日本法人Yellowfin Japanの設立で国内展開を本格化!
時代が追いついた?WebブラウザベースのYellowfinはクラウドでも活躍
2015年03月13日 09時00分更新
WebブラウザベースのBIツール「Yellowfin」を展開するオーストラリアのイエローフィンは日本法人Yellowfin Japanを設立し、国内展開を本格化している。先進的なコンセプトを掲げたYellowfinのこれまでのビジネスと日本法人設立の背景について聞いた。
高い、使いにくい、使われないBIツールに疑問
業務データを分析・加工するBI(Business Intelligence)ツールの市場に2度目の春が訪れている。コスト削減型ITからビジネス価値創出型ITへの大きなシフトが起こるとともに、その基盤となるクラウドやデータソースとしてのビッグデータ・IoTなどが一気に台頭。ITの担い手が、IT部門から現場部門へチェンジしている現状ともあわせ、プロフェッショナル向けだったBIツールもビジネスユーザー向けへと衣替えし、TableauやQlikView、MotionBoardなど、さまざまなプレイヤーが市場をにぎわせている。こうした中、独立系のBIツールとして、国内で存在感を増しているのが、Yellowfinだ。
Yellowfinが誕生した2003年当時はHyperionがオラクルへ、CognosがIBMへ、そしてBusiness ObjectsがSAPへといった具合に、独立系のBIベンダーが大手に買収されていった頃。ある意味、草刈り場となった市場に新規参入したのがYellowfinになる。
Yellowfin Japan Director of Salesの林勇吾氏は「銀行でBIツールの導入に携わっていた現CEOのグレン・ラビー氏が既存のBIに疑問を感じたのがイエローフィン設立のきっかけです。せっかくBIを入れたのに、足りない機能をスクラッチで作らなければならず、ライセンス費用も高かった。にも関わらず、銀行内でBIを使うユーザーが拡がらなかったんです」と語る。ここにビジネスチャンスを感じたラビイ氏が既存のツールのよさを取り入れつつ、新しい価値を提供すべく開発されたのがYellowfinだ。
使い勝手と100%Webを掲げて実績を重ねる
既存のツールの課題だったのは、やはりユーザビリティだ。当時、多くのBIツールは分析を専門とする担当者のためのツールで、一番、データを必要としているビジネスユーザーにとって難しすぎた。多くのビジネスユーザーがもっと使いやすいツールを作りたいというのがYellowfinの1つの開発目標だったという。
もう1つユニークなのは、Webブラウザベースという点。他のシステムとの統合が容易という理由で、こうした「100%Web」というコンセプトを掲げた。「12年前、BIをWebだけでやるコンセプト自体は斬新だった。本当はクライアントでマシンパワーを使える方がよいことも多いのだが、このコンセプトだけはとにかく崩さなかった」(林氏)。
とはいえ、長らくこのコンセプトが受けず、苦労してきたのも事実。「日本のお客様は、データベースから100万件分のデータを抽出してきて、Excelで加工して二次利用するというやり方が多い。この利用形態に100%Webは合わなかった」と林氏は振り返る。
ユーザビリティ重視と100%Webという2つのコンセプトを磨きつつ、旧来のベンダーが取り入れなかった機能をいくつも取り入れている。データを使ったコラボレーションを促進するSNS機能やBIで分析したデータをプレゼンテーションで使える「ストーリーボード」だ。プレゼンまでBIツール1つで済むストーリーボードの機能はビジネスユーザーにとっては利用価値も高く、他のBIツールでも導入されつつある。「BIツールのデータは持ち歩けるけど、テキストが入れられない。プレゼンのための写真も入れられないという保険会社の営業マンの声を拾って作られたものです。最近ではPCだけではなく、スマホやタブレットでも使えるようになってます」(林氏)。
円滑な日本法人設立とビジネス移行は異例づくし
