このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第330回

スーパーコンピューターの系譜 巨額の費用を投じたドイツのSUPRENUM-1

2015年11月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

20本のキャビネットが並ぶ
巨大なシステム

 SUPRENUM-1の肝心のノード構成だが、プロセッサーにはMotorolaのMC68020を採用した。ただしMC68020はFPUが搭載されていないので、FPUとしてMC68882も搭載された。

Motorolaの「MC68020」

 MC68020の性能は33MHzで5.36MIPSほどという数字があるので、これを信じれば20MHz駆動なら3.25MIPSほど。MC68882は25MHz版で264KFLOPSという数字もあるので、これも換算すると211.1KFLOPSになる。MC68882を256個並べても処理性能は54.1MFLOPS程度で、スパコンとしては全然お話にならない。

MotorolaのFPU「MC68882」

 そもそも、MC68882は単なるスカラーのFPUで、ベクトル処理能力は持ち合わせていない。これをカバーすべく、各々のノードにはWeitekのWTL2264と2265が搭載されていた。連載327回で解説したFPS Tシリーズにも搭載されていたアレである。

 連載327回で書いた通り、ピーク性能は16MFLOPS、実効12MFLOPSという話であったが、資料によればUnchained(加算あるいは乗算を単体で実行)の場合は10MFLOPS、Chained(乗加算を連続して実行)の場合は20MFLOPSとなっており、動作周波数は5MHz程度に落として実装されていたのではないかと思われる。

 ノードには他に64KBのベクトルキャッシュとして動作するSRAMバッファ、8MBのECC保護付きDRAM、さらにMC68020はメモリー管理機構を持たないため、これを処理するMC68851 PMMU(Paged Memory Management Unit)などが搭載されていた。

 下の画像がノード1つ分のプロセッサーカードである。ノード1つでこれだから、クラスター1個はおそらくキャビネット1本程度になる。したがって、16クラスターをまとめると、結構な大きさのサイズになるのは仕方ないところ。

ノード1つ分のプロセッサーカード。写真左下の空いている場所にもなにかモジュールが搭載されたらしい。DRAMは普通のFastPage SIMMのようだが、パリティ付きの9bitモジュールではなく、パリティなしの8bitモジュールを9枚実装して、これでECCを実施しているようだ

ノード1つ分のプロセッサーカードを別の視点から。Weitekの横にあるモジュールの用途は不明である

 下の画像がSUPRENUM-1の全景であるが、おそらく半開きになった扉がキャビネット1個分と思われる。

SUPRENUM-1の全景。斜めの部分が妙に高くなっているのに機能的な意味があったのか、単にデザインなのかは不明である

 SUPRENUM-1は実際には320ノード/20クラスター(うち64ノード/4クラスターはバックアップ用)ということなので、少なくともキャビネットだけで20本は並ぶ計算になる。さらにUnixゲートウェイもあるため、結構なサイズだったことは間違いない。

(→次ページヘ続く 「巨額の費用を投じるも買い手が付かず」)

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン