このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第119回

ユーザー紹介で自社株プレゼント―― T-Mobileのアンキャリア戦略

2016年06月08日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Sprintを抜いて、米国でのシェアで3位に躍進したT-mobile US。Un-carrierと題して、さまざまな施策をこの3年ほどの間に展開し続けてきました

 バークレーの月曜日、なかなか寒い朝です。

 最高気温23度程度、最低気温は10度まで下がり、そんな朝は決まって、霧が降ります。これが冬になる前まで続きます。ということで、ぜひお盆休みが明けて、飛行機代が安くなり始める、日本の残暑厳しい季節にサンフランシスコにお出でください。日本より涼しくて体が楽ですし、8時を過ぎても明るい時間をたっぷりと過ごせます。

 ここ毎週末、果樹園の街ブレントウッドに出かけて、新鮮なフルーツを自分でつかみどりしています。実は固くなってきてしまいましたが、まだまだイチゴはシーズンですし、5月に始まったチェリーがそろそろシーズン終わり、代わって、アプリコット、桃、プラムなどのつかみ取りが始まりました。

 ナパもブレントウッドも、夏場はバークレーと違って、昼間の気温は35度以上になります。そんなところに出かけていくので、若干バテ気味で夜を迎え、気だるく目覚める、そんな週末でした。

再び、電気がらみのトラブルが

 そんなひんやりする朝に、再び電気関係の事件がおきました。外で「パン!」と乾いた破裂音がして、ついに近所でも発砲事件がおきたか、と心配になりましたが、直後に電気が落ちました。また停電です。

 こちらでは本当に停電が多いのです。しかし今回の停電は不思議で、しばらくすると電気が復旧したかに見えました。しかし、すべてのコンセントで電気が通じているわけではなく、ものによってはついたり消えたりしています。

 なんだか、電圧が落ちて、建物中の電力を満足に賄えない状況になっているかのようでした。先週も風力発電の話を書きましたし、割と基本的な生活インフラに不安がある、そんな米国生活を送っております。

T-Mobile USのアンキャリア戦略の系譜

 たびたびご紹介しているように、筆者は2014年12月に当時米国で第4位のキャリアだったT-Mobileに乗り換えました。

 自宅で契約しているComcastのケーブルTVのネット回線よりも下りは2倍の50Mbps、上りは5倍の25Mbpsをたたき出し、夫婦2人で月額100ドル、データ通信料無制限というキャンペーンに任せて乗り換えました。テザリングも5GBまで使える便利なプランです。

 もともとプリペイド契約が中心だったT-Mobileは、スマホ時代に合わせて、日本のキャリアと同じような契約形態であるポストペイのユーザーを増やそうと躍起になっているところです。そこで、よく設計された高速なネットワークと、Un-carrier戦略によって、ソフトバンク傘下のSprintを追い落として、業界第3位の座を固めようとしています。

 そんなT-MobileのUn-carrier戦略は、数ヵ月ごとに、新しい魅力的なキャンペーンや料金の仕組みを披露してきました。ポストペイ契約で当たり前だった仕組みを壊し、米国の他のキャリアも渋々追随し始めています。

 以下に、T-MobileのUn-carrier戦略をまとめました。これがバージョンアップしていくのです。

Un-carrier 1.0(2013年3月)
 Simple Choice:スマホ向けの新たな月額プラン新設。通話・SMS無制限で、データパックを選択する料金システムを提供。500MBのデータ付きで月50ドル。現在では同じ料金でデータ量は2GBに増加。2回線目は30ドル、3回線目以降は10ドル。

Un-carrier 2.0(2013年7月)
 Jump:月額プラン契約者に対して、年に2回まで、同じ価格の最新端末に乗り換えることができる。同年2月14日の時点でユーザーである場合は、最初のアップグレードまで6ヵ月待たなくて良いことになっており、9月のiPhone発売を意識した設定だった。
 Un-carrier Amped 2.0:2015年6月に、Jumpの年間端末を更新数を2回から3回に引き上げ、Jump自体の月額料金を10ドル引き下げた。

Un-carrier 3.0(2013年10月)
 月額プラン契約者は100ヵ国以上で、1分20セントと国際通話料金なしに電話をかけられるようになる。また日本を含む70ヵ国以上で、低速でのインターネット接続無制限プランを導入。

Un-carrier 3.5(2013年10月)
 Tablet Unleashed:セルラーモデルのタブレット向けに、200MBのLTEデータ通信量を、永年無料で提供するサービス。
 月額プランユーザーは、2GB月額10ドルで、タブレット向けのLTEデータプランを追加できる。その際、タブレットのデータローミングについても無料。

Un-carrier 4.0(2014年1月)
 Get Out of Jail Free Card:T-Mobileへ乗り換える際、これまで他社を解約する際にかかっていた(Early Termination Fees、ETF、平均的には350ドル)と、他社のスマートフォンの下取り金額の合計650ドル分を上限に、T-Mobileが負担する。

Un-carrier 5.0(2014年6月)
 Test Drive:iPhone 5sを7日間貸し出し、無制限にT-Mobileの高速ネットワークを体験できるキャンペーン。もしも返却しないで使い続けたいと思った場合は、その端末を購入して使い続けることもできる。
 最大150Mbpsの高速LTEネットワークとVoLTEに対応。

Un-carrier 6.0(2014年6月)
 Music Freedom:月額プランのユーザーに対して、音楽ストリーミングサービスのデータ量をカウントしない仕組み。Pandora、Spotify、Google Play Musicなどのモバイルで音楽を楽しみたいユーザーのニーズに応えた。後に、Apple Musicもこのデータ無料サービスのリストに追加された。

Un-carrier 7.0(2014年9月)
 Wi-Fi Unleashed:航空機内でインターネット接続を提供するGogoと組んで、GogoのWi-Fi経由でのSMSやビジュアルボイスメールを無償化。また、Wi-Fiを介して音声通話が可能なWi-Fi Callingに対応。加えて、T-Mobile Mobile Personal CellSpotと呼ばれるWi-Fiルーターを無料で配布して、家庭内でWi-Fi Callingなどの機能を使いやすくした。

Un-carrier 8.0(2014年12月)
 Data Stash:月額プラン利用者は、その月に使わなかったデータ通信分を翌月に繰り越すことができる。繰越の上限は1年間。後に、プリペイドのユーザーにも適用されるようになった。

Un-carrier 9.0(2015年3月)
 Un-carrier for Business:ビジネス向けの契約形態を提供。10回線160ドルで、音声通話・SMS無制限、各回線につき高速データ通信1GBを基本に、20回線までは1回線16ドル、1000回線までは1回線あたり15ドル、1001回線からは1回線あたり10ドル。データ通信は1回線ごとだけでなく、企業ごとの追加も可能。また従業員が家族向けにT-Mobile回線を選ぶ際には50%の割引を提供。

Un-carrier X(2015年11月)
 Bringe On:すべての月額プランのユーザーは、この機能をONにすると、自動的にDVD品質の480pビデオで再生する仕組みを提供。その上で、3GB以上のデータパックをつけている月額プランのユーザーに対して、ビデオストリーミングをデータ通信量にカウントせず、より自由にビデオ視聴が可能になる。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン