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AWS re:Invent 2015で見た破壊的創造 第4回

re:Invent 2015基調講演で披露された包括的なIoTサービス

デバイスからクラウドまでを担う「AWS IoT」の役割とは?

2015年10月09日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月8日、米国ラスベガスで開催中のAWS re:Invent 2015、2日目の基調講演にはAmazon.com CTOのワーナー・ボーガス氏が登壇。IoTデバイスの通信やセキュリティ、データのルーティング・フィルタリングなどを手がける統合IoTサービス「AWS IoT」が発表された。

勃興するIoT産業をアピールするボーガス氏

 7日に行なわれたアンディ・ジェシー氏の講演が「7つの自由」というテーマだったのに対し、8日のワーナー・ボーガス氏の基調講演は「6つの法則」というテーマで、最新サービスやユーザー事例を披露。後半30分がIoT分野の取り組みの説明に費やされ、IoT向けのプラットフォームサービス「AWS IoT」が発表された。

基調講演に登壇したAmazon.com CTOのワーナー・ボーガス氏

 講演内、ボーガス氏はAWS IoTの発表に至るまで、コンシューマー、公共、産業分野でのIoTのAWS事例を紹介し続けた。センサーを取り付けた冷蔵庫やゴミ箱をはじめ、画像解析するカメラ、体重管理できるベルト、利用状況を調べる電動歯ブラシ、友人が来ないと開かない冷蔵庫などのコンシューマデバイスのほか、海洋データの収集やバスの運行状況を表示する停留所のポール、遺伝子解析を安価に行なえるIlluminaなどを次々と紹介。ニュージーランドのスタートアップはプリペイド電気料金の支払いにあわせて、家庭内の電球の色を変えるというチャレンジまでやっているという。

お腹周りを計測するIoTベルト

運行状況を表示するバスポール

 産業分野でもIoTの活用は進む。ボーガス氏はIoTのリーディング企業であるGEのガスタービンのほか、原油掘削などでデータ分析を導入しているエネルギー会社のシェル、街灯にGPSを組み込んだフィリップスなどの自動車での取り組みを紹介。ソフトウェア化著しい自動車業界のユーザーとしてBMWのビジネスモデル担当者が登壇し、自動運転や経路検索などクラウドとIoTを連携させる取り組みを披露した。

ガスタービンの効率化を進めるGE

GPS搭載の街灯を制御するフィリップス

 まさに「IoTコレクション」とも呼べる事例を紹介し続けるボーガス氏の意図は、やはりIoTという新しいIT産業の勃興を強くアピールする意図があったようだ。その一方で、総合格闘技的なIoTの場合、デバイス、ネットワーク、セキュリティ、データ収集、スマート化などに“ヘビーリフティング”の障壁があり、こうした課題を解決するソリューションが必要になると訴える。

IoTを実現するためのヘビーリフティング

IoT開発の敷居を下げるAWS IoTの役割

 これに対して今回発表されたのがさまざまなデバイスをAWSに容易に接続し、大量のデータを処理できる「AWS IoT」になる。IoT向けのマネージドサービスと言えるAWS IoTではデバイスのセキュリティを確保しつつ、出力されたデータに基づいた処理をルールエンジンで設定し、クラウド側に出力するまでの処理を担う。「IoTアプリケーションを格段に簡単に作りやすくする」とボーガス氏は語る。

AWS プロダクトストラテジー GMのマット・ウッド氏

 AWS プロダクトストラテジー GMのマット・ウッド氏はAWS IoTの詳細について説明する。AWS IoTのアーキテクチャでは、「Device Gateway」がIoTデバイスとクラウドの通信を仲立ちする。Device Gatewayはデバイスの登録(Subscription)とデータ配信(Publish)を受け持ち、HTTPとMQTTを用いて通信を行なう。デバイスの登録の際には、X.509の証明書を用いた相互認証が行なわれ、データも暗号化される。AWS認証基盤であるIAM(Identity and Access Management)と統合されているため、他のAWSのサービスとも容易に連携できるという。

AWS IoTでの各コンポーネントの役割

 また、AWS IoTではルールエンジンが用意されており、アプリケーションで用いられるデータのフィルタリングや処理、ルーティング等のルールをCLI/API経由で設定できる。50℃以上のセンサーを抽出したり、複数条件を組み合わせた文脈のルール設定が可能。さらにデバイスがオフラインでも持続的な仮想バージョンとして登録しておける「デバイスシャドーズ」という機能も用意され、再接続した際に継続してデータを送受信できるという。

AWS IoTのアーキテクチャ

 ルールエンジンでルーティングされたデータはAWSのさまざまなデータストアや機能で処理を行なえる。単純な保存であればAmazon S3、リアルタイムな処理であれば、イベントドリブンなLambdaを呼び出してKinesis Stream/Firehoseに送信。あるいはSNSでプッシュ通知したり、Amazon Machine Learningで予測することも可能。

 さらにIoTスターターキットも提供される。アロー、ブロードコム、インテル、マーベル、メヂアテック、マイクロチップ、クアルコム、ルネサステクノロジー、シードスタジオなどのハードウェアベンダーと提携し、プロトタイプ開発を迅速に行なえる「AWS IoTスタートキット by AWS」も発表された。また、組み込み向けのCやJavaScript、あるいはArduino向けのSDKも用意され、開発者の敷居を大幅に下げるという。

 包括的なIoTでプラットフォームで、IoTへの取り組みを支援するAWS。AWS IoTは北米やヨーロッパの一部のほか、東京リージョンでもβ版が利用可能になっている。

AWS IoTを用いたデモケースも展示で披露

 re:Invent 2015ではAWS IoTを用いたデモも用意。ウッド氏が基調講演で披露したロボットアームのデモのほか、インテル、アクセンチュアと共同構築されたIoT Greenhouse、消毒液が切れると通知するサニタイザーなどが披露されていた。

re:Invent 2015の展示会場ではロボットアームのデモが披露。手を動かすと大量のMQTTが飛び、バージニアのAWS IoTを経由し、ロボットアームが動く。かなりリアルタイムだった

センサーや天井が開けるアクチュエターを備えたIoT Greenhouse

消毒剤が切れると通知してくれるサニタイザー。Lambda経由でAmazonに自動注文する機能も

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