ネットの流儀が現実に逆流し、人やサービスに影響を与えている
ビジネスにもなってる再注目の「ポスト・インターネット」ってなに?
2015年08月11日 10時00分更新
現実空間でインターネット的な体験ができる「越後妻有民俗泊物館」
美術家の深澤 孝史氏が現在「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」に出品している「越後妻有民俗泊物館」も非常にインターネット的な作品だ。
これは同芸術際が開催されている越後妻有(新潟県)の指定された民家に応募した一般の人々が「みんぱく研究員」として宿泊させてもらえるもの。その間、土地や家に伝わるさまざまな民俗的資料を調査/取集するのだ。
その成果は十日町市の中心市街地に設置された博物館ならぬ「泊物館」にアーカイブされていくという仕組みである。
ここには地域の内と外、内と内、外と外を結ぶつながりがネットワークとして形成され、互いの知識や知恵、知見の交換がごく自然に発生し、有形無形の知財が創造/蓄積されていくという、インターネットの文化的な側面における理想形がある。
深澤氏が2011年から日本各地で展開してきた「とくいの銀行」というプロジェクトも、特定の地域に住む人々が自分の「とくい」を預けると、その「とくい」を必要としている誰かがそれを引き出し、住民たちの間に思いがけないネットワークが現出するという作品である。
話題の「AirBnB」もポスト・インターネットなサービス
「シェアリング・エコノミー」の成功事例としてよく話題にのぼる世界規模の空き部屋シェアサイト「AirBnB」などもポスト・インターネット的だ。
インターネットというインフラが持つマッチング機能の効率性/利便性もさることながら、宿泊の最中およびその後にも継続していくであろう、見ず知らずの人達とのリアルなインターネット的つながりが、人気を博している本質の部分なのだろう。
そこでは部屋の提供者にとっても部屋の利用者にとっても、「インターネットを活用している」という自覚はもはや後景に退いているように思われる。
(次ページでは、「ポスト・インターネットは良い面ばかりではない」)
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