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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第144回

開けるだけで指を切らない構造

怪我しない! 開けると刃先が丸くなるスゴイ缶詰「チュナ缶」はこうしてできた

2015年06月13日 12時00分更新

文● 四本淑三

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変わった相談はカキとなまことカニとワインにまで

―― チューナーにかぎらず変わった相談が多いんですね。

渡辺 今までいろいろやったよね。

谷内 カキなんかも最高だよ。カキは美味しい。

―― まあ、そりゃカキは美味しいですね。

渡辺 なまことかね。秋田ですごくいっぱい捕れるんだって。

谷内 なまこはうちの製法で缶詰にすると美味いんだよ。普通は酢の物だけどね、缶詰にすると全然違ったものになる。あれはいいよ。

渡辺 カニも美味かったねえ。普通の缶詰のカニよりも。

谷内 一匹のままどーんと缶に入れてね。足をもぎながら食べる。大田区でやってる展示会に出したら、みんな最高だって言って、人気あったよ。

―― あの、もうお腹すいてきたんですが……。

谷内 ワインもやってるんですよ。このワインは腐らないんだ。ビンのは亜硫酸塩を入れるけど、これはいらないからね。それでも酸化しないんだ。美味いですよ。

渡辺 それを扱うのに、お酒の販売の講習まで行きましたよ。資格は取ったけど、まだ許可はもらっていないので、一滴たりとも売れないんですけど。

杉原 うわあぁ、缶にチューナーなんか入れている場合じゃなかったな……。

―― あのね、それはね、まったく、本当にそうです。

谷啓製作所のボトル型ワイン缶。売ってはもらえないそうですが、我々も仕事中なので持たせてもらうだけ

杉原 でもね、全力でやりましたから。ここまでできたらすごく気持ちいいですよ。エイプリルフールネタですけど、この缶にはすごい技術が使われているんだぞと、みんなに強く言いたいです。

―― こうなると来年のエイプリルフールはハードル高いですよ。

杉原 うーん、どうしましょうねえ。

谷内 まあ、うちに宿題いただければ、たいがいのものは解決するよ。

―― さすが!

 谷啓製作所もコルグも、創業は1963年。谷内社長は手を切らないようにダブルセーフティープルトップ缶を発明し、コルグはチューニングで苦労している演奏者に世界初の針式チューナーを作った。問題の発見と、それを解決する技術開発には共通するものがあるのではないか。

 次回は、コルグのチューナー開発陣に、ダジャレではないチューナーの話をうかがってきた。楽器をやる人ならみんなお世話になっているチューナーだが、こんなことでもなければ取材させてもらえる機会もなかっただろう。お楽しみに。

取材中猛烈にお腹が空いたため、帰宅後通販で自費購入してしまった谷啓製作所の缶詰群。でも、その美味しさは確かにお説の通りでびっくり仰天。特にジンギスカンは保存食ではなく常食したいくらい。これについては後日改めてレポートしたい



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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