【前編】『KING OF PRISM by PrettyRhythm』西浩子プロデューサーインタビュー
社長に「1000人が10回観たくなる作品です」と訴えた――『キンプリ』西Pに訊く
2016年03月21日 15時00分更新
前売券は「わがまま言わせてもらい」裸に
―― 『キンプリ』の制作費はリピーターの方々によってゴーサインが出ました。では、観客動員もその方々に賭けたんですか?
西 プラス、新規を増やさないといけませんでした。
そのための施策として、まず、前売券を裸にしたかったんです。
―― “裸の前売券”。『キンプリ』が最初にネットで話題に上った理由がそれでしたね。なぜ裸にしたんですか?
西 この作品自体、アニメファンに知られていないという大前提があります。すべての施策は“拡散しなきゃいけない”という考えの下に組みました。前売券すらも宣伝媒体として使いたかったんです。
この作品をまったく知らない人に、いかに『これは何だろう!?』と思ってもらえるかを考えると、もう裸だなと(笑)……というのは冗談ですが、プリティーリズムはもともとコーデを楽しむ作品なので、いつもキャラクターに何を着させよう?と考えるのですが、この作品は何の後ろ盾もないイチからのスタートに近い。まさに裸一貫の、初心に帰る意味も込めて、あえて服を着る前の姿にしていただきました。
あまり簡単にキャラクターを脱がせるのはどうなんだろうという話にもなったのですが、もう、ここはわがまま言わせてください、とお願いしたぐらいの全裸です。おかげで、キンプリが盛り上がり始めた頃に『あの全裸前売券のやつ?』と心の隅に引っかかっていた方もいらっしゃって、点と点が繋がったシーンも目の当たりにしました。
もちろん、抵抗があるというファンの方もいらっしゃいました。
―― ファンの方全員が賛成されたわけではなかったのですか。
西 先述の通り、『プリティーリズム』はコーデを楽しむ作品として始まっています。ファンの方からも「『プリティーリズム』は服を着替える女の子のためにアニメなのに、どうして服を脱いでいるんだ」というご意見もかなりいただきました。
けれども、いちプリティーリズムファンとして語弊を恐れずに言うと、『キンプリ』を届けるにあたっては、“女児向けだから”というワクを取り払いたかったんです。
―― “女児向け”というワクは、西さんご自身のなかではどのように捉えていましたか?
西 『プリティーリズム』は、大映ドラマばりに人間関係を掘り下げた、挫折あり、成長ありの物語で大人の方にも見て楽しんでいただける作品です。けれどもアニメファンの方々に『女児向けだから』という理由で観る前に視聴リストから外されてしまう……というケースを残念に思っていたんです。
そこで『キンプリ』は、『プリティーリズム』とは別のスタンスの作品ですという意味も込めて、ファンの皆さんもきっとわかってくださると信じて、前売券を作りました。
すべては“絶対裏切れない1700人”のために
西 前売券を“5枚綴りグループ鑑賞券”として2種類作ったのも、“1000人が10回観る”というロジックを実現させなければならなかったので、“熱心な方が5枚綴りを2枚買ってくれたら10回になる”という単純計算のもとでした。
―― 5枚綴りを2種類出したというのは、何度でも見てくれるリピーターを想定したと。
西 はい。コアなファンの方々は、きっと私のように(笑)、何回も見に来て下さるだろうという。
逆に言うと、『キンプリ』のファンも、それより増えることはないと思っていたんです。1000人というのは、厳密に言うと“1700人”なんですけれども。
―― 1700人という数字はどこから想定されたのでしょうか?
西 2014年に発売したキャラソンCDの予約数です。
出たから買うのではなく、“出るから、好きだから買う”というお客さんが1700人ぐらい。『キンプリ』を制作する段階では、ファンが何万人もいるという見積もりはできませんでした。
ただ、その1700人の方々を、私たちスタッフは仲間だと思っている……というとおこがましいですけれど、その方はきっと何回も観に来てくださるだろう、それは純粋に『プリティーリズム』が面白いから、好きだから観てくれるというところを信じていただけですね。こちらとしても裏切れない1700人なので、裏切らない作品づくりを目指したのみです。
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後編は……「一度観たら、誰かに話したくて仕方ない!」
アトラクション型アニメとして『キンプリ』は作られた
劇場版製作のゴーサインをもぎ取った西プロデューサーだが、完成した『キンプリ』は封切直後から苦戦が続く。
しかし、熱狂的なファン“プリズムエリート”たちの地道な口コミが実り、『キンプリ』のハッシュタグがTwitterのタイムラインを賑わすことに。そのきっかけとなったのは、スタッフたちが重視してきた「応援上映会」だった。
後編では、『キンプリ』をあえてコール&レスポンス前提の作品として仕上げた意図などについて、引き続き西プロデューサーに伺う。
〈後編はこちら〉
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