今や携帯プレーヤーやスマホで、屋外でもハイレゾ音源を高品位で楽しめる時代。ただ、ハイレゾ音源ならではの自然でリアルな音や、音場感は微小な音や細かなニュアンスまで再現することが重要で、ノイズの多い屋外では外部からの騒音でハイレゾの細かな変化が損なわれてしまいがちだ。
そこで改めて脚光を浴びると思われるのが、ノイズキャンセル機能を持ったヘッドホンやイヤフォンだ。
前回、前々回と、ハイレゾ+ノイキャンを実現したソニーの最新ウォークマンを紹介してきたが、専用イヤフォンを採用するため残念ながら一般的な携帯プレーヤーとの組み合わせはできない。
すでにお気に入りの携帯プレーヤーを愛用している人にはちょっと欲求不満が募っていただろう。というわけで今回は、携帯プレーヤーやスマホと組み合わせて使えるノイズキャンセルヘッドホン/イヤフォンを紹介する。
ノイズキャンセル機能も着々と進化してきている!
まずはノイズキャンセル機能の仕組みをおさらいしておこう。ヘッドホンやイヤフォンで一般にノイズキャンセル機能と呼んでいるのは、周囲の音をマイクで拾って電気的に逆位相の音として再生することで周囲の音をキャンセル(相殺)するもので、アクティブ・ノイズキャンセルと呼ぶ。
アラウンドイヤータイプのヘッドホンやカナル型のイヤフォンは密閉度が高いため、装着しただけでそれなりの遮音性を備える。これは大別するならばパッシブ・ノイズキャンセルとなる。
アクティブ・ノイズキャンセルを実用化したのはボーズ。社長が出張での飛行機の移動中に航空機のノイズにうんざりしたことで、アクティブ・ノイズキャンセルのアイデアを思いつき、社に戻って開発をスタートしたという逸話がある。
実用化された第1号機は、業務用の航空機パイロット向けヘッドセットだ。機内の騒音に阻害されずに通信を行なうために、アクティブ・ノイズキャンセルは不可欠だった。
その後、航空機用や軍用として普及していき、ついに民生用とし2000年に「QuietComfort」が発売された。ノイズキャンセルヘッドホンではボーズのQuietComfortシリーズへの人気と信頼性は他を圧倒するものがあるが、それはこうした歴史や長年の実績があるからだ。
原音の忠実再生には不安が残る
ノイズキャンセルの仕組み
ノイズキャンセルの仕組みである「逆位相の音で不要な音をキャンセルする仕組み」についてもう少し詳しく解説しよう。まず、音は空気などを媒介として伝播する波(空気の振動)である。
波というのは、波長で定義されるが、一定の時間で繰り返されること(波長を示す1kHzは1分間に1000回振動するという意味)で、高い音や低い音になる。こうした波は、別の波の干渉を受け、小さい波が埋もれてしまったり、別の波が発生したりする。
ある波形とまったく逆の形(逆位相)の波はエネルギー的にも等価なので、それらがぶつかると互いに相殺されて消えてしまう。
こうした波の特性を利用して、電気的に不要な音(ノイズ)と逆位相の音を再生することでノイズキャンセルが実現できる。そのためには、キャンセルの対象である周囲の音を拾うためのマイクと、逆位相の音を再生するためのアンプが必要。だから、アクティブ・ノイズキャンセルはバッテリーが必要になるわけだ。
高音質にこだわる人にとって気になるのが、ヘッドホンやイヤフォンから出る音が、プレーヤーからの音楽信号だけでなく、周囲のノイズと逆位相の音も加えられているという点。相殺されてゼロになるとはいえ、原音忠実再生という原理からすると不要な音を出しているわけで、音質が心配になってしまう。
事実、ノイズキャンセル機能付きの初期のモデルには、静かな場所で音楽を再生せずにノイズキャンセルだけを働かせると、シャーっというような微小なノイズが聞こえることがあったし、ノイズキャンセルのオンとオフでヘッドホン自体の音質の変化が大きく、得てしてノイズキャンセルを使った状態の音が不自然なものに感じる人も少なくなかった。
これはノイズキャンセル技術の進歩によって次第に改善されてきた。ノイズキャンセルも当初はアナログ処理だったが、現在はデジタル処理が主流になってきており、ノイズ成分の分析などを含めてより高精度な処理が可能になり、ノイズキャンセル効果は極めて高くなっている。
(次ページに続く、「ノイキャンヘッドフォンの音は低音寄り? 最新モデルだと音のバランスもいい感じ」)
この連載の記事
-
第2回
AV
7万円の高級ウォークマン「ZX100」の音質はココが違う! -
第1回
AV
約3万円でハイレゾ&ノイキャン! 新ウォークマンAをしゃぶり尽くす -
AV
新ウォークマン大特集! ソニーのノイズキャンセルはハイレゾ時代に突入 - この連載の一覧へ