裸眼立体表示の3Dテレビの研究も継続中
NHKが「技研公開」のたびに発表している研究成果で、今年かなり力が入っていたのが「立体テレビ」こと3D関連です。
3Dブームはひと昔前……と思われがちですが、NHKはレンズアレイを用いた裸眼の「インテグラル立体システム」に注力しています。小型の8Kディスプレーを用いることで、SD程度の解像度ですが自然な見え方を確保できます。さらに、複数のプロジェクターによる裸眼3Dの立体表示も検証しています。裸眼3Dは表示解像度の確保と、レンズアレイの小型化がキモですね。
もうひとつの方式が「ホログラフィー」で、専用の参照光を当てることで角度ごとに異なる立体映像を見せることができます。静止したホログラフィーは十分実用化されているのですが、映像で実現するには1㎜以下の超高密度デバイスが必要と。まさに研究途上です。ブームが去っても研究を続けるNHKによる研究の懐の深さには恐れ入ります。
ネット連携、スポーツ中継で用いられる番組制作技術も
「技研公開2016」では番組制作の裏方になる技術多数も公開されています。大きく扱われていたのが「スマートプロダクション」という展示。これはビッグデータ、もっとわかりやすく言うとTwitterなどのSNSなども含めた情報、さらには公共の災害情報などを広く収集するものです。
例えば、災害などの口コミ投稿は写真などの写真の交通標識などを自動で認識して場所を特定、また災害放送などの情報も自動で音声認識し、出来事を特定して迅速な番組制作の手助けをするものです。
続いて「スポーツグラフィックスのための空間情報取得技術」。これはNHKによるバレーボール中継などで用いられます。ボールの軌跡をCGで合成し、3Dでぐるりとカメラを回転しながらリピートして表示するためのものです。
仕組みは、多視点カメラの被写体を追跡してから自動でカメラ校正をし、3次元CGに合成して多視点映像として出力します。これらの中継技術のターゲットは、やはり東京五輪・テレビ画面で観戦するスポーツ中継もより正確・分析的に観られるのです。
以上、特に目立ったものをご紹介したNHKの「技研公開2016」。披露される研究成果は全27項目にも及びます。「技研公開2016」は5月26日(木)から29日(日)まで開催中なので、今週末は最先端の映像技術を体験してみてはいかがでしょうか。