Google マップ日本登場10周年を記念して、パネルディスカッションが7月17日に開催された。
冒頭でグーグル グループプロダクトマネージャー 河合敬一氏が、10年の歩みを振り返った。インターネット上の地図サービスは、Google マップが初めてではなかったが、Ajaxを採用したことによりスクロールやズームが自在にできる点が、ほかの地図サービスと一線を画したと述べた。
日本にもGoogle マップの開発拠点があったことで、「日本発の地図へのアプローチ」がいくつも取り入れられているという。例えば、欧米は地図の誘導に「ストリート名」を利用するが、すべての道路に名称がない日本は「ランドマーク」を目標に道案内をする。そこで地図情報に曲がり角など、ランドマークになるような目印を追加したという。ラーメン好きのエンジニアから発案された「地図上に写真」は、検索で見つかったラーメン店がとんこつ系なのか、それ以外かをひと目でわかるようにという願いからだったというエピソードが紹介された。
また、これまで地図の世界は「現実が先に変わり、地図はその後追い」で新しい情報に価値がある、という考えだったそうだ。しかし、震災時に津波で個人の写真が流されてしまったため「ストリートビュー上の昔の写真を残してほしい」というリクエストがたくさんあった。そこで、タイムマシンとして、昔のストリートビューを残すシステムを作ったという。
デジタル地図は新しい気づきを生みだす
「デジタル地図の未来」と題したパネルディスカッションでは、各パネリストからはそれぞれがどのようにGoogle マップを活用しているかなどが紹介された。
福岡県 都市計画課長 赤星 健太郎氏は、福岡県がホームページ上で都市構造を可視化している事例を紹介した。人口減少が地域問題で避けて通れないなか、Google アースに国勢調査の人口統計メッシュを公共交通に重ねることで、公共交通の移住地カバー状況を把握し、地域の実情にあった効率的な街づくりに利用している。
日本放送協会 放送技術局 制作技術センター 番組制作技術 鈴木 聡氏は、ビッグデータを高精細のモニターで映すことで細かい事象を見ることができると、爆弾低気圧時の天気図を8Kモニターに映した。
一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事 関 治之氏は、有志の開発者たちによる地元のガイド、地域と密着した保育所地図など、地域地産的な可能性を紹介。「オープンデータと地図や位置情報をどうやって利用していくかがこれからの課題」と話した。
ブロードリーフ 代表取締役社長 大山 堅司氏は、事例紹介として「社用車へのテレマティクス適用による研究実験」を披露した。走行している車の速度、位置情報、走行情報をGoogle マップ上に表示はもとより、今後は車の到着時刻を自宅のデバイスに通知することで、クーラーやお風呂を沸かすといったIoTに活用できると話した。
ディスカッションは次の10年へ向けて「新しい見せ方、見え方を地図を通して行うことで新しい気づきを生み出すことができる」と締めくくられた。