AWS re:Invent 2015で見た破壊的創造 第1回
大容量データでもIoTデータでもクラウドへの移行は容易だ
Amazon Snowball登場!AWSは根こそぎクラウドに持っていく
2015年10月08日 05時00分更新
10月6日、米国ラスベガスにおいてAmazon Web Servicesの年次イベント「AWS re:Invent 2015」が開催。10月7日の基調講演では、AWS シニアバイスプレジデントのアンディ・ジャシー氏が数多くの新サービスを披露。ここではクラウドマイグレーションを簡素化するAmazon SnowballとKinesis Firehoseを紹介する。
“Amazonらしい”データ移行アプライアンス「Amazon Snowball」
2時間におよぶ基調講演でジャシー氏は、「7つの自由」というテーマを中心に据え、クラウドによってユーザー自身がコントロールの自由を得られるとアピール。エンタープライズ、メディア、スタートアップなどさまざまなユーザーを壇上に迎えながら、数多くの新サービスを披露した。ここでは「データを出し入れする自由」として紹介されたマイグレーションに関する新サービスを紹介する。
初日のアナウンスで最大の目玉と言えるのは、オンプレミスにある大量のデータをクラウドに迅速に移行するためのストレージアプライアンス「Amazon Snowball」だ。
ジャシー氏は、オンプレミスからクラウドの移行に関する課題を指摘。「ギガビットの回線があっても、100TBのデータを移行させるには、100日間かかる。もちろん、コストをかければ、ネットワーク帯域を増強することも可能だ。しかし、クラウドに移行するためだけに、それだけのコストをかけられるだろうか?」とジャシー氏は問いかける。
これに関してはAmazon Import/Exportのサービスを使ったり、Fedexで物理ディスクを運搬するという手段が提供されてきた。しかし、このサービスを使うには、ユーザー自身がディスクを調達し、データを載せ、出荷するという手間がかかる。さらにセキュリティ面での漏えいや人的なミスという課題がある。
これに対して、新たに投入されたのがAmazon Snowballになる。50TBの容量を持つAmazon Snowballは、大量のユーザーデータを256ビットで暗号化してストレージに格納。ユーザーはAmazonの物流を用いて、確実に、迅速にAWSにデータを移行できるというもの。「100TBのデータがあっても、Snowballが2台あれば、1週間でデータ移行が完了できる」とジャシー氏はアピールする。
ジャシー氏の紹介で登壇したAWSストレージサービス担当のビル・ポス氏は、「データの格納場所を確実にしたい」「移行のネットワーク帯域が限られている」「大量のレガシーデータをオブジェクトストレージで活用したい」などのユーザーの課題からSnowballが生まれたと説明。Snowballの実機を見せながら、ラスベガスでは珍しい前日の豪雨を意識してか、「ラスベガスが洪水になっても問題ない」という防水・防塵という特徴を説明。また、50ポンドの実機がコンクリートの地面に落とすビデオを披露し、耐久性をアピールした。
Amazon Snowballは使いやすさも考慮されている。ユーザーはクライアント用のアプリケーションをダウンロードし、Amazon Snowballをつないで、移行するデータセットを指定。これにより、移行時間が表示される。次にAWSのコンソールから出荷先を指定すると、SnowballのE-inkが出荷ラベルを自動的に変換し、出荷準備が完了。運搬や転送はAmazon SNSやテキストメッセージ、コンソールなどで確認でき、AWS側のデータストア(標準はAmazon S3)にデータの移行が完了すると、ユーザーには完了レポートを提出される。その後、米国標準技術局(NIST)のメディアサニタイズガイドラインに従い、全データが安全に消去され、Snowballはリサイクルに回されることになる。
クラウドへのデータ移行という課題に真正面から取り組んだ結果、物理アプライアンスという製品形態になったAmazon Snowball。単なるデータ移行用のストレージではなく、使いやすさやセキュリティ、物流との統合まで取り込んだユニークな製品だ。AWS発でありながら、物流のテクノロジーを積極的に取り込んだ“Amazonらしい”製品と言える。出荷は本日からとアナウンスされている。
ストリーミングデータをもっと容易にロードできるKinesis Firehose
データ移行に関しては、ストリーミングデータを容易にAWSにロードできる「Amazon Kinesis Firehose」も投入された。
クラウドへのデータ移行に関しては、インターネット経由での移行のほか、データセンターとの間にAWS Direct Connectを引き込むという方法がある。しかし、ジャシー氏はこの数年でこうした手段だけではニーズを満たせなくなってきたと語る。「特にストリーミングデータだ。自宅や職場、屋外などにデバイスがあり、これらが継続的にデータを送信する例だ。こうしたデータは扱うのが難しい」(ジャシー氏)。
こうしたストリーミングデータの収集に関しては、2年前にAmazon Kinesis(現Amazon Kinesis Stream)を発表している。Kinesisでは、ストリーミングデータをAmazon S3やRedshiftにロードすることが可能だが、ユーザー自身がカスタムコードを記述する必要があった。これに対して、今回発表されたAmazon Kinesis Firehoseは既存のKinesisよりも容易にストリーミングデータをロードできるもの。ユーザーはAWSのコンソール上から対象のストリームと格納先のS3バケット/Redshiftテーブルを指定し、データのリフレッシュ頻度を設定すればよい。
「集まってくるデータを迅速にHadoopクラスター等にロードし、なにが起こっているかをリアルタイムに把握できる」(ジャシー氏)。また、配信前にストリーミングデータを圧縮したり、暗号化することも可能。IoTでの利用を前提に、クラウドへのリアルタイムなデータ収集を強化する製品と言える。
アスキーでは引き続き、AWS re:Invent関連のニュースを配信していく。
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