変わった相談はカキとなまことカニとワインにまで
―― チューナーにかぎらず変わった相談が多いんですね。
渡辺 今までいろいろやったよね。
谷内 カキなんかも最高だよ。カキは美味しい。
―― まあ、そりゃカキは美味しいですね。
渡辺 なまことかね。秋田ですごくいっぱい捕れるんだって。
谷内 なまこはうちの製法で缶詰にすると美味いんだよ。普通は酢の物だけどね、缶詰にすると全然違ったものになる。あれはいいよ。
渡辺 カニも美味かったねえ。普通の缶詰のカニよりも。
谷内 一匹のままどーんと缶に入れてね。足をもぎながら食べる。大田区でやってる展示会に出したら、みんな最高だって言って、人気あったよ。
―― あの、もうお腹すいてきたんですが……。
谷内 ワインもやってるんですよ。このワインは腐らないんだ。ビンのは亜硫酸塩を入れるけど、これはいらないからね。それでも酸化しないんだ。美味いですよ。
渡辺 それを扱うのに、お酒の販売の講習まで行きましたよ。資格は取ったけど、まだ許可はもらっていないので、一滴たりとも売れないんですけど。
杉原 うわあぁ、缶にチューナーなんか入れている場合じゃなかったな……。
―― あのね、それはね、まったく、本当にそうです。
杉原 でもね、全力でやりましたから。ここまでできたらすごく気持ちいいですよ。エイプリルフールネタですけど、この缶にはすごい技術が使われているんだぞと、みんなに強く言いたいです。
―― こうなると来年のエイプリルフールはハードル高いですよ。
杉原 うーん、どうしましょうねえ。
谷内 まあ、うちに宿題いただければ、たいがいのものは解決するよ。
―― さすが!
谷啓製作所もコルグも、創業は1963年。谷内社長は手を切らないようにダブルセーフティープルトップ缶を発明し、コルグはチューニングで苦労している演奏者に世界初の針式チューナーを作った。問題の発見と、それを解決する技術開発には共通するものがあるのではないか。
次回は、コルグのチューナー開発陣に、ダジャレではないチューナーの話をうかがってきた。楽器をやる人ならみんなお世話になっているチューナーだが、こんなことでもなければ取材させてもらえる機会もなかっただろう。お楽しみに。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