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ムール貝食べ放題なぜできた?favyが語る飲食業界がそう簡単にデジタル化しない理由

飲食店の利益率を20%まで向上させるビジネスモデル作り

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「飲食店には情報が伝わっていない!」ことへの懸念

C by favyはクラウドファンディングも積極的に活用し話題を集めた

 favyは設立から1年も経っていないが、そもそもこのように店舗を作り、産地、流通をからめたマーケティング実験が行える地盤は、髙梨氏が2001年に設立した株式会社マネタイズまでさかのぼる。マネタイズ社が手がけるのは、デジタルマーケティングの企画、構築、運用といった業務だが、髙梨氏はそこで多くの飲食店や食品メーカーにかかわってきた。

 「そういう意味では、起ち上がったばかりのベンチャー企業というイメージとはちょっと違う会社。おかげさまで、favyは設立以来、単月黒字を続けている」

 マネタイズ社ではデジタルマーケティング全般を手がけてきたが、favyは飲食店にフォーカスしている。これはマネタイズ社時代、髙梨氏が感じた強い懸念が起因している。それは、「飲食店には情報が全く届いていない!」という想いだ。

 当然のことながら、食品メーカーは社内外にコネクションや情報を持っている。それを流通に提供してはいるのだが、「末端の飲食店にはほとんど情報が届いていないというのが実情」(髙梨氏)だった。

 例えば、現在はどの飲食店でも定番として置かれている飲料があるが、かつては特定の飲食店でしか売られていなかった。雑誌やテレビでも話題になり、スーパーにもたくさん陳列されているにも関わらず、飲食店のメニュー表に追加されることはなかった。それは、情報を伝える仕組みが存在していないためだ。

 そのような飲食店への商品サンプルを提供して、マーケティングツールとして魅力を引き出し、飲食店側にとってもメリットが出るように橋渡しをするのがfavyの役目となる。メーカー側としても、飲食店開拓のマッチング機能はもっていないため、飲食店に直接アピールするという仕掛けを行うことはなかなかできなかった。三方よしのビジネス的なメリットがここに生まれている。

 「たとえば外資系マーケティング企業と仕事でつきあう中、データは自社で持っていて当たり前で、そのデータを武器に新しいビジネスを作ることが当たり前だと思っていた。ところが、飲食店業界は明らかに情報が不足していた。次第に、この状況を変えていかないと駄目なのではと思うようになった」

FAXのUI、UXの方がまだまだ使いやすい

 髙梨氏がマネタイズ社時代にまず作り上げたのは、飲食店とFAXでやり取りをしているルートに相乗りして情報を掲載することだった。現在では全国約70万店の飲食店のうち、20数万店舗と連携しているという。

 「なんでFAX? と思われるかもしれない。しかし、いろいろと試した結果、FAXで送る中に情報を入れ込むことが、飲食店にとって最も高いレスポンスが出る方法だとわかった」

 じつは、現在でもFAXで食材を発注する飲食店は数多い。これは、「独自の業界慣習があるため」だと髙梨氏は指摘する。

 例えば飲食店がつきあいの古い酒屋に送る発注FAXには、「ウイスキー2本」とだけ書かれている。銘柄まで指定されていないが、長いつきあいがある同士であれば、銘柄は書かれなくても察しは付く。

 「ある飲食店では、つきあいの長い八百屋さんに、『まかない用』とだけ書くなんてこともあると聞いた。まかないにするために安い野菜をいつもの分量で、ということになが、こういうお互いのことをわかっている同士のやり取りには、FAXが最も向いている。『タブレットやスマホのUIは使いやすい』と言っても、ディープなローカルルールにまで対応するとなると、FAXのUI、UXの方がまだまだ使いやすい」

C by favyの本格的な厨房

 もちろんその一方で、飲食業界は変化していく必要があると髙梨氏は指摘する。

 「そもそも飲食店は、お客様に料理を出すことでしか収益を確保できない。複数の収益源を持っている業種が多い中で、非常に厳しいビジネスモデルといえる」

 メーカーであれば、1つの商品を販売するだけでなく、それをOEM提供し、他社ブランドで販売するビジネスや、生産ラインを使って他社の商品を生産するといったビジネスも成立する。

 「大手飲食チェーン店から当社に転職してきた役員によれば、店舗を閉めるかどうかの基準となる数値が、“利益率が5%を切るかどうか”だと聞いた。5%の利益となると、月商500万円の店舗でも25万円しか利益がないことになる。その倍の利益率で10%だったとしても、50万円にしかならない。月商500万円というのは一つの店舗としてはかなり売り上げが高い部類だが、それでも50万円の利益を確保するのは容易ではない。将来への投資を行うためには、利益率が20%くらいは欲しい。我々は、飲食業界をもっと利益率が高い業界に変えていかないといけない。favyは飲食店における、Googleアドセンスのような役割を担う存在にしていきたいと思っている」

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