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SAPモバイル担当が明かす、企業のモバイル化成功のポイント

AppleとSAPの提携から2年半、企業のモバイル活用はどう進んだか

2018年03月26日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 羽野/TECH.ASCII.jp

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 スマートフォンやタブレットを使った業務効率化を進めるためには、使い勝手とバックエンドとの連携が不可欠――。AppleとSAPが手を組んでから2年半、企業のモバイル活用は少しずつ進んでいるようだ。2018年3月1日までスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2018」で、SAPのバイスプレジデント兼モバイルアプリ&プラットフォーム担当ソリューションマネジメントトップのHolger Fritzinger氏に話を聞いた(聞き手は、末岡洋子)

SAP バイスプレジデント兼モバイルアプリ&プラットフォーム担当ソリューションマネジメントトップのHolger Fritzinger氏

-- Appleとの提携から3年を迎えようとしています。これまでの進捗は?

 2年前の夏に提携し、2017年のMWCでは、提携の中核と言える「SAP Cloud Platform SDK for iOS」SDKを発表した。

 提携の背景にあるのは、企業におけるモバイルを見たときにセキュリティ、実際に利用するソリューションかどうかなどの課題があり、AppleとSAPが共同でできることがたくさんあると思ったからだ。

 まずは、モバイルを活用するために企業のプロセスをどう変えるかを再考する必要があり、Apple、顧客とともに考えている。具体的には、モバイル導入の前と後のプロセスを考え、モバイルを使って何をどう変えるかをみる。これは、システムやソリューションというより、ハウツー(how to)の部分だ。

 SDKは技術レベルの取り組みとなり、iOS向けのエンタープライズアプリを高速に構築できる。見栄えがよく、きちんと機能し、モバイルの機能を活用してビジネスプロセスで使うことができる必要がある。例として、カメラで製品や部品情報を映すと、重ねて情報が表示される。利用者は入力しなくてもよくなり、そこからすぐにアクションを取ることができる。

シンプルなアプリからスタートすることが成功のポイントだった

-- 2年半で学んだことは?

 技術とビジネスの両方である。技術側では、顧客の要求リストに基づき改善してきた。中心はUIとインテグレーションだ。例えば、天気データやその業界に特化したデータなど、外部システムとアプリを連携させるためにAPIを利用するが、このようなコネクタは今後も増やしていく。

 また、ビルディングブロックの種類を増やして欲しいというニーズも多い。サマリ情報、自分のステータスなど、再利用できるコンポーネントで、これを組み合わせて簡単にアプリを構築できる。AppleのSDKには、企業が使うようなビルディングブロックはない。我々はSDKを数カ月おきにリリースしているが、毎回新しいビルディングブロックを加えている。アナリティクス、ダッシュボード、チャートなどが加わった。

 ビジネス側でわかったことは、顧客は様々なフェーズでパッケージされたものを欲しいと思っていること。最初のステップは、顧客のベストユースケースは何か。SAPはパッケージサービスを提供しているが、パートナーにも提供を呼びかけている。モバイルに取り組みたいがどこからスタートすれば良いのかわからないという顧客に、導入のための知識や準備を進める。

 次にデザインシンキングに移り、ビジネス上の課題をどうやって解決するかを考える。幹部ではなく、ビジネスユーザーとやることで、しっかりした展開につながる。

 IBM、アクセンチュアなどと既存の提携協業に加え、モバイルに強い企業やAppleに強い企業など新しい企業とも協業を進めている。一連の流れを「顧客イノベーションジャーニー」と呼んでおり、何をしたいのか、どうやってデザインするか、構築するか、どうやって展開するか、と進めていく。

 成功のポイントは、シンプルなアプリケーションでスタートし、その後機械学習、画像認識など複雑なことを取り込んでいく。最初から完璧なものを作るのではなく、シンプルに初めて機能を高度に、複雑にするというパターンが受け入れられているようだ。

 このイベントでユースケースを展示しているが、全て3ステップ、4ステップで進化させてきたものだ。最初から構築するのは難しい。特にIoTなど様々なものを接続するシステムは、最初に良いスコープを持ってスタートし、成果を感じられたら少しずつ機能を加えていく。最初は端末の調達やポリシーの設定など面倒な作業が多く難しいが、結果が出てくると次々とアイディアが出てくるというパターンが多い。最初のフェーズを終えた顧客は、ユーザーから次々と出てくるリクエストに対応し、これによりユーザーの数と利用が増える・・・と、このような良いサイクルに入る。

-- アプリ構築の時間はどのぐらいかかっている?

 4~6カ月ぐらいで、コアプロセスが完了する。ベアリングなど精密部品のメーカーSKFは、生産スタッフ向けのアプリを構築した。ベアリングの生産は複雑で、デザイン、検証などの作業があるが、これをアプリで支援することにした。6カ月ぐらいで最初のアプリができた。

 社内のワークフローの例では、承認プロセスのアプリを構築した例があるが、事前設定されているのでプロセスを再設計する必要はない。この場合4カ月もあればできることが多い。

-- 企業のモバイル対応にあたって阻害要因はあるか?

 セキュリティの懸念は今でも高い。モバイルで企業のシステムにアクセスしたり、機密情報をやり取りしたりすることが安全なのか、まだ不明確なところがあるようだ。

 次に多いのが、モバイルに取り組みたいがどこから始めたら良いのかわからないという声だ。先ほど説明したパッケージはこれに答えるものだ。どうやるのかの課題に対し、デザインシンキングは重要なステップになっている。顧客同士が情報をやり取りしていることが多く、事例を見せることは重要だ。

現場とバックオフィスの連携にモバイル活用が進んでいる

-- モバイルの受け入れが早い業界は?

 業界では小売、製造などで進んでいる。小売では、接客するセールス、バックオフィスの両方でモバイルの利用が進んでいる。顧客とやり取りするスタッフ向けのアプリを使って、営業担当が製品の在庫がないことがわかると、その情報をバックオフィスに送る。在庫担当が調べて製品があれば持っていくなどのことが進んでいる。

 石油のCEPSAはスペインなどでガソリンスタンドを展開するが、スタンド内にあるストアのショッピングができるアプリを構築した。ガソリンスタンドに行くと、購入したアイテムを準備して持ってきてくれる。車から降りる必要はない。CEPSAはガソリンスタンドだが、このアプリは小売の事例になる。顧客がモバイルを使って、様々なシステムを結びつけてクリエイティブなソリューションを開発している例といえる。

 風力発電機のVestasはタービンを設置するサイトマネージャー、建設スタッフ、バックオフィスが連携してプロジェクトマネジメントを効率化した。電波がないところでも使えるようにしたり、タブレットを使って建設の状態を共有したりして、計画と現状を比較できるようにした。

-- 利便性、効率化以外にモバイルを取り入れるメリットは?

 SKFは、最初のステップで2つのメリットがあったと述べている。1つ目はデータの品質。在庫の情報が正しくないことがあったが、アプリで自動的にスキャンするので正確な数が得られる。アプリそのものはシンプルだが、複雑なチェック作業が動いている。

 2つ目はトレーニング。それまでは生産ラインの社員をトレーニングに送っていたが、アプリを利用することでそれが不要になったと報告している。コストと時間の両方にメリットがあったといえる。スタッフはスマートフォンに慣れ親しんでおり、直感的に使うことができる。

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