20本のキャビネットが並ぶ
巨大なシステム
SUPRENUM-1の肝心のノード構成だが、プロセッサーにはMotorolaのMC68020を採用した。ただしMC68020はFPUが搭載されていないので、FPUとしてMC68882も搭載された。
画像の出典は画像はWikimedia Commons。
MC68020の性能は33MHzで5.36MIPSほどという数字があるので、これを信じれば20MHz駆動なら3.25MIPSほど。MC68882は25MHz版で264KFLOPSという数字もあるので、これも換算すると211.1KFLOPSになる。MC68882を256個並べても処理性能は54.1MFLOPS程度で、スパコンとしては全然お話にならない。
画像の出典はWikimedia Commons。
そもそも、MC68882は単なるスカラーのFPUで、ベクトル処理能力は持ち合わせていない。これをカバーすべく、各々のノードにはWeitekのWTL2264と2265が搭載されていた。連載327回で解説したFPS Tシリーズにも搭載されていたアレである。
連載327回で書いた通り、ピーク性能は16MFLOPS、実効12MFLOPSという話であったが、資料によればUnchained(加算あるいは乗算を単体で実行)の場合は10MFLOPS、Chained(乗加算を連続して実行)の場合は20MFLOPSとなっており、動作周波数は5MHz程度に落として実装されていたのではないかと思われる。
ノードには他に64KBのベクトルキャッシュとして動作するSRAMバッファ、8MBのECC保護付きDRAM、さらにMC68020はメモリー管理機構を持たないため、これを処理するMC68851 PMMU(Paged Memory Management Unit)などが搭載されていた。
下の画像がノード1つ分のプロセッサーカードである。ノード1つでこれだから、クラスター1個はおそらくキャビネット1本程度になる。したがって、16クラスターをまとめると、結構な大きさのサイズになるのは仕方ないところ。
画像の出典はゲッティンゲン大学博物館の展示資料より。
画像の出典はDeutsches Museum Bonnの展示ページより。
下の画像がSUPRENUM-1の全景であるが、おそらく半開きになった扉がキャビネット1個分と思われる。
画像の出典はDeutsches Museum Bonnの展示ページからリンクされるDer SUPRENUMというカタログより。
SUPRENUM-1は実際には320ノード/20クラスター(うち64ノード/4クラスターはバックアップ用)ということなので、少なくともキャビネットだけで20本は並ぶ計算になる。さらにUnixゲートウェイもあるため、結構なサイズだったことは間違いない。
(→次ページヘ続く 「巨額の費用を投じるも買い手が付かず」)
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