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「Cisco AI Network Analytics」などを発表、Cisco Live 2019イベントレポート

Web会議もAIが支援、シスコが機械学習/AIの適用領域を拡大

2019年07月29日 07時00分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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機械学習/AIプラットフォームを独自開発、DNA Centerで採用

 ポリシーベースで自律的に最適なネットワーク環境を構築する「インテントベースネットワーク」。この構想を提唱するシスコシステムズが、AI技術を投入してネットワークのインテリジェント化を図るのは当然の流れだろう。

 6月に開催された年次カンファレンス「Cisco Live! US 2019」において、同社は独自の機械学習(ML)プラットフォーム開発に数年前から取り組んでいることを明かした。ネットワークから吸い上げた膨大かつ多様な稼働状況(テレメトリ)データと、シスコの35年にわたるナレッジを組み合わせて解析し、統合管理ツール「Cisco DNA Center」にフィードすることでよりインテリジェントなネットワークにしていく仕組みだ。

「Cisco Live! US 2019」は2019年6月10~12日、米国サンディエゴで開催された
ネットワーク領域で独自開発されたシスコのAIプラットフォーム概要

 今回はそれを実用化したクラウドサービスであるML/AIソリューション「Cisco AI Network Analytics」が発表された。当初は「Cisco Wireless LAN Controller 3504/5520/8510/8540」および「Cisco Catalyst 9800 Wireless Controller」のみだが、順次対応製品を拡大していく予定だという。

 Cisco AI Network Analyticsは、ルーターやスイッチ、各種サーバーなどから吸い上げたテレメトリデータを解析し、“平常時の姿”を学習することで、異常の予測検知や修復を実行する。Cisco DNAのAdvantageライセンスでサブスクリプション契約することで、Cisco DNA Assuranceのダッシュボードに組み込まれる形で追加される。

 このソリューションで8月に提供予定の機能の1つ「Issues」では、AIが対応の優先順位に応じてアラートを絞り込み、提示する。問題が生じている箇所は、グラフで見やすく図示される。たとえば下記の画面では、緑色に塗られた範囲が平常時に予想されるスループットの基準値、青色の線が同時間帯の実際のスループット値である。実際のスループットが予想基準値からはみ出している問題(Issue)部分が赤く示されている。

Issues画面:アラートを対応優先度に応じて整理、問題の詳細を表示する

 推論モデルによりAIが分析した問題の根本原因は「Root Cause Analysis」で確認できる。何がトラブルの原因であり、どのような対策が必要かを具体的に提示してくれるだけでなく、「Fix It」ボタンをクリックするだけで提示された対策が自動実行される。今後、トラブルシュート手順などはワークフローエディタで編集することも可能になる予定だ。

Root Cause Analysis画面:AIが推論したトラブルの根本原因を具体的に明示してくれる。ボタン1つで自動対応も可能だ

 シスコのエンタープライズネットワーキング事業部門でSVP兼GMを務めるスコット・ハレル(Scott Harrell)氏は、ML/AIをプラットフォームソリューションとして構築したことで、将来的に他製品との連携が実現できると説明。「たとえば、SD-WANのパフォーマンス分析、ヒートマップ分析、ルーティングの効率化など、適用範囲は広い」と述べた。

「AIが会議進行を補助する」コラボレーションの新しい世界

 もう1つ、シスコがML/AIを道具にインテントベースのコンセプトを組み込もうとしている領域がある。それは「コラボレーション」領域だ。

 2019年3月、シスコはコラボレーション製品「Webex Meetings」の新機能「People Insights」を発表した。この機能はカメラで顔認識された会議参加者について、関連する企業やニュース、SNSなどの公開情報を検索し、ほぼリアルタイムに表示する。表示内容については参加者自身が参照、編集することも可能だ。今回のCisco Live 2019では、この機能がコラボレーション製品群全般で利用可能になることが発表されている。

会議に参加する人物の所属会社の情報などが適切なコンテキストで表示される

 この機能は「コグニティブコラボレーション」のコンセプトを形成する重要な要素の1つだという。コグニティブコラボレーションとは「AIが会議の進行を補助する」という考え方で、すでにWebexシリーズでは会議参加者の顔の下に名前や役職を自動表示する機能や、会議室に入室した人物を顔認識して参加会議を検索、特定し自動接続する「Proactive Join」機能(Cisco Intelligent Proximity技術がベース)などを実装している。

 こうしたAIによるWebexの進化を加速させたのは、間違いなく2018年5月に買収完了したAIソリューション企業Accompanyと、2017年5月に買収したAIスタートアップMindMeldの存在が大きい。

 Accompanyの創業者でCEOのエイミー・チャン(Amy Chang)氏は2016年10月からシスコのボードメンバーとして参加しており、シスコの会長兼CEOのチャック・ロビンス氏からも高い評価を受ける人物。現在はシスコのコラボレーションSVPとしてコグニティブコラボレーションを牽引する。

シスコ、コラボレーションSVPのエイミー・チャン(Amy Chang)氏

 MindMeldは、Webex Assistantの「First Match」機能として採用されている。会議したい相手の名前を、たとえば「Susan」とだけ入力したとしても、会社の名簿やWebex Teamsのスペースでつながっている人物などの情報に基づいて検索し、ユーザーが意図している可能性の最も高い“Susan”を提示してくれる。

 なお2019年5月に、シスコはMindMeldのアセットを完全オープンソース化した。ドキュメントなどはGitHubレポジトリに公開。MindMeldを使ったアプリケーション開発のヒントなどを「Conversational AI Playbook」としてまとめ、誰もが閲覧できるようにした。MindMeldは自然言語処理やナレッジベース作成、ダイアログ管理などが得意であることから、より幅広い視点で対話型AIプラットフォームの成長を促すのが目的とみられる。

 過去のAI関連企業の買収と、独自に進めてきたAI/MLプラットフォーム開発がソリューションや機能として形になり始めた2019年。MindMeldのオープンソース化など、まだ進化の余地を残す中で、今後もシスコらしいAI/MLの実装が進むことを期待したい。

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