サプライヤーとライセンスは共有
たとえば懸念材料のひとつに、ボリュームを背景にした調達メリットが、分社化することによって失われるのではないかという指摘があった。
だが、HP Inc.と、Hewlett Packard Enterpriseは、コンソーシアムを組み、共同調達を行なうことが決定しているという。そのため、いままでと同じ条件、あるいはこれまで以上にいい条件で、サプライヤーと取引が行なえるような関係を保っているという。さらに、主要な特許技術は、すべてクロスライセンスする体制としており、開発したものは共有していくことになっているという。
そして、日本においては、「MADE IN TOKYO」を打ち出している東京・昭島の生産拠点も、これまで同様に、PCとサーバーの生産に対応。分社した2社がそれぞれに運営していくことになり、東京生産を維持することになる。
一方で、変化点をあげるとすれば、それぞれの企業に、より最適化した投資を行えるようになるという点だ。
日本にない製品を持ってこれるのが強み
総合IT企業であったヒューレット・パッカードは、クラウド、ビッグデータ、セキュリティー、モビリティーといった領域への投資を加速することを明言していたが、これはIT業界における最新トレンドをとらえたものであり、総合IT企業であれば当然のことだ。
だが、PCおよびプリンティング事業にフォーカスした場合、これらのすべての領域に投資する必要もない。つまり、分社化したことで、PCおよびプリンティングの専業企業として、必要な領域への投資を優先できるようになるというわけだ。買収戦略についても同様である。
「PCとプリンターは、これまで以上に、ラインアップを広げ、すべてのお客様に対して最適な環境を提供できるメーカーであることを目指す。日本においては、2in1パソコンや、モビリティーデバイスは、日本HPが手付かずともいえる成長分野。さらに、プリンターでは、インクジェットベースのコマーシャルプリント市場の開拓に力を注ぎたい」(日本HP・岡社長)と語る。
そして、分社後の意思決定スピードが、これまで以上に迅速化することは明らかだろう。これも分社後の変化のひとつになる。
「基本的な考え方は、これまでのヒューレット・パッカードが持っていたいいところは、分社したそれぞれの会社にすべて残す。それがなくなったら分社した意味がない。さらに、そこにプラスαの要素を加えていくことになる」と岡社長は語る。
プラスαの成果は、具体的な製品などを通じて、これから表面化されることになるだろう。
日本HPの岡社長は、「HPは、コマーシャルPCでは世界ナンバーワンシェア。これがHPの世界標準としての考え方。日本でもそうならなくてはならない」とし、「まだ日本に持ってきていない製品がたくさんある。それによって、さまざまな戦い方ができるのも日本HPの強み。市場ニーズと投入タイミングを図りながら、日本市場に最適な製品ラインアップを揃え、他社と差別化したい」と語る。そして、「世の中を変えるようなPCを提案し、それによって市場を作っていく。日本HPは、そうしたメーカーであるという印象を作り上げたい」と語る。
日本HPの設立から半年を経過し、新たな取り組みがいよいよ本格化するタイミングに入ってきたといえそうだ。
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