本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
iTunesが登場した当初は、「リッピングを前提とした再生システム」に斬新さを感じたし、その後開始されたダウンロード型の音楽サービス「iTunes Store」との統合も時代の先端を行くものだったが、いつの間にかiTunesを利用する機会は減った。もはやCDのリッピングにすら利用していないため、せいぜい月に1度起動する程度。もちろん、Macの利用時間に大きな変化はない。これは私の正直レベル100%だ(映画「インターステラー」より)。
筆者はそこそこのオーディオファンでもあるため、音質やハイレゾ対応云々という話はもちろんあるのだが、それを言い出すと「なぜiTunesを使わなくなったか」という事の本質に迫れない。もっとカジュアルな、ときどき音楽を聴く程度のユーザーにも通じる理由でなくてはならないはずだからだ。操作性やら優美なUIやらの話は、そもそも自分の守備範囲では順位が劣後するためバッサリ割愛するが。
というわけで、私がiTunesを使わなくなった5つの理由を紹介したい。iTunesが"事象の地平線"の内側へ入り込んでしまう前に、いちユーザーとして軌道修正を願うばかりだ。
1. 同期・転送に手間がかかるから
iTunesの利用回数が減り始めたのは、iPhoneを利用するようになってからのこと。それ以前に利用していたiPodは、付随機能はさておきミュージックプレイヤーとしての機能が主であり、時間はかかるが時折の転送作業はやむなしという認識だった。
これがiPhoneに移行すると、そうはいかない。アプリや写真など他のデータが幅を利かせるようになり、OSアップデートの際には空き容量確保のために楽曲を削除しなければならないことも。いきおい、手間と時間がかかる転送作業を回避すべく、ミュージックプレイヤー専用機、すなわちDAPに移行するのは自然な成り行きだった。転送にiTunesは不要、microSDカード対応機を導入してからはいよいよ縁がなくなった。
2. 融通が効かないiTunesライブラリに疲れたから
以前のiTunesは、楽曲をXMLファイル(iTunes Library.xml)で管理していた。Macを買い換えたときなど、ただ単純に楽曲ファイルをコピーしても再生できなかったのはこのためで、XMLファイルに記録されているファイルパスを“書き換える”か“作成し直す”かの選択を迫られたものだ。
新形式の管理ファイル(iTunes Library.itl)が採用されてからは、楽曲ファイルの扱いはだいぶラクになったようだが、イマドキのDAPは内蔵ストレージかmicroSDに書き込むだけでOK、あとは自動的に楽曲DBの更新やメタ情報の収集を実行してくれる。特定のアプリケーションに依存せず、Terminalからcpコマンドで楽曲を一括コピーできるDAPのほうが、柔軟性という点では1枚上だろう。
3. AirPlayが進化しないから
iTunesがサポートする「AirPlay」は、RTSPプロトコルをベースとしたApple独自の映像・音声ストリーミング機能。AirMac Expressで登場した「AirTunes」を映像に対応させたもので、音声部分は互換性がある。
その後AirPlayはミラーリング機能を実装するなど映像方面では進化したが、音声部分の仕様は2004年以来基本的に変化がない。たとえば、扱えるサンプリング周波数/量子化ビット数は48kHz/16bitで、いわゆるハイレゾ品質には達しない。iPhoneから送り出すときはこの品質で納得するにしても、ストレージに余裕があるMacの場合は、もっと情報量の多い音源(いわゆるハイレゾ)を扱いたくなるというものだ。
一時期はAirPlay対応のオーディオ機器が続々発売されたが、最近ではBluetoothに押されてしまい、ワイヤレススピーカーなど普及価格帯の製品では対応しないものも多い。LDACのようなBluetooth/A2DPで扱える高音質コーデック — ロッシーだが最大96kHz/24bitという情報量の音声データを扱える — が存在する今、10年以上音声部分の基本仕様が変わらないAirPlayを積極的に使う理由はない。AirPlayが必要ないのであれば、iTunesに踏み止まる理由もまた然りだ。
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