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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第2回

「からだ」と「デジタル」を結ぶ新カルチャー

元ネタはフランス軍、忍者のように動く動画「パルクール」って知ってる?

2015年11月24日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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パルクールはあらゆるメディアの複合体である

  パルクールは誰もがすぐに始められる類のものではないから、決して大流行したりはしないが、YouTubeを観ているといまでもコンスタントにおもしろい動画がアップされ続けている。

 日本ではプロとして世界的に活躍するZEN氏やHAYATE氏のパフォーマンスが秀逸だ。

 「日本パルクール協会」というパルクールの普及/啓発を目的とした団体もあり、ウェブサイトには国内におけるパルクールに関係する資料などもアップされている。2014年3月の調査によると、パルクール・パフォーマーたちの44%は18歳未満、4%に過ぎないがなんと40歳以上のパフォーマーも存在するという(調査対象は307人)。

日本におけるパルクールのプロ選手であるZEN氏のパフォーマンス動画。その美しい身のこなしは感動的ですらある……

 おもしろいのは彼ら(約10%は女性なのだが)がパルクールを知ったメディアは約40%がYouTubeであるという点だ。

 「Twitter」「ブログ・ウェブサイト」といった回答まで含めるとデジタルメディア経由でパルクールを知った人々はおよそ半数におよぶ。そして、こうしたパフォーマーたちの30%以上は全国各地に点在する何らかの団体に所属しており、リアルな世界でのネットワークをも形成している。

 一般的にはデジタルのイメージとは無縁のように思われるストリートカルチャー的な身体表現が、実はネットとリアルの絶妙なバランスの中で涵養され、活発に機能しているのだ。

「日本パルクール協会」のウェブサイト。「第1回日本全国パルクール調査結果報告書」といった資料も掲載されている

 冒頭に挙げた“忍者女子高生”や“YAMAKASHI”だけでなく、「アサシン クリード」(2007年)などのアクションゲームにもパルクールは取り入れられている。その熱狂的なファンたちがゲームのキャラクターのコスプレをしつつ、リアルな世界でパルクールを行なった動画が数多く存在したりもする。

 ここにはゲームというメディア、コスプレをする身体というメディア、パルクールをする身体というメディア、彼らが駆け抜ける空間というメディア、そして動画というメディアが複雑に交差し、融合し、渾然一体となっており、アナログ/デジタルなどという二元論を超えた非常に興味深い世界が展開されている。

パルクールの要素を取り入れたアクションゲーム「アサシン クリード」のファンたちによるリアルな世界でのコスプレ&パルクール

(次ページでは、「パルクールは身体とデジタルが混在する新たなカルチャー」)

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