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所得と収入の違いを即答できる!?

初心者が死なない「確定申告のやり方」

2016年01月15日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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所得と収入というのがわからない

 ここでやる気をくじくのが「収入」と「所得」だ。なぜ別なのか。わからない。死のいや大丈夫だ。収入は「売上」で、所得は「利益」だ。源泉徴収票にのっている支払金額が「収入」(売上)、経費を引いた金額が「所得」(利益)だ。

 収支内訳書では課税対象になる「所得」を計算する。

 ちなみに細かい話でいうと、原稿料などの所得は「雑所得」にあたる。業務委託の編集プロダクションとして編集業務を請け負っていたわたしは所得を「事業(営業等)」としていたが、あれも本当は雑所得なのだろうか?

 株の配当金、土地の売却益など「その他の収入」がなければ、源泉徴収票の「支払金額」が年間収入となる(源泉徴収や社会保険料を引かれる前の金額)。「売上原価」は、在庫金額や年間仕入額などがあれば記入する。

 わたしは空気を売っている虚業をやっているので記入なしだ。もう息があがってきたが、まだ一合目だ。適宜チョコレートなど補給しながら進んでいく。

経費はどうすればいいのかわからない

 つづいて経費。「経費が戻る」という言葉を聞くと胸が躍る。しかし実際に記入欄を見てしまうと、テンションは急落する。

 全部書く必要はなく、焦げついた債権の償却「貸倒金」などは、なさそうなら無視。「給料賃金」(家族以外に払った賃金)「外注工費」(外注した加工費用)「地代家賃」(店舗・事務所の家賃、駐車場代)などが関係ありそうだ。

 家賃について、在宅業務の人は家の中で事務所として使っている割合を家賃から計算する(「按分比率」という)。これを収支内訳書の「地代家賃の内訳」にそれぞれ記入する。ちなみにわたしは払っていた家賃の7割を申告していた。

 あとは「水道光熱費」「旅費交通費」「通信費」「広告宣伝費」「接待費」「消耗品費」など、経費になりそうなもの、領収書があるものを書いていく。どこまで経費になるのかは、ほかの記事を読んでほしい。

 なお収支内訳書には「減価償却」という魔物がすんでいる。たとえばパソコンを「設備」として考え、定額法で25%、定率法で50%だから……と、年あたりの償却額を計算するのだ。しかしわたしが死んでしまうので省略する。

 こうして「経費」と「所得」(利益)がわかった。次は死の頂点である控除だ。

所得控除というのがわからない

 控除、それは引かれる項目。これは所得や税額に入れなくていいですよというお金のことだ。まずは「所得控除」。

 「雑損」(災害・盗難被害に遭ったとき)、「医療費」、「寄付金」(自治体や公共法人に寄付をしたとき)、「社会保険料」(国民健康保険や年金)、「基礎」(誰でも無条件に受けられる)の5項目は、関係する人が多い。

 基礎控除の欄には、とくに何も考えず「38万円」と書くだけでいい。あとは控除額を上から順番に足して、いちばん下に合計値を書けば所得控除は終わりだ。

 所得控除を終えたら「所得」から「所得控除」の合計を引いた金額を出す。それが申告書右上の「課税される所得金額」になる。そこから「確定申告の手引き」に書いてある表を使って、本来支払うべき税金(課税対象の税額)を計算する。

 なぜこんなものを計算しなくてはいけないのか。電卓を片手に放心しているときに見えてくるのは「税額控除」だ。本気で死にたくなってくるが耐えよう。

税額控除というのもわからない

 山場は住宅ローン、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」だが、わたしはローンを組んでいないという理由で逃げる。

 残るは「復興特別所得税額」(いわゆる復興税)そして「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」(復興税をふくむ源泉徴収額)だ。むかしは源泉徴収だけだったのが復興税が入ったことでさらにややこしくなっている。死ねる。

 まず復興税は、苦労して計算した「本来支払うべき税金」に2.1%をかけた金額になる。つづいて復興税をふくむ源泉徴収税額は、源泉徴収票に書いてある「源泉徴収税額」。復興税をふくんだ金額なのでそのままこれを書けばよい。

 そして最後は「本来支払うべき税金」+「復興税」から「源泉徴収税額」を引いた差を求める。「税金を収めすぎている」「収めている金額が足りなかった」いずれかを「還付される税金」または「収める税金」に書いておしまいだ。

初心者が死なない確定申告のやり方=ソフトを使う

 死んだ。まとめる。初心者を殺すポイントは以下のとおりだった。

  1. 書類を選ぶとき
  2. 記入の順番を考えるとき
  3. 収入を計算するとき
  4. 経費を計算するとき(減価償却は地獄)
  5. 所得控除に何を書けるか調べるとき
  6. 税額を計算するとき
  7. 源泉徴収税と復興税の書き方を調べるとき

 以上7点さえやり方がわかれば死なずにすむ。登山とおなじで、難所の攻略法さえわかっていればあとは歩くだけだ。

 だが、あらためて思う。どうしてこんな苦労をしないといけないのか。

 登山なら登頂の快感がある。一方、確定申告は徒労しかない。還付金というボーナスを得るための労働と考えればいいのかもしれないが、逆に税金を追加で収めるときがあったら本当に意味がわからない。傷害事件が起きかねない。

 確定申告は苦しい。「やさしい確定申告」などという文字に踊らされてはいけない。少なくともソフトで自動化すべきだ。手計算なんて正気の沙汰じゃない。そう思っていたら隣の小嶋くんが「ぼく弥生使いましたよ」と言う。えっ。

 「けっこうみんな使ってると思いますよ」とまで言われた。実際、奥さんにも「わたしも弥生だけど」と言われた。この苦労は、いやこの企画はなんだったのか。結局死ぬのはわたしだけだったということか。もうだめだ。死のう。



(参考資料:渡辺義則『自分ですらすらできる 確定申告の書き方 平成27年3月16日締切分』)

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