Experience Design 2015 SPRING

UX全体なんて設計できない VAIO Z Canvasの挑戦

文●中野克平/Web Professional編集部

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「ユーザーと向かい合うのではなく、同じ方向を向いていくことだ」

VAIO商品プロデューサー商品企画担当ダイレクター 伊藤好文氏は、ユーザー・エクスペリエンス(UX)、カスタマー・エクスペリエンス(CX)をテーマにしたロフトワーク主催のカンファレンス「Experience Design 2015 SPRING」(3月13日開催)で、5月発売予定のVAIO Z Canvasの開発姿勢をこう表現した。

つくる人と使う人が同じ方向を向くのがVAIO流ものづくり

ユーザーが商品・サービスを通じて経験する使用感、ある企業に対して顧客が持つ印象全体を設計しようとするUX、CXがもてはやされている。アップルのように、TVCMから製品、アプリに至るまで、ミニマル(最小限)で先進的な印象で顧客と接したい。アップルの成功を取り入れたい企業が陥りやすい間違いがUX、CX全体を設計しようとすることだ。

顧客の人生は企業の所有物ではない。ある企業の製品・サービスは、それぞれの顧客にとって、人生のほんの一部でしかない。当然、感じ方や使い方は人によって異なる。UX、CX全体を設計しようとすれば、独りよがりの製品・サービスをお仕着せることになる。

2015年5月発売予定のVAIO Z Canvas

2月に発表されたVAIO Z Canvasは、5月発売にもかかわらず試作機が公開されている。Experience Design 2015 SPRINGの会場でも、実機が展示され、多くの参加者が出来栄えを味わった。ソニー時代であれば製品企画の初期段階でマーケット調査をするときにしかユーザーの声を直接聞かなかった。新生VAIOになってから企画が始まった最初の製品であるVAIO Z Canvasでは、量産開始までにユーザーに試作機を操作してもらう機会が3回もあり、チューニングを重ねて最終的な製品に仕上げるという。

VAIO Z Canvasは顧客の声を発売前に4回も採り入れる

モーニング・ツー(講談社)で『聖☆おにいさん』を連載中のマンガ家・中村光氏も、試作機を貸し出された一人だ。普段は作業場のデスクトップPCとタブレットで線画、色入れをしていたが、人けのある場所でインスピレーションを得ようと15インチの試作機をカフェに持ち込んだところ、大きすぎて人目が気になり、作業に集中できなかったという。

伊藤氏はVAIO Z Canvasで採り入れた「共創」のプロセスには「深さ」が必要だと説く。

「従来であれば最初に顧客の声を聞いて、カフェでの作業には15インチが必要と判断して設計に入っていた。しかし、15インチでは大きすぎて、隣の席の人に肘がぶつかってしまう」

「共に創る」ための必須条件

実際に使ってみるとVAIO Z Canvasの12.3インチが大きすぎず、小さすぎない最適なサイズだと分かる。ユーザーに向かい合って「どんな製品がお好みでしょうか?」と尋ねるのではなく、ユーザーと同じ方向を見て考える。初めは15インチがいいと思っても、使ってみるうちに大きすぎると気付くなら、製品企画の初期段階にユーザーの声を聞くだけでは深さが足りないのだ。

クリエイターをデスクから解放するのがVAIOのCX

「お客様はパソコン設計の専門家ではない。作り手のプロフェッショナルを発揮して、ユーザーがしたいことを先回りし、ニーズをかなえるにはどうすればいいか考える」

長期間、試作機を試用してもらいチューニング

企業は顧客の体験を設計できない。あくまで製品・サービスそのものを設計するのだ。しかし、自社の製品・サービスがどんな場面で使われ、そのとき顧客がどんな経験をするのかは想像し、よりよい体験に変えられる。UX、CXの設計とは、そんな企業の姿勢が現れてくるものなのだろう。

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