また、腸内環境を調べることでほかにもいい影響を与えることができます。たとえば自分も出場したアテネ五輪のアジア予選ではUAEラウンドと日本ラウンドがあって、実はUAEラウンドのときにメンバー23人中15、6人が下痢になってしまいました。試合の5分前までトイレにこもっているような状態で……。そんな状態でも選手は試合でパフォーマンスを出さないといけない。大事な場面なだけに、すごく不幸なことです。水、食べ物、ストレスなど環境が変わった中でいいパフォーマンスを出せるようになれば、選手としても安心できます。
特にサッカーはチームでいるため、同じご飯を食べている中でも、消化吸収するのは腸内環境でぜんぜん違います。このような違いがわかるため、研究は重要です。たとえば森田先生は競走馬の腸内環境を研究しており、下痢をしないような良い腸内細菌を培養して、良い菌だけ競走馬に与えたら、下痢がぐっと減ったと聞きました。もしかしたら、応用して下痢をしないサプリメントをつくるようなことまでできるかもしれません。
――事業を起こしたいというのは選手時代から思っていましたか?
きっかけは(浦和レッズ)選手会の副会長をやったときです。それまでは選手一人ひとりがそれぞれで頑張ればいいと思っていました。しかし、ほかのクラブの選手と話すことで、ぜんぜん違うと知りました。自分は浦和レッズというビッグクラブだったため、環境があまりにも恵まれていたんです。
サッカー選手の引退は早い。頑張ったとしても35歳くらいまで、残りの30年間は別の仕事で働かないといけません。現在はJ3までカテゴリーがあり、プロサッカー選手は増え続けています。そんな中、引退後の元サッカー選手の仕事がないという問題が出てくるのではと思いました。全員がサッカー関係の仕事ができるわけではありませんし、選手によってはサッカーひと筋というケースもあります。
サッカー選手になって安泰というのは、一部の選手だけ。大多数の選手は現役を辞めたあとに、サッカーと関係ない仕事をしています。親御さんからすれば、サッカーをやることを本気で応援できるか、将来は不安だと思う状況だと思います。
それではサッカー選手の社会的地位は変わりません。三浦和良さんのように続ける人もいれば、中田英寿さんのように事業を起こしたりする人もいます。そんな中、自分は起業する選択肢を示したいと思います。また企業を大きくすれば、選手のセカンドキャリアの受け皿にもなります。
――ありがとうございました。最後に目標は?
AuBは腸内フローラの研究で社会イノベーションをしていきます。アスリートのパフォーマンスを上げるのはもちろんですが、起業家として直接的にサッカーチームのスポンサードや、サッカーチームの経営までいかないとおもしろくはないですよね。
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