街乗りからスポーツまで!
ヤマハの新型電動アシストロードバイク「YPJ-R」
ヤマハから電動アシストロードバイクが発表された。これがもう、すこぶる面白くて楽しいのである。ちょいとそれを体感させてもらってきたのだ。
電動アシスト自転車といえば、ママチャリ系の実用性重視の自転車と思われているし、確かにそのとおりなんだけど、以前ヤマハのMTBっぽいレジャー重視の電動アシスト自転車「Brace XL」をレビューしたとき(関連記事)に思ったのだ。「趣味のための電動アシストスポーツ車って、うまく作ればすごくイケるんじゃね」と。
走る楽しさや長距離ライド、発進時や坂路のアシストをうまく両立すれば、脚力がいまひとつな人でも自転車を楽しめるし、起伏や信号が多くストップ&ゴーが避けられない道でも苦にならない自転車ができるんじゃないかと。
ヤマハがそれをやってくれたのである。でも、実際に乗ってみないと良し悪しはわからない。ということで、千葉県成田市にある下総運動公園で開催された説明会&試乗会に乱入してきたのである。
まずは自転車の説明をしよう。名前は「YPJ-R」。YPJはヤマハプロジェクトの略で、PASとは異なる新しいブランドとなる。
PASは大ヒットしたけれど、ニーズは限られていた。そこで見た開拓需要への挑戦として、ロードバイクに電動アシストユニットを搭載した試作品を2013年の東京モーターショーで展示した。それを元に作られたのがYPJ-Rなのだ。そのコンセプトは「楽する道具」から「楽しくスポーツする趣味材」へ。
良い製品には必ず開発者からのメッセージがある。どういう人にどう乗ってもらいたいか、だ。スポーツ車と一口にいってもいろいろある。そして出てきたのがこれである。
ターゲット層について語るプレゼンは多いけど、非ターゲット層を明記するのはすごい。ネットでもここが話題に。
簡単にいえば「本格派のロードレーサー乗り」はターゲットじゃないから、あれこれいわないでねってことだ。気持ちはわかる。電動アシストを邪道に感じても不思議はない。
でも、スポーツはそもそもストイックな層のためだけにあるのではない。競技として勝利を追求するサッカーもあれば、仲間内で楽しむフットサルもあるように、ロードバイクの楽しみ方も人それぞれでいいのだ。
それにはどうやって前述の1と2を両立させるか? 従来の電動アシスト自転車の欠点は「アシストが切れた途端に、普通の自転車以下になっちゃう」点にあった。アシストが切れたときに急につらくなる一番の理由は「車重」が重いから。そこを徹底的に見直したのである。Barce XLと比べた表がわかりやすい。
アシストユニットを従来のチェーン駆動からクランクシャフト駆動のPWに切り替え。これは欧州ですでに実績のある小型ユニットだ。
これにより、外装変速機への対応が可能になった。続いてバッテリーを小さく小容量のものに。Brace XLのバッテリーは12.8Ahで約2.7kg。YPJ-Rのバッテリーはそのおよそ1/5の容量で重さも1/5の540g。
それでいいのかというと、いいのである。なぜならロードバイクだとほとんどの時間を「アシストなし」の24km/h以上で走るからその間バッテリーは使わないのだ。アシストが必要なのは発進時と急坂だけ(緩い坂なら20km/h以上で走っちゃうし)。だから実走では公称よりバッテリーは持つだろうという。
STDモードで22kmだが、実際にはこまめにストップ&ゴーしない限り、かなりイケると思う。そして、自転車としての各パーツもロードバイク用の軽いものにしたため、車重は、8段変速のBrace XLが23.2kgなのに対し、YPJ-Rは(フレームサイズが小さい方で)約15.2kgだ。全然違う。
大変大雑把な話になるけれど、だいたいいわゆるママチャリ(シティーサイクル)の重さが20kgくらい。子供を乗せられる電動アシスト車になると30kgを越える。手頃なスポーツ自転車は12~13kg。エントリー向けアルミフレームのロードバイクだと10~11kg。フルカーボンフレームの本格派になると20~30万円以上になるけど、重さも7~8kgとぐっと軽くなる。
これらと比べてみるとわかる。ヤマハに「非ターゲット層」といわれた人たちは、普段乗ってるロードバイクが7~8kgなので「そんな重いのロードバイクじゃねー」と言うだろうし、普段ママチャリに乗ってる人だと「それは軽い! 簡単に持ち上げられるじゃん」と言い、電動アシスト車を知ってる人だと「よくそこまで軽くした!」と感動する。そういう重さだ。
ではさっそく乗ってみる。