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スケールが大きく、かつ繊細な海底ケーブル敷設の仕事

横浜に寄港した海底ケーブル敷設船「すばる」に潜入してきた

2015年08月08日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 四方を海に囲まれた島国、日本。国際的なインターネットトラフィックの9割以上は、その海中を通る海底通信ケーブルが支えている。最近ではビデオ配信やクラウドの普及、ビジネスのグローバル化などの動きに伴って、その役割はますます重要なものになっている。

 8月6日、NTTワールドエンジニアリングマリン(NTT WEM)のケーブル敷設船「すばる」号が横浜港に寄港した。今回その内部を見学することができたので、あまり知られていない海底ケーブル敷設船の世界を写真とともに紹介しよう。

NTT WEMの海底ケーブル敷設船「すばる」号(船尾側)。全長124メートル、総トン数9557トン。船内からケーブルを送り出すため、船尾部分が特徴的な形をしている

すばる号の操舵室。最上層に位置し、船首側も船尾側も見渡せる広い部屋だ。後述する敷設支援システムやダイナミックポジショニングシステムもすべてここに設置されている

世界の海を股にかける、海底ケーブル敷設という仕事

 NTT WEMは、海底ケーブルの敷設にかかわるあらゆるサービスを提供する会社だ。親会社であるNTTコミュニケ-ションズ(NTT Com)やその他の通信キャリアからの委託を受けて、国内/海外を問わず海底ケーブル敷設のための調査や設計、敷設工事、保守作業を手がけている。

世界を股にかけるケーブル敷設船。船内の時計も航海先のタイムゾーンに合わせ調整される

 海底ケーブルは、起伏のある海底の地形に沿って敷設される。水深1500メートル程度までの海底では、底引き網や大型船のアンカー(いかり)などでケーブルが切断されてしまわないよう、海底を数メートル掘り起こして埋設される。そうした作業を専門に行うのが海底ケーブル敷設船だ。

 今回見学したすばる号は、1999年に建造された日本船籍のケーブル敷設船である。国内離島への光ファイバーケーブル敷設工事を始め、日本とアジア、あるいはアジア各国間でのケーブル敷設を中心に活躍してきた。はるか大西洋まで赴いたこともあるという。全長は124メートル、総トン数9557トンで最大80名が乗船できる。

船底にあるケーブルタンク。写真中央の軸に巻き付ける形でケーブルを格納している。天井高は12メートルあり、すばる号1隻で最長8000キロメートル(!)のケーブルを格納できる

左の写真で天井に見える“穴”を上階から見たところ。この穴からケーブルを引き出し、船尾側(写真奥)のケーブル送り出し装置が引っ張る

ケーブルの送り出し装置(ケーブルエンジン)。光ケーブルは「曲げ」に弱いので、この装置では2つのタイヤで挟んで優しく、直線的にケーブルを送り出す

 航海ごとに作業内容が異なるので一概には言えないが、定員一杯の80名が乗船するケースが多い。船長を筆頭に、船を運航するスタッフ、ケーブル敷設作業にかかわるスタッフ、船上生活を支えるスタッフなど、乗組員の役割はさまざまだ。敷設を委託した顧客企業の社員が乗船し、NTT WEMと共に作業内容の確認を行う場合もある。

 通常、国内の業務ならば1~2週間程度、海外ならば4~6週間程度の航海になるという。長い航海の間、乗組員のストレスを解消するため、スポーツジムやサウナ付きの浴場、娯楽室などを備えている。また、毎日の食事が単調なものにならないよう、食材の制約がある中で豊富なメニューを提供できることもすばる号の自慢だそうだ。

スポーツジムやサウナ付きの浴場もある。ひと汗かいて長い航海のストレスを解消!

(→次ページ、スケールの大きな世界だが、作業は実に繊細なのだった

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