Yellowfinが日本で販売されたのは、8年前の2007年。IT分野でオーストラリア大使館と関係があった京セラ丸善システムインテグレーション(KMSI)が総販売代理店を引き受け、日本市場に打って出た。
とはいえ、同社もBIツール販売の経験もなく、当初は苦労した。「立ち上げから3~4年は鳴かず飛ばず。私が入った当時は販売代理店も2~3社しかいなかった。営業もBIを欲しがっていた人よりも、人のつてで商売しているような感じ」と林氏は振り返る。しかし、草の根運動的な人のつながりで、ジールやNTTソフトウェアといったパートナーが増え、ようやくビジネスが軌道に乗り始めたという。
こうしたビジネス概況での2014年の日本法人設立。8年という長い歳月をかけて日本法人設立に至ったこと、旧総販売代理店であったKMSIのメンバーをほぼ引き継ぐ形でチームが構成されたことなど、短期的な投資回収が求められる外資系ITベンダーでは実は異例づくしだ。100%本社出資の子会社となったが、7年間培ってきた30社くらいのパートナーもそのまま引き継がれるため、商流も代わらないという意味では円滑なビジネス移行と言える。
この背景について林氏は、「もともとイエローフィン自体がプライベートカンパニーで、創業者2人の資金でやっているため、株主の声や資金が入ってこない。事業で稼いだお金をギリギリまで投資するという形なので、自分たちの好きなモノが作れ、ビジネス的な決定も自社で行なえる。逆に言えば、日本への投資も慎重ではあった」と語る。裏を返せば、北米に次ぐマーケットとして日本市場が成熟してきたと判断しての日本法人設立と言える。
もちろん、日本法人のメンバーやKMSIへの信頼も厚い。「売上がまだまだだった設立時から、Yellowfinを日本で盛り上げてくれたことに対して、CEOのラビーは感謝していると話してくれた。日本のメンバーは特別なんだと。だから、このメンバーで確実に成功させたいと思って、設立まで慎重だったようだ」(林氏)。
エンタープライズのニーズに応えられる体制を構築
現在の用途は、トラディショナルな売上や経営推移の分析など多く、IT部門より営業やマーケティングなどの現場部門がメイン顧客となっている。「最近、製造業のラインで装置のエラー率を収集して、アラートを上げるとか、小売業でユーザーの行動履歴を追うといった事例も出てきていますね」(林氏)。
もちろん、クラウドでの利用事例も増えている。Yellowfin自体がJavaの汎用アプリケーションサーバーで、プラットフォームを問わない。そのため、いったんサーバーさえ立ててしまえば、あらゆるソースからデータを取り込める。「やはりAWSが一番多いですが、Microsoft Azureやcloud (n)で使っているお客様もいます。クライアントツールで加工してWebに上げるのではなく、YellowfinはすべてWebで完結する。だから、データの位置を意識する必要がないし、クライアントにデータが漏れることもない」(林氏)とのことで、クラウドとも親和性が高い。実際、先日はNTTソフトウェアとの提携を発表し、AWS上に構築されたクラウド型BIサービス「InfoCabina Yellowfin Cloud」を開始した。
クライアント管理が不要なWebブラウザベースである限り、ユーザー数が多い事例では圧倒的な差別化ポイントとなる。林氏は、「ユーザーが多くなると、クライアントツールを配布すること自体が難しい。その点、Yellowfinはグローバルで60万ユーザーで広告系の分析を行なっている事例もある」と説明する。
最近はTableauやQlikView、MotionBoardなどの競合も勢いを増しているが、Yellowfinも成長を続けているという。特に大手ベンダーのレガシーBIからのリプレース案件は多く、新規顧客獲得のチャンスになっているという。これにともない日本法人も増員しつつ、エンタープライズ顧客のニーズに応えられる体制を構築していく。「データディスカバリー、分析、セキュリティ、運用まですべて1つのセットになっているのが強み。エンタープライズのBIのニーズに応えられるのはYellowfinしかないと思っている」と林氏はアピールする。