専用ツールはもしものトラブルに弱い。備えよう
ではVAIO Zは紙を扱うよりあらゆる面で優れているのかと言われると、そこは素直にうなずけない。一番の欠点は「専用スタイラスでないと快適な手書き入力ができない」というところだろう。
紙の場合、ペンのインクが切れた時は代わりのペンを使えばいいのだが、VAIO Zをはじめとしたデジタル製品の多くは、スタイラスの電池が切れたからといって適当なペンで代用する、わけにはいかない。まあスペアの電池を持ち歩けば解決するが、ペンと電池ではどちらがよく持ち歩いているかと問われると、結果は火を見るより明らかだろう。
OSやソフトのクラッシュなど、もしものトラブルに弱いのもデジタル特有の弱点だ。一回だけだが、筆者もOneNoteのエラーに遭遇し、そこまで取っていたメモデータが消えてしまうトラブルに見舞われてしまった。ここは電子情報である以上、逆立ちしてもフィジカルなメディアには敵わないので、メーカーに開発やバグフィクスを頑張ってもらうしか無い。
デジタルエイジにこそ使ってほしい
この二点がデジタルの泣き所なのだが、データハンドリングの軽快さは、問題点を補って余りある魅力がある。ビジネスシーンでもアカデミーシーンでも、現代において資料の作成・提出はほぼデジタルだ。つまりアナログで作成した資料は一度デジタルに再加工し直さないといけない訳だが、資料が最初からデジタルならば、こうした手間を軽減できる。デジタル資料の作成における非常に強力なツールとして、VAIO Zは筆者を手伝ってくれている。この軽快さを一度味わうと、きっともう元には戻れない。
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最後に改善要望をひとつ。スタイラスを用いてノートを取る時は、筆記面に少々傾斜があるほうが書きやすい。第1回では「ディスプレーを半分だけ起こす」という使い方を提唱したが、これに似た使い方として、タブレットモードのディスプレーを少し起こすと楽に筆記ができると感じた。
筆者の場合は手持ちのモバイルブースターを背面に挟んで角度をつけたが、フリップヒンジの回転角度を任意に固定できれば、さらに使い勝手が上昇するのではないだろうか。また、この状態ではラップトップモードと判別されてしまうのか、ソフトウェアキーボードが出てこない。細かい部分だが「究極の道具」として、ぜひ改良を望みたい。
天野 透(あまの とおる)
1987年生まれ、神戸出身の若手ライター。某家電量販店で販売員を経験した後に、一念発起して都内の大学へ進学。大学院で文学を学びながら、二足のわらじでライター稼業を続ける毎日。信念は「高度な社会に物語は不可欠である」。何事も徹底的に楽しみ尽くしたい、凝り性な人間。