今回のことば
「日本の企業の最大の困りごとは人不足。それはアクセンチュアも同じだ」(アクセンチュア・江川昌史社長)
アクセンチュアの新社長に、2015年9月1日付けで、江川昌史氏が就任した。
バトンを渡した前社長の程近智会長が、2006年4月に社長に就任したときには、アウトソーシングをキーワードとし、それがアクセンチュアの新たな方向性として注目を集めた。当時、日本のアクセンチュアにおけるアウトソーシングの事業構成比はわずか15%だったが、これがいまでは5割にまで拡大。「当時は、アウトソーシング事業を本格化するということがニュースになった。いまでは、顧客と一緒になってビジネスをする事業会社としてのポジションが明確化している」(程会長)と語る。
それから9年半を経過して、バトンを手渡された新社長の江川氏にとっての新たなキーワードが、「デジタル」ということになりそうだ。
程会長は、「デジタルシフトという転換期のなかで、アクセンチュア自身もデジタル化を進め、変わっていかなくてはならない。そして、世の中も大きくデジタルシフトをしていく必要がある」と前置きし、「江川は、デジタルへの変革リーダーである。その点でも、新社長として最適任の人材だと考えている」と語る。
アクセンチュアは、グローバルにおける注力領域として、「ストラテジー」、「コンサルティング」、「デジタル」、「テクノロジー」、「オペレーション」の5つをあげている。デジタルはそのなかでも重要な領域のひとつだ。
そして、江川新社長も、「アクセンチュアにおけるデジタル領域への取り組みは、ここ1~2年で急速に伸びており、いまや、全体の20~30%を占めている。グローバルでは、デジタル領域におけるトッププレーヤーとして認識されている。日本においても、それに向けた改革を行い、デジタル領域におけるナンバーワンプレーヤーを目指す」と力強く宣言する。
では、ここでいう「デジタル」となにか。
江川社長は、「デジタルの力によって、人間の労働力を置き換えるとともに、いままで経験がしたことがない体験や価値を創出する。それがデジタルになる」と位置づける。
そして、こうも語る。
「デジタルは、機械対人間という図式で捉えられ、ともすれば、機械が人間の仕事を奪うという見方をされることも少なくない。だが、実際には、日本にとって大きな武器になる。長年の経験で培った勘で、日々の業務を行ってきた人にとって、そのままではなかなか成長しないという限界が生まれはじめている。アクセンチュアがさまざまな情報を分析し、自動化するシステムを開発し、導入したところ、人の勘を上回る成績を叩き出した。そこで、その業務を担当していた人材を、いままでの経験を生かした新たな仕事に割り当て、より付加価値が高い仕事に挑んでもらうことにした。IoTの進展によって、データが集積され、人には見えなかったつながりが可視化され、機械が人を代替する局面は、あらゆる場面で起こりはじめている。人はよりクリエイティブで、付加価値の近い仕事に専念できるようになる。これがデジテルの可能性である」
江川社長は、これまでにも、ユニクロを展開するファーストリテイリングの全社改革などでの実績を持ち、ここでもデジタル化で世の中をリードしてみせた。
その江川社長は、「デジタルにおいては、SMACS(ソーシャル、モビリティ、アナリティクス、クラウド、センサー)が重要である。SMACSでは、アマゾンやアップルといった企業が先行しており、大手小売業への影響が見逃せない。だが、こうした大手小売業においても、デジタルの力を利用し、アナリティクスを活用することで、売り上げを伸ばしている例が出ている。また、従来のERPから、iOSベースのデバイスへと変更しただけで、データのインプット量が20倍になり、そのデータをもとにアナリティクスを行えるようになった例もある」などと語る。
すでにデジタルが企業の成長に貢献している例はいくつもでているというわけだ。
このように、江川社長率いる新生アクセンチュアの新たなキーワードは、「デジタル」ということになり、アクセンチュア自身もそれに向けて変革を図ることになる。
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