジットカードで旅費決済したらそのうちの%がキックバックで入るとか、まったく違うものです。とてつもない巨大ビジネスになります。AribaやConcurがここに該当しますが、ホテル側からConcurのカタログに載っていないと使ってくれない、と営業をかけてくることもあります。

 クラウドへのトランジションは完了しつつあり、次はビジネスネットワークです。ここはまだあまり認知されていないビジネスモデルで、ここにどうトランジションできるかをわれわれは見ています。

 現在、ConcurのSaaS、AribaのSaaSが売れると、そのビジネスネットワークも普及するという構図で進んでいます。つまり、SaaSのサブスクリプションが増えると、ビジネスネットワークが広がるというもので、SaaSの売り上げが増えると、自動的にビジネスネットワークの売り上げも増えます。まずは徹底的にSaaSを広めていきます。Aribaのビジネスネットワークの取引高は現在、買収時の2.5倍、3倍に拡大しており、参加するサプライヤーも2倍以上に増えました。Concurも増えており、Starbucks、クレジットカード会社などはSAPの傘下に入ったために実現できた提携といえます。

 2016年の第1四半期では、初めてビジネスネットワークの売り上げを公開しています。(※この1年の業績として、Aribaは参加企業210万社、取引高は8000億ドル、Concurの旅費経費を利用するエンドユーザーは4000万人、Fieldglassでは130カ国で230万人の一時雇用スタッフが管理されたと報告している)

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