「AWS Lambda」など活用、製造業向けIoTソリューションや業種別ソリューションを展開へ
IoTで「つながる工場」構築支援、B-EN-GがAWSパートナー加入
2016年02月17日 11時00分更新
製造業向けERPを提供する東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は2月17日、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のパートナープログラム「AWS Partner Network(APN)」加入を発表した。今後、「AWS IoT」や「AWS Lambda」などのクラウドサービスを活用した工場管理(生産設備管理)ソリューションなど、製造業向けに幅広いソリューションを展開していく計画だ。
B-EN-Gでは、製造業の顧客に対し、自社開発製品の生産管理パッケージ「MCFrame」や海外拠点向けERP「A.S.I.A.」の提供、またSAP ERPインテグレーションなどを手がけている。今回、APNの「テクノロジーパートナー スタンダード」に加入することで、クラウドソリューションに関する包括的な取り組みを開始すると発表している。
B-EN-G 常務取締役 CMO/CTO 新商品企画本部長の羽田雅一氏は、「B-EN-Gは95%が製造業の顧客」だと説明したうえで、クラウド活用に対する顧客の期待が急速に高まっている現状をこう述べる。
「数年前までは『生産管理とクラウドは一番遠い世界だよね』と言っていた。しかし、この数年で状況は大きく変化した。『クラウドファーストで提案してほしい』という顧客の声が多くなっている」(羽田氏)
今回、AWSをパートナーとした理由については、グローバル市場、製造業領域での豊富な実績を持つことに加えて、とりわけ「IoTの先進的サービスを持っている」ことが決め手になったという。単にMCFrameやA.S.I.A.、SAPのクラウド移行/クラウドインテグレーションだけでなく、製造業向けのグローバルなIoTプラットフォーム構築と、IoTソリューションの展開も視野に入れているためだ。
設備効率向上や生産最適化など「つながる工場」ソリューションを展開へ
同社が「つながる工場」と呼ぶ、製造業向けIoTプラットフォームの具体像については、B-EN-G 新商品企画本部 副本部長の志村健二氏が説明した。まず第1ステップとしては、現状で顧客からの要望が最も高く、導入も比較的容易な「総合設備効率(OEE)向上」のソリューションに取り組む。
「OEEの水準は、日本では大体60~70%。だが〔IoTによる設備監視や生産管理を導入している〕米GEでは80%を達成している」(羽田氏)
志村氏によると、製造業顧客の多くは、設備稼働状態の監視やデータ分析を通じて、“チョコ停/ドカ停(短時間/長時間の機械停止)”発生の可視化や原因分析、障害の予兆検知などを実現したいと考えている。しかし、現実には「顧客設備の8割は古い設備」(志村氏)であり、それを可能にする機能を備えていないものが多い。
B-EN-Gでは、国産各社のPLC(制御装置)やパトライトの「AirGRID」などと連携する「仮想デバイス」をAWS上で開発、提供することで、まずは顧客設備の稼働状態監視やデータ蓄積を可能にしていく。
これに続く第2ステップでは、顧客に納入した部品などのモノを可視化し、「消費量のリアルタイム監視」と「高精度な需要予測」を可能にすることで、安定供給と同時に低価格化を実現するソリューションを検討している。さらに第3ステップでは、納品ではなくVMI(預け在庫)化し、消費量に応じて顧客に請求するというビジネスモデルの転換ソリューションも視野に入れているという。
「将来段階ではデータ分析、機械学習などの技術も必要となってくる。APNのコミュニティを通じて、そうした技術を持つ他のベンダーと出会い、連携できる点がAPNのメリットだ。顧客ニーズに合わせて技術を組み合わせ、ソリューションを提供できる」(志村氏)
クラウドソリューションへの包括的な取り組みとしてもう1つ紹介されたのが、製薬/医療機器業界向けのCSV(コンピュータ化システムバリデーション)リファレンスドキュメントだ。B-EN-GをはじめとするAPN加盟企業5社で共同策定した同ドキュメントを、2月下旬より無償提供する。
B-EN-G プロダクト事業本部 マーケティング本部 マーケティング部 部長の山下武志氏は、このドキュメントとAWSクラウド、MCFrameをワンストップで提供する製薬/医療機器業界向けの新たなソリューションを紹介した。さらに今後、食品業界向けのMES連携ソリューション、飲食/小売店舗の海外展開ソリューションなど、AWSクラウドを利用した業種別ソリューションを、APNコミュニティ各社との協業も含め開発し、展開していく方針を説明した。
なお、説明会にはAWSジャパン パートナーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏も出席し、現在AWSが注力するパートナー施策を紹介するとともに、B-EN-GのAPN加入を歓迎するコメントを寄せた。
「日本でも、特に製造業の顧客はややコンサバティブ(保守的)な印象がある。そこに、B-EN-Gが持つすばらしいソリューションが投入されていくことで、製造業〔での利用〕もかなり進むのではないか。大変喜んでいる」(今野氏)