さくらインターネットが2年目の挑戦。石狩でフェス会場を歩き回り、裏話も聞いてきた
真夏のフェスRSR、Wi-Fi提供に奮闘するさくらもアツかった!
2015年09月04日 09時00分更新
真夏の北海道、のんびりした空気の広大な野外フェスへ
「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO(以下、RSR 2015)」は、毎年夏に北海道・石狩湾新港で開催される大規模な野外音楽フェスだ。17回目の開催となった今回は、昨年よりも多い、のべ6万5000人の音楽ファンが会場に集まった。
石狩の豊かな自然と広い空に囲まれた会場では、100組を超えるアーティストによるライブだけでなく、ゆったりとした雰囲気の中でのキャンプや食事、さまざまなイベントがオールナイトで楽しめる。会場内を歩くと、テントでバーベキューに興じるグループも多く見かける。
“何もない石狩の広野に2日間だけ街が出現する”と言われるRSRで、昨年からフリーWi-Fiサービスの提供を始めたのがさくらインターネットだ。昨年の提供エリアは1カ所のみだったが、今年は会場内各ステージに近い7カ所へと拡大し、スマホ充電サービスと併せてWi-Fiスポットを提供した。
フェス会場ではやはり携帯の電波がつながりにくくなる
実際にこのWi-Fiサービスを利用している方のお話をうかがいたいと思い、何時間かかけて会場内のWi-Fiスポットを巡り歩いてみた。Wi-Fi利用中の方を見分けるのはなかなか難しかったが、数人の方にお話をうかがうことができた(皆さん、ご協力ありがとうございました)。
皆さんにうかがった話を総合すると、来場者がWi-Fiを利用する最大の理由はやはり「携帯の電波がつながりにくいから」だ。ふだんは誰もいない場所に、RSRの2日間だけ6万人以上が集中するのだから、電波がつながりにくくなるのは当然だろう。しかし、広大な会場内での友人同士の連絡にも、フェスでの楽しい写真をSNSに投稿するのにも、この後の天気を調べるのにも、今やネット接続は欠かせない。
公平を期するために書いておくと、もちろんNTTドコモなどの携帯キャリア各社でも、RSR期間中は移動基地局車を出すなどして通信環境の改善に努めている。実際、現地で2日間過ごした筆者の実感から言うと、携帯の電波が「常に」つながらない環境ではなかった。ただし、時間帯や場所によっては、通信ができない、通信がとても遅いという状況にもしばしば遭遇した。こういうときに、Wi-Fiという別の手段が用意されているのはありがたい。
したがって、今年のRSRは携帯の電波とフリーWi-Fiとがうまく補い合っている、そんな通信環境だったと言えるだろう。
「インターネットの側面からRSRに貢献したい」さくらチームの熱量
通信事業者ではないさくらが、あえてWi-Fiの提供にチャレンジする理由は、RSRが「ご近所さんだから」にほかならない。実際、さくらの石狩データセンターはRSR会場からかなり近い。会場から漏れてくる演奏の音が聞こえるほどの距離である。
さくらのWi-Fiプロジェクトを取り仕切る石狩データセンター長の宮下さんは、もともとプライベートでもRSRに毎年参加していたという音楽好きである。
そんな宮下さんが、さくらユーザーの懇親会で「RSRってWi-Fiがなくて不便。さくらさんやらないの?」という一言を耳にしたこと、そしてRSR主催者と偶然知り合えたことをきっかけとして、さくらのWi-Fi提供プロジェクトはスタートした。
昨年、初めてのWi-Fi提供で手応えを感じた宮下さんらは、RSR終了直後から「2015年もぜひ続けたい」、しかも「やるからには規模拡大だよね」と意気込んでいたという。だが、主催者側との調整が遅れたこともあって、結局プロジェクトが本格始動したのは6月下旬のこと。今年はプロジェクトメンバーの社内公募をするつもりだったが、残念ながらスケジュール的にできなかったそうだ。
「本当はたくさんのメンバーを巻き込んで当日の運用を任せ、わたしはプライベートでのんびりRSRを楽しもうと考えてたんですけどね(笑)」(宮下さん)
そういうわけで今年は、主催者など外部との調整役である宮下さんを筆頭に、ネットワーク設計や構築など技術面を担当する東さんと鈴木さん、現地での運用支援をする石狩データセンターのネットワーク監視チーム、それにデザインや広報の担当者といったチーム編成となった。なお、昨年に引き続き「poggimo」の開発元であるネクステックも全面協力している。
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