沖縄クロス・ヘッドがMoonshot+Splashtopのリモートデスクトップサービス
沖縄発、HP Moonshot採用のハード専有型DaaS「Reemo」発表
2015年09月09日 14時00分更新
沖縄クロス・ヘッド(OCH)は9月8日、企業向けリモートデスクトップサービス(DaaS)の「Reemo(リーモ)」を発表した。「HP Moonshot System」のハード専有型デスクトップ環境(HDI:Hosted Desktop Infrastructure)と、スプラッシュトップのリモートアクセスソフトウェア、ファイルサーバーサービスなどをパッケージ化し、DaaSとして月額制で提供する。
Windows 8.1、ファイルサーバーも利用可能なDaaS
OCHは、那覇市に本社を置くネットワークインテグレーター。ネットワーク運用のほか、沖縄/福岡/香港のデータセンターを活用できるIaaS「CUMO(キューモ)iDC2」や、沖縄~香港間のダイレクト接続サービス「沖縄GIX」、また企業向けリモートデスクトップソリューション「Splashtop Business」のインテグレーションなどを手がける。
今回発表されたReemoは、OCHが沖縄県の宜野座村サーバーファーム(宜野座村ITオペレーションパーク内)で運用するMoonshotサーバー上に用意されたユーザー専有のデスクトップ環境を、インターネット経由で遠隔のPCやMac、タブレット、スマートフォンから利用できるサービス。画面転送にはSplashtop Businessを採用しており、3G/LTEやWi-Fi経由のタブレットやスマートフォンからでもスムーズな閲覧や操作ができる。
Moonshotには、HDI専用の「ProLiant m700」カートリッジを採用している(関連記事)。m700は4ユーザー分の物理PC(デスクトップ環境)を搭載しており、1ユーザーに対してGPU統合の「AMD Opteron X2150 APU SoC」、8GBメモリ、64GB SSDの各リソースが提供される。
個々のユーザーに専有ハードウェアリソースを割り当てるため、VDIと比較した場合、多数のユーザーが同時に利用してもパフォーマンスが劣化しにくい。また、他のDaaSで一般的なWindows Serverのデスクトップ環境ではなく、普通のPCと同じWindowsデスクトップOS(Windows 8.1)が利用できる点もReemoの特徴だ(Windows OSは顧客側でのライセンス購入、持ち込みが必要)。
さらにReemoでは、ユーザー間でのファイル共有を可能にするファイルサーバーサービス(50GB/ユーザー)、F-Secureの法人向けクライアントセキュリティソフトも標準で付属している。ファイルサーバーに保存したデータは、クラウドバックアップも実施される。
Reemoのサービス環境は、OCHのNOC(沖縄IT津梁パーク内)から24時間365日の有人監視が行われ、障害発生時には宜野座DCのオンサイトセンターと連携した保守を行う。また、NOCのサポートエンジニアが電話やメールでのサポート対応にも当たる。
利用契約は4デスクトップ(1カートリッジ)単位となり、利用料金は4デスクトップあたり月額4万円(3年契約の場合のキャンペーン価格)。ただし、導入時のWindows OSやOfficeなどのライセンス購入は顧客側で別途必要。提供開始は9月15日からで、OCHが全国に向けて販売する。
首都圏とアジアの中間点、沖縄から提供するメリット
Reemoは、沖縄県による「クラウドサービス等先行モデル事業開発支援事業(平成26年度)」としての採択を受け、開発されたサービスとなる。8日の発表会は沖縄県庁内で行われた。
発表会に出席したOCH代表取締役の渡嘉敷唯昭氏は、Reemoを「社会的要請の高まる『ワークスタイル変革』実現のためのサービスとして提供していきたい」と語った。
渡嘉敷氏によると、OCHでは3年前からスプラッシュトップとの協業でリモートアクセスソリューションを提供してきた。その発展形としてDaaSの提供も検討していたが、パフォーマンスや利便性の面で「仮想化(VDI)では、自席で使うPC(物理PC)には勝てない」(渡嘉敷氏)。そこにHDIを可能にするMoonshotサーバーが登場したことで、そうした課題を解消したReemoが実現したという。「Moonshotにより1人1台の物理PCを割り当て、なおかつ低消費電力、低コストでのサービスが実現できる」(渡嘉敷氏)。
ターゲットとしては、出産などを機に在宅勤務をしたい社員のいる企業、海外も含め出張や移動の多い社員を抱える企業など。「現場で設計図やマニュアルを参照する機会の多いインフラ系企業からも、好評をいただいている」(渡嘉敷氏)。
特に、沖縄はネットワーク的に首都圏とアジア圏の中間点に位置している。渡嘉敷氏は「テストユーザーからは、上海からも東京からも問題なく使えると評価いただいた。特にアジア圏からは、東京よりも沖縄のデータセンターのほうが近く、快適に使える」と説明し、“沖縄発”サービスのメリットを強調した。全国のパートナー経由での販売も展開していく方針。
また、日本ヒューレット・パッカード HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は、長年にわたるHPとOCHとの協業関係を紹介。OCHが運用協力する「HP沖縄検証センター」を昨年開設したこと、今年8月には学生向けクラウド技術セミナーを両社共同で開催したことなどを説明した。「Reemoは、世界的にも最も先進的なDaaSの1つだろうと考えている」(橘氏)。
米スプラッシュトップ 共同創設者兼CEO/日本法人代表取締役社長のマーク・リー氏、スプラッシュトップ日本法人 代表取締役の水野良昭氏もそれぞれに、OCHの企画力や開発力の高さを感じていると評価し、Reemoへの期待を語った。
クラウド産業振興に注力する沖縄県の「先行モデル事業」として
発表会に同席した沖縄県 商工労働部 情報産業振興課 課長の仲栄真均氏は、クラウド産業/IT産業の振興に対する沖縄県の取り組みを紹介した。
沖縄県では、クラウド産業振興のために平成24年度(2012年度)から「沖縄型クラウド基盤構築事業」を進めている。今年4月にはうるま市に公設民営の「沖縄情報通信センター」を新設したほか、県内の官民データセンター間を光ファイバー接続して拠点間の通信インフラを強化している。
さらに、今年度には東京~アジア間を結ぶ大容量海底ケーブルの沖縄県への引き揚げも予定している。これにより、首都圏並の通信コストが実現し、本土~沖縄間の通信コストの高さという課題が解消される見込みだという。
仲栄真氏は、今回のReemoはこうした県の産業振興策をフルに活用した先行モデル事業であり、将来的には観光や医療、農業など他の県内産業の高度化や効率化を下支えしていくものにもなるだろうとの見方を示した。