2003年から始まった指定管理者制度。公共施設の民営化。最近ではCCCの「TSUTAYA図書館」が問題提起となり、業界や地域に波紋を広げている。そんな図書館業界で1979年の創業以来、図書館の本のデータベースを作り続けてきたのが図書館流通センター(TRC)だ。「TRC MARC」と呼ぶそのデータベースは、全国の公共図書館のうち84%で利用されている。
指定管理・業務委託で運営する図書館(以下、受託運営館)も442館を数え、課題となったのが各図書館と本社とのコミュニケーション。その解決策として、2009年に「サイボウズ ガルーン」を導入し、今では図書館同士が自発的にコミュニケーションを取る重要なインフラとなっている。
コミュニケーションの秘訣を、TRC 広報部の尾園清香氏と営業部の徳田良治氏に聞く。
図書のDBを作り続けてきたTRC
TRCが創業以来作り続けてきた「TRC MARC(Machine Readable Cataloging)」。本のタイトル・著者・出版者・分類・件名などの基本項目をはじめ、1300項目に及ぶデータベースとして、約100名の専門スタッフが何重にもチェックしながら作成。累積件数は約355万件(2015年12月末現在)におよび、図書管理・検索などに全国の公共図書館のうち84%で利用されている。
選書においては、毎週1300点以上を掲載する「週刊新刊全点案内」、新刊発売から10日程度で納品する「新刊急行ベル」、全集・年鑑・白書・シリーズものを逐次自動で納品する「新継続」など、独自に流通を構築。埼玉にある在庫物流センターから注文毎に本をピッキングして出荷している。
尾園氏によれば「図書館の本は装備が特殊で、自治体によってバーコードの枚数や形、貼る位置などがすべて異なっています。在庫物流センターではそれぞれの注文に応じてどう装備するかがすべてプログラミングされており一部自動化されていますが、本はサイズがまちまちなので、最後の装備は今でも手作業で行っています」という。
装備能力は1日に最大5万7000冊。年間にして最大1425万冊が装備できる。昔は司書が手作業で行っていたが、新刊・入荷点数が爆発的に増えた昨今は、多くの図書館がこうした物流サービスを利用しているそうだ。
そんなTRCに1996年、転機が訪れる。
公共図書館の民営化の波
ある自治体から図書館運営の業務委託を依頼されたのだ。しかし、前例もなく、それまでTRCが行ってきたのもバックヤードの支援のみだったため、最初は断ったそうだが、「どうしてもということで一部業務の代行を始めることにしました。すると年を追うごとに、他自治体からも業務を代行してほしいという声が増えていきました」(尾園氏)
さまざまな公共施設において、運営の負担軽減やサービス向上の必要性が検討されていた時期だった。そして2003年、「指定管理者制度」が始まる。スポーツ施設・公園・医療福祉施設などと共に、図書館でも民営化が進んでいった。
一部の業務を代行する「業務委託」とは違って、「指定管理者」の場合、図書館の運営全てを担うことになる。スタッフも館長も「指定管理者」の社員が担当する。TRCは、2005年に3館の指定管理者となり、本格的に図書館運営に参入。今では合計442の公共図書館を運営(業務委託含む)するまでになった。全国の公共図書館はおおむね3200館と言われているので、実に1割強だ。
そうして受託運営館が増えていくと、課題となったのが、図書館と本社の情報共有。「図書館が全国に散らばっているため、情報の伝達がうまくいかず。その増え方も急だったため、それまでメールでやり取りしていた現場からは『とてもやりきれない』と悲鳴が上がりました。また、本社からは人事・給与情報も送るため、メールでは危ないという懸念もあって……」(尾園氏)
そして、2009年に導入したのが「サイボウズ ガルーン」(オンプレミス版)だった。受託運営館は196館にまで達していた。
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