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コラボレーション&IoT事業担当役員が語る、ビジネスコミュニケーションの将来像

「人工知能アシスタントが会議に同席する未来を作る」シスコ

2016年05月25日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 シスコシステムズのローワン・トロロープ氏は、2012年のシスコ入社後、同社のコラボレーション事業を劇的に変革してきた人物だ。それまでのシスコにはなかった新たなコンセプトのプロダクト、たとえば、クリーンなデザインの「TelePresence MXシリーズ」や、ビジネス向けコラボレーションアプリの「Spark」などを展開している。

シスコシステムズ SVP IoT兼アプリケーション担当のローワン・トロロープ(Rowan Trollope)氏。シマンテックのSVPを経てシスコに入社

 企業ビジネスの“デジタル化”を推進していくうえでは、社内コラボレーションのあり方、それを支えるコラボレーションツールのあり方にも変革が求められる。新たなテクノロジーによって、これからの企業コラボレーションはどのように変わっていくのか。トロロープ氏のインタビューは“人工知能とのコラボレーション”という話題にまで及んだ。

「ユーザーファースト」の思考で、これまでの価値観を逆転させる

――まずは、シスコのコラボレーション事業をこれまでどのように変革してきたのか、どのようなコンセプトを打ち立てたのか、についておたずねします。

トロロープ氏:ビジネス向け、業務向けのコラボレーションテクノロジーの世界は、これまで「テクノロジーファースト(テクノロジー中心)」な考え方だった。今でも多くのベンダーがそうだ。わたしはそれを、コンシューマーテクノロジーも取り入れて「ユーザーファースト(ユーザー中心)」のマインドセットに改めようと考えた。

 スマートフォンのようなモバイルデバイスが普及したこともあって、テクノロジーに対する人々の期待値は大きく変化している。業務向けテクノロジーも、その期待に応えられるよう変革していかなければならない。

 だが現在のユーザーは「会社で使うコミュニケーションツールよりも、自宅で使っているもののほうが良い」という感覚を持っている。企業のほうが莫大なコストをかけて導入している以上、それはあってはならないことだ。わたしは、こうしたユーザーの見方を逆転させたいと考えている。

 たとえばこの部屋にもあるTelepresence MXシリーズでは、コンシューマー製品のようなクリーンなデザインと、トレーニングなしで誰でも使えるシンプルさを実現した。一方で、当然、音声や動画の品質はコンシューマー製品をはるかにしのぐものだ。加えて、大企業だけでなく幅広い規模の企業が導入できるように、価格帯も劇的に引き下げた。

シスコの一体型ビデオ会議製品「Telepresence MXシリーズ」。従来にないデザインと容易なセットアップ、高いコストパフォーマンスが特徴

――なるほど。ユーザー側の期待が大きく変化しているのに、企業向けのテクノロジーはそれに乗り遅れている(いた)。だから、考え方を大きく変える必要があったと。

トロロープ氏:そうだ。こうした取り組みの成果として、シスコのコラボレーション事業は財務状況が大きく改善した。それまで売上、利益とも下落傾向だったものが2ケタ成長に転換し、最新の四半期業績ではシスコの中で最も成長の早い事業部門になっている。

 シスコでは、ちょうど経営陣も変化するタイミングだった(※注:新CEOのチャック・ロビンス氏が就任し、経営陣の顔ぶれも大きく変わった)。製品で採用するテクノロジーについても、われわれは「クラウドファースト」の新しいアプローチをとることに決めた。

 こうして、現在のシスコのコラボレーション事業は「ユーザーファースト、クラウドファースト、モバイルファースト」の原則に基づいて進めている。ユーザーエクスペリエンスはコンシューマー製品のように、信頼性や安全性(セキュリティ)、管理性はビジネス製品のように、という“マジカルなバランス”の実現を目指している。

 もう1つ、コンシューマー製品の手法を踏襲した例として、Cisco Sparkではアプリを無料提供している。企業で利用する場合でも、基本的な機能は無料で使える。もちろん業務向けアプリであり、セキュリティには注力しているし、シスコの得意分野であるボイスや複数人のカンファレンス(オンライン会議)機能も備えている。こうした面ではコンシューマー製品をしのぐものだ。

 こうした製品は、クラウドやモバイルを使って提供される“次世代の企業向けコミュニケーションテクノロジー”だと言える。

Cisco Sparkはビジネス向けコラボレーションツール。PC/Macからタブレット、スマートフォンまでマルチデバイスで使える

コラボレーションツールの選択によって組織文化が変わる

――最近は企業のデジタル化、ビジネスモデルの変革に大きな注目が集まっています。そうした次世代の企業向けコミュニケーションテクノロジーは、企業の文化や企業のビジネスまで変革するものなのでしょうか。

トロロープ氏:そう思う。企業を取り巻くビジネス環境は大きく変化しており、どんなCEOも変革が必要だと考えている。特にテクノロジー企業ではない企業では、ビジネスの俊敏さをより高めるためにテクノロジーの活用が必須だ。その第一歩として、次世代のコミュニケーションツールの導入がある。

 実際にSparkを導入したある顧客では、従業員の受け取るEメールの数が50%減り、会議の回数も25%減ったそうだ。わたし自身もSparkを使っているが、(iPhoneの画面を見せながら)このとおりiPhoneの使用時間のうち25%がSparkで、メールはたった4%だ。1日のうちSparkを使うのが1時間で、メールは10分といった割合になる。

 若い人を中心に、あまりに使いにくいEメールよりも、自然なコミュニケーションができるチャット型のメッセージングを使いたいというニーズがあるのはご存じのとおりだ。そのような、従業員が自ら使いたいと思うようなツールがSparkで提供できたと考えている。

――社内コミュニケーション、コラボレーションのあり方に問題を感じている企業は日本でも多いと思います。先日はメールや会議が多すぎると感じているという調査結果も出てました。しかし、企業を変革する最初のステップとして、なぜ「コラボレーションツールの変革」なのでしょうか。

トロロープ氏:コラボレーションツールの選択によって、その会社の文化が形成されると考えている。どちらかと言えばEメールは組織階層的(ヒエラルキカル)な文化、メッセージングはそれよりもインフォーマルな(くだけた)、フラットな組織文化に適している。

 したがって、経営陣がどれだけコラボレーションを重視しているか、何に価値を置いているのかは、どんなツールを選ぶかでわかる。Eメールが諸悪の根源だと言うつもりはないが、もしも活発なコラボレーションが起きるフラットな組織にしようと考えるならば、メッセージングのツールも必要だろう。

――なるほど。メッセージングツール以外の製品でも、コラボレーションを促すような設計思想が組み込まれているのでしょうか。

トロロープ氏:もちろんだ。たとえば、過去のオンライン会議システムでは、経営幹部の秘書やアシスタントが事前にミーティングスケジュールを登録していた。エグゼクティブ専用ならばそれでもいいが、従業員が誰でも気軽に使えるような製品ではなかった。

 しかし、わたしはもっと誰もが使えて、気軽にフェイストゥフェイスのコミュニケーションができる製品が必要だと考えた。事前にスケジュールするのではなく、その場でダイナミックにミーティングが始められる、そんなツールだ。それがMXシリーズやSparkにつながっている。

 従業員がどこにいても、どんなときでも業務ができるというテクノロジーは、コンピュート、通信といったリソース、デバイスのコスト下落とともに、いつかは必ず実現されるはずのものだったと思う。シスコの役割は、そうしたテクノロジーをプロダクト化して、いち早く世に出していくことだと考える。

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