すごいものを作っているんだなと再認識
Nutubeの開発は、蛍光表示管と真空管の構造が似ていることに気づいたコルグの三枝監査役が、三重のノリタケ伊勢電子に出向き、自身のアイデアを説明するところから始まった。もともと蛍光表示管は、真空管の原理を応用して、工学博士の故・中村 正氏が発明したもの。その蛍光表示管の開発と生産のために立ち上げたのが伊勢電子工業、現在のノリタケ伊勢電子だ。
―― まずNutube開発の発端からですが、ノリタケさんに三枝さんが来られたわけですよね。
山下 はい。真空管と同じ構造だから、できるんじゃないかというお話で。正直なところ、最初の頃は「はぁ?」って感じでした。でも、蛍光表示管も真空管の原理を応用しているんだから、逆回しにすればなんとかなるのかな、と。
―― コルグさんが試作品を作って、ミュージシャンを連れてデモに行くまで、半信半疑だったという話も。
山下 と言うと、言い過ぎかもしれませんけど。いま実際に使われているデジタルの音がこれ、それをNutubeでやるとこう。というのをよく聴かせていただいたんです。私は音楽をやっていたわけでもないですし、そんなにオーディオマニアでもないんですけど、音を聴くと「お、違うんだ」と感じられた。それで、これはすごいものを作っているんだなと再認識しました。素子として「使いものになる」という話と「音を聴いて本当に違う」というのでは、話の中身がまったく違いますから。
―― では、今の段階ではもういけると。
山下 はい。すごくいい特性が出ているというお話をいただいて、これは本物だなと。
―― 製造にあたって、難しいことはありましたか。
三枝 原理が同じだ、までは良かったんです。私は、すぐにできると思っていたんですけどね。
(爆笑)
三枝 具体的に進むに従ってね、思ったより難しかった。いろいろ細かい問題が出ましてね。最近はCADとかシミュレーションとか、いろんな開発手段がありますけど、実際にやってみて初めてわかることがたくさんありました。つい数ヵ月前に変更したところもありますしね。
遠山 低い電圧で動かすというところですね。なかなか低いところまで行かなかったり。今は5Vまで来ていますが、最初は10Vくらいからしか動かなかったり。1年前にお見せしたものと、今回のものとでは、細かいところがかなり変わっています。
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