いざ実食!
専用スモークチップは伊達じゃない
さて、実食。コーヒー豆で燻したベーコンは、ちょっとケムいがおいしい。安紅茶のティーバッグでやるより、はるかにいい。ウインナーは、やっぱりスモークが薄い印象。燻した香りが付きにくいようだ。砂糖も多めにして長時間やるべきだろう。ただ、紅茶でやった時よりはスモーキーで、ウインナーも元から超美味いので、大満足。
サラダチキンは、もろにルージュサハラの香りがする。ミントっぽく、マリアージュ・フレールの雰囲気そのもの。上品過ぎて笑う。味のレベルは高い。しかし、ちょっと薄く感じたので、もうちょっと塩を効かせるべきだった。
ほっけ焼きは美味い。ただし、ちょっと燻製感が弱い。ジャスミンティーのニュアンスはほとんどなかった。時間はきちんと燻したので、ジャスミンティーは燻製材としては弱いのかもしれない。
くんさきはあまり煙のイメージがついていない。インスタントコーヒーが焦げていたので、嫌な予感がしたが、大丈夫だったようだ。味はいい感じで、プラスにはなっている。ジャッキーカルパスも、味がそれほどついていない。微かにスモーキーで、味が上乗せされていることは確かだ。
専用のスモークチップで燻した惣菜系を食べてみる。唐揚げは圧倒的に美味しくなっていた。香りのマリアージュもいい感じ。ビッグアメリカンドッグは香りがいいので美味しく感じるが、中までは燻されていないので、あまり変わらないかも。
おにぎりは表面が乾いてしまい、のりがしっとりとマッチしないので注意が必要。でも、食べてみたら、明らかにおいしい。15分しか燻していないが、もっと軽めでも良かったかも。これは、想像以上に美味しく仕上がっていた。
さて、おでん。さくらチップで燻したが、牛すじ串はいい感じ。スモーキーで味わい深い。ただ、飲み込んだところ、ちょっと酸っぱい。なんだろう。こんにゃくは、まずい。スモークが合わないうえ、酸っぱい。ここで気がついた。燻製に失敗しているのだ。
おでんを載せるとき、前回のまずさが脳裏をよぎり、手抜きして水切りせず、そのまま燻してしまったのだ。燻製する際、食材の水分はきっちり取っておかないと、このように酸っぱくなってしまうので注意が必要だ。ちくわぶもまずかった。練り物のイメージと、スモークの味が別方向にとっちらかって、喧嘩しているのだ。たまごは普通に美味しかった。特に酸っぱくもない。
さくらチップにピートパウダーを混ぜて燻したツマミ系。ビーフジャーキーは王道で美味い。カリッとしているので、歯にもつまらなくていい感じ。にしん昆布巻の缶詰は期待していなかったし、燻製感も弱かったのだが、いい感じになっている。水分をしっかり切て、もっと燻せばもっとおいしくなりそう。ゆでたまごは、美味い。前回のゆでたまごや今回のおでんのたまごも含め、これが一番美味しくできていた。商品として売れるレベル! ちくわは、まずくなってしまった。
りんごチップを最初に燻製した時、燃えきらずにチップが残ったので、半身残ったほっけ焼きとサラダチキンの半分を追加して燻してみた。10分ほどだが、しっかりと色がつき、いい感じ。食べたところ、ほっけ焼きが超美味しくなっていた。ご飯がいくらでも食べられる! チキンもなかなか。紅茶の上品な味が、スモーキーになり、旨味が凝縮された感じ。塩味を追加して食べたいくらい。専門のスモークチップの威力は流石だ。
グラスをピートで燻してウイスキーをランクアップさせる
家でピートを焚けるとなると、酒飲みはグラスを燻すに決まっている。ウイスキーの味わいの一つに「スモーキー」というテイストがある。大麦をピートを炊いた熱風で乾かす際に付く香りや味のことで、これがまた美味い。そこで、グラスを燻して、スモーキー度合いをアップさせようというわけだ。
ピートだけを少量の砂糖とともに火にかけ、煙がくゆってきたらテイスティンググラスを逆さにして置く。温めるのが目的ではないので、煙が充満したらすぐに引き上げていい。
最初、煙がもったいないので、充填したまますぐにウイスキーを入れ、蓋を閉めて楽しんだ。しかし、それでは煙すぎて、ウイスキーの味がわからなくなってしまう。普通に煙を飛ばして、グラスが冷えてからウイスキーを注いでもOKだ。
さて、家にある寝酒でチャレンジ。まずは、「ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年」。ジョニーの緑はグレーンを使わない、シングルモルトウイスキーのバテッドモルト。濃厚なコクと深い味わい、優しい口当たりが特色だ。原種にクラガンモアやタリスカーが使われているものの、筆者的にはちとスモーキーさが足りない。そこで、ピート燻しグラスで飲んでみることに。当然香りは、ピーティ。ちょっと煙すぎるくらい。でも、味にはそれほど変化は……と思いきや、飲み込むとぶわーっとスモーキーな空気に包まれる。いや、おいしいです!
次は、「アードモア」。サントリー所有のハイランド・モルトで、樽詰め業者はウイスキー・ソサイエティ。筆者が2番目に好きなシリーズで、番号は「66.39」。ソサイエティのボトルにはタイトルがつけられているのだが、これは「スイミングプールを漂うウッドスモーク Wood smoke drifting over swimming pools」。もともとがややスモーキーなので、ピートが合う。ただ、アルコール度数が58.7%とややパンチがあるので、もう少し濃く燻ってもよかった。砂糖をちょっと多めにして、付着しやすくしてもよさそう。
最後は、「ロッホランザ」の1996年。瓶詰め業者は一番好きなBLACKADDER。ロッホランザは隠し名で、中身は「アラン」。アラン島にできた新し目のアラン蒸留所で作られたウイスキーだ。アランは1995年から稼働しているので、96年蒸留は初期のレア物。15年熟成で、なかなかスモーキー。とは言え、ピーティという程でもないので、ちょっともったいないが、ピートグラスで試す。いや、おいしいです! 華やかでピーティ、ってなかなかない味わい。
スモークしたグラスでウイスキーはランクアップする。向き不向きはあるものの、面白い。これは日課になりそう。
以上が、100円ショップの土鍋でも家庭内燻製を楽しむ技となる。コーヒーやルイボスティーも美味しかったが、燻製用のウッドチップはやっぱり一味違う。安いし長く使えるので、買っておいてもいいだろう。ウイスキー好きはピートパウダーでグラスを燻って楽しんでみよう。
美味しかった順番を付けるなら、スモークチップのほっけ焼き、ルージュサハラのサラダチキン、ゆでたまご。まずかったのは、おでんのこんにゃくとちくわぶ。普通のちくわもダメだった。
次回は専用の燻製器チャレンジ!
次回は、燻製器を使って、燻製にチャレンジしてみる。1000円以下のダンボール燻製器とパナソニック製のスモーク&ロースターを取り上げる予定だ。
筆者紹介─柳谷智宣
1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。
この連載の記事
-
第3回
グルメ
プロの味! ダンボール燻製ハウスと室内用ロースター「けむらん亭」で燻製してみる -
第1回
グルメ
コンビニの食材を何でも燻製に! フライパンや鍋とお茶で燻す技 -
グルメ
コンビニで手軽に買える食材をスモークして10倍おいしく楽しむ - この連載の一覧へ