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TOKYO AUDIO STYLE 第6回

「いい音」を探る楽曲制作プロジェクト

東京女子流の楽曲を波形で解説! 将来マスタリングはなくなる?

2015年04月10日 11時00分更新

文● 構成●荒井敏郎
写真●Yusuke Hommma(カラリスト:芳田賢明)

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すべての音を突っ込んで作られているマスタリングの現状

波形を見ながら対談スタート

与田 いちばん下がCDです。これだけ差が出るんですよね。上から3番目のこちらで予測して作ったものよりも、実際はさらに「ふんどし状」になっていて、ダイナミックレンジがなくなってます。

 CDと比べてハイレゾ音源はレンジが半分くらいになっています。結局、いちばん下のものが普通に出回ってたら、ハイレゾは「音がショボい」って言われかねない。ハイレゾは極端な話、爆音で聴かないとダメですからね。

小島 たしかにある程度音量を上げないと元々のレンジを体感できませんからね。最近の携帯音楽プレーヤーなどがそうなんですけど、いまのCDに合わせたゲインというか増幅率になっているので、ハイレゾを聴くには絶対的な音量が足りないという可能性もあります。ソフトもハードもCDに最適化されて作られているので……。結局は、音圧が足りなきゃハイレゾも何もないですからね。

与田 ユーザーの側が再生できる環境を持っていないと意味がないってことですよね。

(同じ音量で東京女子流「加速度」のハイレゾ音源とCD音源を聴き比べてみる)

与田 こんなに違いますからね。

小島 エンジニアの川口さんがトラック・ダウンが終わった段階でヘッドルーム※1には4dBくらいの余裕があると話していましたが、感覚的には8dBくらいは違うかなと思いますね。

※1ヘッドルーム 記録可能な最大の信号の大きさと、実際に録音した音のピークとの間の余裕のこと。ヘッドルームを超えてしまうと、音がゆがんでしまう

与田 CD音源は音を均一化させてしまっていますよね。小さい音も大きく上げてしまって、全体的に音量が大きくなっています。ハイレゾ版とは8dBくらい下げないと合わないですね。

山田 昔のCDは音量が小さかったですよね。昨日、部屋のCDを整理して聴き直していたら、レベッカのCDの音量が小さくて、それまで聴いていたCDに合わせたボリュームじゃ聴こえなかったんですよ。

与田 そうですよね。例えばクラシックコンサートの「ピアニッシモ」とかの小さな音は、お客さんが耳をそばだてて聴くからその音が聞こえるのであって、CDに関してはそういう聴き方はしなくなったのかもしれません。

(ハイレゾ音源とCD音源をスピーカーで聴き比べてみる)

ハイレゾとCDの音源を比べながら話を進める与田氏

与田 やっぱりこうやってきちんと聴き比べると、ハイレゾ音源のほうが圧倒的に音の抜けがいいですよね。

小島 きめ細かさが違いますね。

与田 ヘッドルームに余裕があるから、低音に伸びが出ます。スピーカーユニットは高域の音と低域の音を出すときに異なる動きをするんですけど、ふんどし状で全部の音が出てしまうとスピーカーユニットが張り付いて動けない状態になってしまうんですよ。ヘッドルームに余裕があると、そのぶんスピーカーユニットに動きが出るので、低音が「ボン! ボン!」と伸びますよね。

小島 そうなんですよね。だからラージモニターになればなるほど、ダイナミックレンジが圧縮されてると粗が見えやすくなります。ただ、マスタリングは本来CDに収録されているほかの曲とのバランス合わせという意味もありますよね。

佐竹 今回のCDに収録されている曲の並びにしては突っ込んでいるほうなので、そういう音なんだとマスタリングエンジニアのほうで判断したのでしょう。松井さんの楽曲の意図というか傾向をくみとった感じになっていると思います。

与田 海外のCDのマスタリングは音圧は上がっているんですけど、音がきちんと分かれていて、いわゆる低域と高域にメリハリ感があるんですよ。

(海外のCDの例としてアラニス・モリセット「ガーディアン」を試聴)

小島 そうですね。ベッタリした感じがありませんよね。

山田 「加速度」の音はミックスのときよりピークが上がっていますよね。

与田 全体的にピーキーだよね。アラニス・モリセットのほうはボトムが出てるんですよ。

小島 マスタリングという作業は、エンジニアの手腕が大きいということなんでしょうか。

与田 僕は海外でのマスタリング作業を多く見てきましたが、マスタリングのモニタリング環境が日本とまったく違いますね。海外はラージスピーカーが一般的ですが、日本では特にメーカーの人なんかが「ラジカセで聴かせてもらいますか?」って必ず言うんです。

佐竹 CDはラジカセ用に作られていると言えなくもない。

(東京女子流「加速度」とアラニス・モリセット「ガーディアン」をラジカセで聴き比べる)

与田 ラジカセで聴くとほとんど同じに聞こえますね。それがラージスピーカーになるとアラニス・モリセットのほうがきちんと聞こえるんですよ。

小島 ラジカセでもバランスのいい音を出しつつ、ラージモニターではしっかりとレンジ感を表現してくれるといった絶妙なマスタリング手法というものがあるのでしょうか。ラジカセといいオーディオ環境で違いが出ないと、オーディオメーカーとしても困ってしまいますから(笑)。

与田 結局は、元の音源がラージスピーカーで聴いても変わらないのでは、いいオーディオ環境を用意しても意味がないってことですからね。

話は海外と日本のマスタリング事情にまで及ぶ

(次ページでは、「音楽配信がメインになればマスタリングは必要ない!?」

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