AirDropやHandoff、HomeKitが変わる?
Bluetooth SIGが発表した内容は、おおむね「Bluetooth Smart」(BLEのブランド名)に関してだ。2016年に予定される機能強化により、Bluetooth Smartの通信範囲は4倍に拡大され、電力消費が増えることなく通信速度が2倍にアップするという。
現行規格のBluetooth 4.2では、Bluetooth Smartの通信速度(アプリケーションスループット)は最大650Kbps。これを2倍にした1.3Mbpsが、次バージョンのBluetooth Smartでサポートされる最大通信速度と考えられる。この速度を達成するにはよほどの好条件(近距離・障害物なし)が必要だが、通信範囲が4倍に拡大されるということは、ある程度の距離や障害物があったとしてもそれなりの速度アップが見込まれる。
この技術がiPhone/iOSでサポートされれば、AirDropやHandoffのレスポンス向上が期待できる。通信範囲が広がればデバイスを検出しやすくなるだろうし、通信速度がアップすればWi-Fiにハンドオーバーするまでもなく完了してしまう処理もあるはず。通信対象がより迅速に検出され、操作体系全体がよりキビキビとしたものに進化するのではないだろうか。
だが、最大のインパクトは「メッシュネットワーク」のサポートだろう。メッシュネットワークとは、端末同士が相互に通信することで自律的・継続的に通信網を再構築できるネットワークの概念で、Wi-Fiアクセスポイントのような通信の中心となる機材(ハブ/ルータ)を必要としないことが特徴だ。これがBluetooth Smartで実現されれば、いちはやくiPhone/iOSで実装される可能性は高い。
Bluetooth Smartを利用したメッシュネットワークは、CSR(現在はQualcommに買収)が「CSRmesh」として2014年に製品化しており、しかも当初からオープンソース化とBluetooth SIGへの提供を明言していた。今回の発表に際してのコメントは得られていないが、2015年前半にBluetooth SIGはメッシュネットワークのワーキンググループを立ち上げており、それから約半年という短い期間を考えればCSRmeshをベースに策定された技術と推定してよさそうだ。
メッシュネットワークのサポートで影響がありそうなAppleの技術といえば、「HomeKit」だ。HomeKitはApple独自のAPIであり、ネットワーク層よりも上位のレイヤーに位置付けられるため、Bluetooth Smartの進化を包含しうる。どのような進化・変化があるのかは想像の域を出ないが、Bluetooth Smart対応デバイスをある程度の数/間隔で配置すれば、Wi-Fiが届かない場所でも家電を操作できるようになるはず。CSRmeshは音声コマンドをサポートしているので、Siriがサポートされる可能性も高い。次のWWDCでの発表を待ちたい。
「CSRmesh」のデモムービー。専用のハブ/ルータなしに家電用ネットワークを構築できる |
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